2020.10.06
2022.09.13
2023.03.04
私たち人間の身体は食べ物でできています。私たちの身体を構成する約37兆個とも60兆個ともいわれる細胞は、一部の神経細胞や骨格筋細胞などを除いて、毎日少しずつ入れ替わっています。
腸は数日、肌は約1ヶ月、血液(赤血球)は約4ヶ月、骨は約5ヶ月で新しい細胞に入れ替わるといわれています。一番長いものでも、最大で5年ほどで私たちの身体はそっくり別人になってしまうんですね。
その細胞は私たちが毎日食べる食事で作られていくわけで、まさに健康は「食」からなのですが、現代では子供たちにも小児肥満が増加し、糖尿病や高血圧、動脈硬化などの生活習慣病になる子供たちが増加しています。
その主な原因は日々の食生活で脂肪分や糖分を摂りすぎていることや、身体を動かす機会が減っていること、そして受験などのストレスにあるといわれています。
マクロにみると、地球の危機的状態、人類の社会の問題、そして個人の健康の危機。それがつながっています。
健康に良いことは、地球の環境に良いことでもあります。例えば、健康のために自転車に乗ることでCO2の排出削減になります。特に食を通じて、地球の環境に貢献する、という健康にも地球にも優しい食生活のことを「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」(The Planetary Health Diet)といいます。
この考え方は世界の研究者の中から生まれました。背景には、肉食や畜産業が地球環境に与える影響への懸念が高まっていることがあります。中でも、牛肉の生産増大は気候危機の主要な原因の1つとして問題視されています。
世界人口の増加や、新興国の人々の所得上昇により、食肉の需要は拡大し、世界の肉の消費量は、過去20年で2倍以上に増加し、2018年に3億2000万tに達しました。2028年までに、世界の肉の消費はさらに13%増加すると予測されています。
食肉となる牛や豚などを育てる畜産業は、毎年CO2換算で71億tの温室効果ガスを排出しており、世界の温室効果ガス排出量の約14%を占めています。実は畜産業は、飛行機や自動車など全世界の乗り物と同等以上の量の温室効果ガスを排出しているのです。
2019年1月16日付けで英医学誌『ランセット』に、16ヶ国37人の研究者からなるグループが、人類の健康増進と持続可能な食料システムを推進する食生活の枠組みをまとめたレポートを公開しました。そこでは現在の地球全体における赤身肉消費量を半分に減らすよう提唱しています。
先進国の場合は80%削減すべきということで、アメリカなら、ハンバーガーを食べる頻度を週1回にしなければならない、さらに世界規模で、全粒穀物、豆類、果物、野菜を大量に含む食生活に切り替えるよう提言しています。
それは米を中心に、野菜・魚・肉・乳製品・海藻・豆類などさまざまな食材を使い、「一汁三菜」を基本とする昔ながらの和食の考え方と似ているように思いませんか?
いま、ヴィーガンやベジタリアンの生き方が注目されてきています。米国の人気レシピサイト「Epicurious」は今年、気候変動を加速させる牛肉を使った料理は持続可能でないとして、今後は掲載しないことを決めました。
子供の肥満も3歳までに決まるといわれています。そして小児肥満の子供の70%は成人肥満に移行すると考えられています。野菜をあまり食べない、スナック菓子などをよく食べる、甘い飲み物を飲むなど、肥満の原因となる習慣がついてしまうと、肥満になる体質が決定してしまうわけです。
子供の成長には肉食も必要という研究もありますが、現代の肉食中心の欧米型のライフスタイルが子供の肥満の大きな要因です。まずは伝統的な日本の食文化から。健康にも地球にも優しい食生活「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」をはじめてみませんか?
谷崎テトラ
1964年生まれ。放送作家、音楽プロデユーサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の発信者&コーディネーターとして活動中。シュタイナー教育の教員養成講座も修了。
公式サイト:TANIZAKI TETRA OFFICE
FQ Kids VOL.12(2022年秋号)より転載
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