2022.05.30
2022.06.23
2023.01.25
私立の保育園・幼稚園の増加や小中学校受験など、親子が教育機関を選ぶことが当たり前になってきた昨今。特に小学校はわが子にとって大事な時期を長く過ごす場所だからこそ、より良い環境を求めたい。
一方で、子供が多様な個性を伸ばすことが重視されるようになり、獲得すべき力はさまざまだ。進学実績といった単一のモノサシでは判断ができなくなり、学校選びは複雑さを増している。子供が小学校に通う保護者を対象に行われた調査を参考にしてみよう。
調査を行ったのは、教育の実践研究機関であるamazing college。子供が公立・私立の小学校に通っている親・約1000人による意見調査だ。
まず質問しているのは、わが子を今の学校に入れた時のこと。「現在通わせている学校について、子供の将来を想像したうえで“適切”だと思い入学させましたか?」と質問したところ、8割以上が「はい(85.5%)」と回答した。
つぎに、「子供が通っている小学校に対して不満(不安)はありますか?」の質問では、「かなりある(8.2%)」「少しある(37.0%)」と半数近くが「不満(不安)がある」と回答した。適切だと思い入学させたにもかかわらず、満足していないパパ・ママが少なくないという結果になった。
実際にはどのような不満・不安があるのだろうか。最多は「教育方法について(45.3%)」、以下「教員について(42.0%)」「教育内容について(39.4%)」と続いた。
具体的にはこんな声があげられている。
●今のやり方だと視野が狭くなりそう(40代/男性/神奈川県)
●子供の将来にやりたい事と今の教育が合っているのか少し不安になってきたから(40代/男性/東京都)
●画一的な教育になっていて、個人の能力を伸ばす教育ができていないのではないか(40代/男性/山梨県)
●教育水準と教員の水準があまり高くないように感じる(40代/女性/東京都)
●伸びしろを伸ばしきれないのでは、という不安がある(40代/男性/神奈川県)
●公平的な教育が行われているかどうか(50代/男性/愛知県)
わが子なりの能力を見つけて伸ばしてくれる教育になっていないのでは、という懸念がうかがえる。
それでは、親がわが子に身につけてほしいと思っているのは、どんな力だろうか。「これからの時代、必要だと思う能力は何ですか?(複数回答可)」と質問したところ、1位は「判断力(67.0%)」、ついで「自主性(やる気・意欲的な姿勢)(57.9%)」「言語能力(49.9%)」という結果となった。
判断力も自主性も、学力のように数値化して測定できる認知能力ではなく、非認知能力だ。多くの親が、非認知能力が大切だと考えていることが推察できる。
しかし、「現在の小学校教育で、非認知能力は十分に伸ばしていけると思いますか?」と尋ねると、「あまりそう思わない(33.8%)」「まったくそう思わない(4.6%)」と、約4割が現状への不安を示している。
一律的に数値化されうる学力とは別に、子供それぞれに長所や「自分はこうありたい」という願いが当然ある。学校教育はそこに応えてくれるのか、という親の不安が示されているのだろう。昨今では、子供の主体性や自主性を育む教育をめざして“オルタナティブスクール”という場も生まれている。
こうした動きもふまえて、「子供に必要な能力・成長が伸ばしていける環境であれば、既存の学校教育とは違うかたちでの教育を受けさせても良いと思いますか?」という質問もしている。これに対しては、「とても良いと思う(19.4%)」「良いと思う(58.1%)」と合わせて8割近くが肯定的に回答した。
もちろん既存の学校も、教員や予算の限界を抱える中で大変な努力を重ねている。保護者として可能な範囲で学校に協力していくことも大切だ。
さらにその入口である学校選びにあたっては、親の責任は大きい。特に非認知能力をどう育んでくれるかについては、数値化できないものだけに評価が難しい。ここは在学生や卒業生、その保護者の意見も聞いてみて、「入学案内」にない学校の現実を見極める努力が必要だろう。
〈調査概要〉
「小学校教育への意見」に関する調査
・期間:2022年12月5日(月)~8日(木)
・方法:インターネット調査
・調査対象:1,044人(①子供が公立小学校に通っている親505人、②子供が私立小学校に通っている親539人)
・モニター提供元:ゼネラルリサーチ
文:平井達也
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