2021.08.07
2020.04.13
2023.01.07
かねてより若者人気の高かったアーバンスポーツの“メジャー化”が進んだのは、東京五輪での日本人選手の活躍が大きいだろう。BMXやスケートボード、スポーツクライミングなどで10代や20代の若手選手たちが次々と活躍。
しかも勝敗よりも競技を純粋に楽しむ姿はスポーツの原点のようなものを感じさせ、「ゴン攻め」などのイケイケな言葉が並んだTV解説が今までになかったようなワクワク感を与え、「新しい時代のスポーツはこういうものかもしれない」と予感させた。
そして五輪以降、BMXやスケートボードなど、もともと競技人口の多いものに加え、スラックラインやパルクールなど馴染みの薄かった競技もメディアなどで取り上げられることが増え、一般的な認知度はじわじわと上がってきている。
「アーバンスポーツは実は身近で、スケボーやBMXのバイクさえあれば、始めの一歩は家の庭や近くの公園からだって可能です。自由で、正解がなくて、勝ち負け関係なく大人も子供も楽しめる良さがあります」と教えてくれたのは、札幌大学で日本初のX-SPORTS部を立ち上げて顧問を務める橋本先生。ただ、一般的には騒音などにより周囲の理解を得られないことも多いのが現状だ。
「アーバンスポーツはそのほとんどがストリートの遊びから始まったもので、その気軽さが大きな魅力です。ただこれからスポーツとして大衆化するためには、決められた場所でルールやマナーを守ってやることを子供の頃から身につけさせることが大切です」。
つまり、ストリートでの遊びとしての自由さとカッコ良さという文化は大事にしつつ、アーバンスポーツ自体が“クリーンで楽しいスポーツ”として周囲の理解を得ていくことが必要だという。それがパークの整備や競技人口の増加に繋がり、将来的にプレイヤーのやりやすさに還元されていくといえるのだ。
「アーバンスポーツはどの競技も“難しさ”が面白さでもあります。自分と向き合い、失敗と挫折を繰り返して目標をクリアするという“成功体験”が子供の自己肯定感を育みます。年齢や性別に関係なく他者を認める文化も特徴的で、これらは子供の心の成長に大きく寄与することでしょう」。
これからの時代に求められる多様性。幼児期からそれを自然と養うことができるので、多方面において視野の広い子供に育つことが期待できるだろう。
年齢も性別も国籍も関係ない!
グローバルスタンダードの価値観に
今の時代に必要なのは、年齢やジェンダー、国籍、人種などのバックボーンにとらわれない価値観。アーバンスポーツのフィールドは学校の外であることが多く、学校では出会えない人との出会いがある。
大人も子供も関係なく互いを尊重し交流することはスケートパークでは当たり前。たとえそれが外国人でも「共通言語はスケボー」であるかのように、技を1つメイクすれば一瞬で言葉の壁を飛び越えて仲良くなることも多い。
試行錯誤した後の成功体験が
自己肯定感を育む!
本来、アーバンスポーツは誰かと戦うことを目的とせず、自己の限界を超えていく面白さが魅力のスポーツだ。技や速さ、高さを極める難しさは成功すると大きな達成感に変わり、それがそのまま醍醐味になっている。
こういった特性が、課題を見つけてそれを克服する力や目標を定めてそれをクリアしようと取り組む力など、学力では測れない非認知能力を伸ばすことに繋がっているといえる。
正解がないから面白い!
“3つの学び”で能動的な子に
体験学習やグループワークを通して、「主体的」「対話的」「深い」の3つの学びを身につける注目の学習法・アクティブラーニング。これは「正解よりもそこまでのアプローチの仕方を学ぶ」ことを目的とするので、正解のない自由なアーバンスポーツと相性がいい。
特徴である「競技のカッコ良さ」が子供の興味や好奇心を惹きつけて主体的な学びに導き、「幅広い年齢層と関わる環境」が対話的な学びを育み、「自由で正解がない難しさ」がより学びを深めさせてくれるだろう。
橋本 要さん
札幌大学講師。学部でリベラルアーツ専攻の教鞭を執るかたわら、同大学に日本初のX-SPORTS部を立ち上げ、スケートボードやスノーボードなどの普及活動も行う。スポーツ庁「アーバンスポーツツーリズム研究会」元委員。
文:松永敦子
FQKids VOL.12(2022年秋号)より転載
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