2024.08.21
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2023.08.26
食糧危機が来ると言われています。天然ガスの価格高騰や、ウクライナでの戦争の影響によって、世界的な肥料生産と輸出は混乱、供給が減少し、価格の上昇につながりました。
さらに気候危機、パンデミックが重なり、2022年には、トウモロコシや米、大豆、小麦の生産が減少しており、食料価格の高騰がいずれ、食料供給の危機に発展することが懸念されています。
FAO(国際連合食糧農業機関)によると、飢餓人口は2021年に約8億2800万人にのぼり、世界のほぼ10人に1人が飢餓に苦しんでいると推定されています。日本の食料自給率は約38%(カロリーベースによる試算)です。最近は昆虫食や微生物食などが注目されていますが、まだ抵抗があると言う人も多いのではないでしょうか。
そんな中でいま注目されているのは「雑穀(ミレット)」です。国連は2023年を国際雑穀(ミレット)年と定めました。雑穀とはイネ科の穀物のうち、主要である米や麦を除いた総称のこと。代表的なものに、アワ、ヒエ、キビなどがあります。雑穀は主要な穀物に比べてやせた土地や乾燥した土地でも生育でき、気候の変化にも強い作物で、食糧危機の切り札になるのではと言われています。
日本では古くから雑穀が食されてきました。昔から人間にとってとても大切な作物であり、縄文時代の遺跡からは、アワ、ヒエ、キビが多量に発見されており、約4800年前にはヒエを食用穀物としていた可能性が高いことが明らかになっています。縄文人は狩猟・採集を生活基盤としながら、雑穀の栽培をしていたと考えられています。
地域に適した多様性があり、昭和20年代まで雑穀は全国でつくられていました。寒冷で水稲栽培に適さなかった地域では、昭和30年代まで確実に収穫をあげられる雑穀の自給的畑作農業が中心となっていました。しかし戦後において食糧事情がよくなると、主食として食べられることが少なくなりました。
雑穀は科学的にも非常に栄養価が高いことが証明されており、「栄養穀物(Nutri-Cereals)」とも呼ばれています。雑穀のタンパク質含有はコムギとよく似ており、どちらも重量の約11%のタンパク質を含有しています。
雑穀はビタミンB群、特にナイアシン、B17、B6や、葉酸、カルシウム、鉄分、カリウム、マグネシウム、亜鉛が豊富で、完全食に近いバランスであると言われています。
近年、子どもの発育のために、雑穀を取り入れるレシピが紹介されるようになってきました。ご飯に混ぜるほか、ヘルシーな食材として、さまざまなレシピが紹介されています。
雑穀は種類によって消化しにくいものもあるので注意が必要ですが、1歳7ヶ月~2歳くらいのご飯を食べはじめる時期から雑穀を取り入れても問題ないと言われています。消化力が弱い子どもでも食べられる雑穀はアワ、ヒエ、キビなどの小粒もので、10代の成長期は、アワ、ヒエ、キビに加え、大麦も良いと言われています。
雑穀ご飯は、白米よりも噛み応えがあるため自然とよく噛む習慣が身につき「噛む力」を鍛えることができます。
実は、『噛むことが脳波に影響する』ことを科学的に証明した研究が、2008年に発表されています。噛むことは、指を動かしたりする動作とは異なる、特別な運動であり、よく噛むことで脳が活性化し、集中力や記憶力を高めるということが、わかってきました。またよく噛む子は肥満にならないとも言われています。
食糧危機が懸念されるこの時代、雑穀に再び注目し、「噛む力」を鍛えて、脳を活性化していきましょう。
谷崎テトラ
1964年生まれ。放送作家、音楽プロデユーサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版などを企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の発信者&キュレーターとして活動中。シュタイナー教育の教員養成講座も修了。
HP:www.kanatamusic.com/tetra
YouTubeチャンネル「テトラノオト」で雑穀の専門家、大谷ゆみこさんとの対談を公開中!
FQ Kids VOL.14(2023年春号)より転載
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