【水族館飼育員のお仕事体験】心構えから海洋環境まで、小学生が学んだ大切なこと

【水族館飼育員のお仕事体験】心構えから海洋環境まで、小学生が学んだ大切なこと
さまざまな企業や団体が子供に職業体験の場を提供している昨今。北海道函館市では、水族館の飼育員の仕事を体験できる機会が設けられた。子供たちが魚とのふれあいだけでなく、海洋環境など多くを学んだその内容とは?

憧れの水族館飼育員のお仕事って?

子供との人気のおでかけスポットの1つ、水族館。お魚の世話や華やかなイルカショーなど、水族館で働くことに憧れる子も少なくない。もちろん水族館での仕事は楽しいばかりではなく、地道で大変なことも多い。また、生き物についてはもちろん、海洋環境についてなど求められる知識は膨大だ。来館するお客様へのサービス精神も重要になる。

そんな仕事だからこそ、体験してみることを通して子供たちが学べることも多岐にわたる。

子供たちが飼育体験から学んだこと

一般社団法人Blue Commons Japan主催の「水族館飼育員体験」は、2022年7月29日、8月1日、2日の3日間、函館朝市ミニ水族館で行われた。子供たちに海を身近に感じてもらい、生き物や環境に関する学びを提供することを目的に、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として開催されたのだ。

実際に水槽に触れる前に、まずは座学で研修。講師からは「水槽に住んでいるお魚のため。水族館を見に来てくれるお客さんのため。飼育員のお仕事は、大きく分けるとこの2つになります」と、さっそく飼育員として基本になる心構えを学ぶ。

魚の健康状態や、水質や水温など環境の維持。さらに来館者のために水槽のガラスをきれいに保ったり解説ボードを作ったり、クイズなどのレクリエーションを提供することも飼育員の仕事だ。

一通り知識を学んだら、いよいよ飼育員体験の本番だ。子供たちは2グループに分かれてサクラマスとヤマメの水槽の前へ。この2つの魚、実は同じ種として河川で生まれるが、川に残り生涯を過ごすものはヤマメ、海に出て成長するものはサクラマスとなる。

それを聞いた子供たちはびっくり。同時に、同じ種でも過ごす環境が異なることで、餌や生態、そして大きさなど姿かたちまで違ってくることを知る実例となった。

また違う水槽では、この日の朝に死んだソイをヒトデが食べているところを目撃。ヒトデは生き物の死骸も食べることから「海の掃除屋」と呼ばれる。生き物たちがそれぞれの役割を担うことで、海全体の環境が保たれていることを学ぶ、生きた教材となったことだろう。

水族館飼育員には、機械を使って水槽の環境を維持する仕事もある。水族館の水槽では、水質をきれいに保つための装置と、水温を一定に保つための装置が24時間稼働している。「函館沿岸には南から来るあたたかい暖流と、北から来る冷たい寒流があって、魚はそれぞれの流れに乗ってやってきます。だから水槽の水をその魚の好きな温度で保たなければなりません」と講師が説明。

「水槽には海藻やプランクトンもいるので、ある程度の浄化作用を備えていますが、海の自然システムにはかなわないので、機械を使って水を循環させてきれいにします」。子供たちは、海洋環境と、それを水族館で再現する工夫についても学べたようだ。

魚の餌やり、水槽の清掃など、楽しみながら飼育員の仕事を学んだ子供たちからは、「ヤマメやサクラマスのえさを食べるスピードがとてもはやかった」「空気や水の機械があるのは知らなかった」「海のいきものは弱肉強食なんだとあらためて思った」「もっと魚の種類を知りたい」といった感想が寄せられた。

脅かされる海の生物の存続

環境問題が他人事であってはならない今、まずは興味を持つことが何よりも大切だろう。水族館での飼育員体験は子供たちにとって、環境に関心を持ち始める貴重な機会になったはずだ。海洋生物にもキタオットセイ、オサガメ、ガラパゴスアホウドリなど絶滅が懸念されているものは多い。その主要因には乱獲や混獲など人間によるものも。

図鑑や動画など、知るための環境に恵まれている子供たちにとってこそ、実際に触ってみる・体験してみるといった経験が問題意識を深めるはずだ。


文:平井達也

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