子供にとって本当に「良い親」って? 干渉しがちな時こそ考えたい“親切さ”とは

子供にとって本当に「良い親」って? 干渉しがちな時こそ考えたい“親切さ”とは
子供のためにと親心でする口出しや先回りも、度を越せば成長に悪影響を及ぼすことに……。エッセイストの小島慶子さんが自身の経験から語る、わが子への想いが強い時こそ自問したい大事なこととは?

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自分はどうしたいか、よりも
良い親であるために大事なこと

「良い親」ってどんな親だと思いますか? FQ Kidsを読んでいる人はきっと、子育てに一生懸命で向上心があり、学習意欲も高い人だと思います。「良い親」でありたいと思いますよね。でも、それってどんな親なんでしょう。

私も、初めての子育てでは張り切りました。良い親=志が高く完璧な親、という力みがあったように思います。やたら形から入ろうとしたり。でも経験がないのだからそれも仕方ないですよね。

長男を産んだ時には、両親を「おとうさま、おかあさま」と呼ばせようとしました。夫の家がそうだったというのです。

私は「パパ、ママ」で育ったので、ごく普通のサラリーマン家庭の夫の実家がそうだったと聞いた時は正直言って違和感を覚えましたが、まぁそういう習慣だったなら子供にもそうさせるのがいいかな! と思い、まだ言葉を話せない長男に「おかあさま、おとうさま」と覚えさせようとしました。

でもすぐに気づいたのです。言いにくいじゃん、と。どう考えても赤ん坊には「パパ、ママ」の方が聞き取りやすく言いやすいでしょう。そこであっさり様付けをやめ、パパ、ママにしたところ非常に伝わりやすくなり、それっぽい言葉を言ってくれるようになりました。

もちろん赤ちゃんの時から様付けで覚えることができるお子さんもいるでしょうけれど、私はどっちが子供に親切かと言ったら喃語に近い音の方だろうと考えたのです。五音よりも二音の方が覚えやすいし、ンマーとかダーとか言っている人ですから、それに近い音の方が馴染みやすいですよね。

赤ちゃんに話しかける口調も、最初は大人に話しかけるのと全く同じにしていました。独身だった頃、私は子供が好きではなく、高い声で赤ちゃんに話しかけている大人を見ると「わざとらしいなぁ、いい人アピールうざいなぁ」などと思っていたのです。

だから自分が親になってもああいう話し方はせず、冷静で知的な話し方にしよう、と心に決めていました。それが子供を尊重することだと。しかし、それではやはり通じません。赤ちゃんが興味を示すように工夫したら、結果としてあの喋り方になりました。

なるほど、あれは大人が優しい自分をアピールするためではなくて、本当に子供に通じやすくするための話し方だったんだなと、己の浅はかさを反省。自分がどうしたいかよりも、赤ちゃん本位、赤ちゃんに親切であることが大事なのだなと痛感しました。

過干渉になっている時こそ
子供のことは見えていない

「良い親」が時として子供にとっては重圧となり、意欲を奪ってしまうのは、わが子に良かれと思うあまり親本位の言動になってしまうからではないかと思います。10代、20代になっても子供の行動に口を出し、先回りしたりダメ出ししたりして干渉する親を“ヘリコプターペアレント”とも言いますよね。

わが子の頭の上でずっとホバリングしていて、何かがあればすぐに急降下して手助けしたり口を出したり。子供は挑戦する自由も失敗する自由もなければ、そこから学ぶ機会も奪われてしまいます。いつも親に監視されているうちに、自分で何かを決めることができなくなり、自信を持てず、どうせ何をしても無駄だという無力感を持つようになることも。

きっと親はすごいエネルギーで「良い親」であろうと努力しているのだと思います。でもその「良い」は、自分が納得する基準をクリアすることや、理想のイメージを体現することかもしれません。それでは、鏡に映る自分の姿を見て努力するばかりで、肝心の子供を見ていないことになります。

子供にしてみたら、鬱陶しいほど付きまとわれているのに、全然わかってもらえない寂しさでいっぱいでしょう。

私の母も良かれと思って過干渉になってしまう傾向が強かったので、そんな子供の気持ちには覚えがあります。こうして親になってみると、母の気持ちもわかって切ないのだけれど、やっぱり親がどうしたいかよりも、「子供にとって何が本当に親切か」を冷静に考える必要があると思います。

親の“良かれと思って”は
わが子にとって本当に親切?

中には、幼い時から名門校に入れて、受験で苦労をしないでもいいようにしてあげるのが親切だと考える人もいるでしょう。その想いが強すぎて、志望する幼稚園や小学校に入れなかった時にわが子に失望することもあるかもしれません。それは本当に、子供に親切でしょうか。

どこの制服を着ようと、その子は世界にたったひとりのかけがえのない、変わらぬその子なのに。受験を考えるなら、たとえ不合格でもそんなことでわが子の価値は変わらないし人生は決まらないと、本気で思えるか自問することが大事かもしれません。

学校のブランドよりもありのままのわが子の方が輝いている! と親が本気で思えるなら、合格してもしなくても、子供は親に受け入れてもらえていると感じられるはずです。自分はこのままでここにいていいと思えることが、子供にとっては何より大事。

良い親であらねばモードが発動した時にはそれを念頭に置いて、何が子供にとって一番親切かを考えてあげたいですね。

プロフィール

小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
Twitter:@account_kkojima
Instagram:keiko_kojima_
公式サイト:アップルクロス

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