子供の前で気をつけたい「夫婦間のコミュニケーション」 問題が起きた時の対応策は?

子供の前で気をつけたい「夫婦間のコミュニケーション」 問題が起きた時の対応策は?
感受性豊かな子供たちは、両親の不穏な空気にストレスを感じてしまうことも。夫婦間の争いが避けられない時、子供にどのように働きかけたらいいのだろう。小島慶子さんが自身の経験から語る、対応方法とは?

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夫婦間のいざこざも
敏感に感じ取る子供たち

子供の前でつい、夫婦喧嘩をしてしまったことはありますか? 私はあります。では子供の前で、配偶者に嫌みを言ったり慇懃無礼(いんぎんぶれい)な態度をとったことは? 表情や話し方の微妙なトーンで、軽んじるような態度をとってしまったことは? ……身に覚えがあります。

相手の言葉を途中で遮ったり、否定から入ったり、頼んでもいないのに独断でジャッジしたり、解説したりしたことは? 私も夫も、ついしてしまうことがあります。息子たちは全部、見ているはずです。

夫婦間で一切ネガティブな反応をしないようにしていると、不自然な微笑みを浮かべたぎこちない相槌になってしまい、これまた子供たちは不穏な空気をすぐに感じとります。

夫婦関係がうまくいっていないと、子供は気を遣ってずっと緊張を強いられることになりかねません。私も幼い頃、両親が喧嘩をしている時はもちろん、母が苦い顔で言葉を飲み込んでいる様子や、父が黙って苛立ちを抱えているのを見ただけでも、動悸がしてどこにも居場所がないような孤独を感じました。

2人がニコニコと仲良さそうにしている時は心底ホッとしたものです。

子供の前で一切ネガティブな感情を見せないことにしている人もいるでしょう。家の中の平和が保たれるのでそれが一番いいのでしょうが、誰もが上手にできることではありません。

カウンセラーなどの助けを借りるのもいいでしょう。私もカウンセリングに通っていたことがありますし、今もコーチングの専門家や友人に話を聞いてもらっています。人に頼ることはとても大事です。それでもしんどい時はありますよね。

どうしても完璧な笑顔で取り繕うことができない私は、今は子供たちになるべく情報を開示するようにしています。

家族に起こる問題は
仲間として情報共有

すでにエッセイで書いていますが、6年ほど前、夫との間で長年溜め込んだ問題が原因となって、私は精神的に限界を迎えていました。せっかくオーストラリアに帰っても、夫がそばにいると平常心ではいられず、このままでは自分が壊れてしまうと思い詰めていました。そんな私の様子に、もちろん息子たちも気づいていました。

子供は生真面目なので、親の不調を自分のせいだと思ってしまうことがあります。彼らが「ママが辛そうなのは僕たちが原因なのかな」と思っているかもしれないので、何が起きているのか事情を話すことにしました。

当時、息子たちは中2と小5でしたが、普段から親子の会話が多いことや、彼らの理解力などを鑑みて、彼らにわかるように噛み砕いて話せば伝わるだろうと判断しました。

私たちは8年前に、家族というチーム全員で海外移住という大冒険に乗り出しました。4人が4人共に頑張って、新しい生活を立ち上げたのです。だから息子たちには困難なことも含めて家族の情報を共有して、彼らの考えや気持ちを聞こうと考えました。長い時間をかけた家族会議で、息子たちは私と夫の話を聞き、自分たちの気持ちと要望を話してくれました。

それ以降も、家族に起きることは極力共有するようにしています。子供だからと複雑なことを耳に入れないようにするのではなく、彼らを仲間として信用して、4人で問題を共有して知恵を出し合うことにしたのです。

お金のことも、私に今どのくらいの蓄えや収入があり、何にいくらなら出せるのか、いくら以上は出せないのかなど、具体的に開示しています。現状を把握していれば、息子たちなりに自分にできる工夫を考えられるし、質問や提案をすることができます。

もちろん、特に子供が幼い時には、夫婦の不仲を見せないようにするのはとても大事なことです。日常的に両親のいさかいを目にする状態は虐待になりかねません。ただ、もしいつまでも何もないふりをするのが難しいなら、成長した子供の知性を信用して彼らに関わるような情報を開示し、子供たちの気持ちや要望を聞くやり方にするのもありだと思います。


家族という場所で学ぶ
人との関わり

夫との間に何の問題もなければよかったのにと思うことはしょっちゅうあります。どうしてあんなことが起きてしまったのだろうと、辛い気持ちで過去を振り返ることも。夫が後悔を口にすることもあります。人が過ちに気づいて学んで変わることは尊いことですが、それでも私の胸の中には、夫への信頼と感謝と同時に、拭い難い不信と悲しみがあるのです。

夫婦間の葛藤はきっと多くの人が経験しているでしょう。夫婦に限らず、人と人の間にはさまざまな矛盾や相克があります。私は、息子たちにはそれも含めて、彼らなりの時間をかけて、人と関わる豊かさを知ってほしいと思っています。

また、私と夫の関係と彼らと父親との関係は別ものであるとも、繰り返し伝えています。私にとっては時に痛みを伴う存在である夫が、息子たちにとっては優しい良き父親なのです。私もいつも辛い思いをしているわけではなく、穏やかに過ごしている時もあります。人は多面的で、変化し続ける存在なのですね。

家族の数だけ形があり、人生には形を整えても整理がつかないことがあります。それでもその時のベストを尽くして問題に取り組むほかないのでしょう。子供たちが大人になって振り返った時に「私たちはみんな不完全ではあったが、あの家族という場所で精一杯幸せになろうとしたのだ」と思うこともあるのではないかと思います。

プロフィール

小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
Twitter:@account_kkojima
Instagram:keiko_kojima_
公式サイト:アップルクロス

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