名前を呼ばれるほど自己肯定感は高まる!? 6歳までに心がけたい“子供の呼び方”

名前を呼ばれるほど自己肯定感は高まる!? 6歳までに心がけたい“子供の呼び方”
子供の自己肯定感を高めるためにいろいろな方法が注目されている中で、実は、わが子が生まれた時からしている“あること”がとても重要だという。“あること”とは? 谷崎テトラさんの連載コラム「未来の地球人育て」。

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子供の名前を呼ぶ、ということ

Every child has a beautiful name
A beautiful name,a beautiful name
(子供たちは皆素晴らしい名前を持っている)
ビューティフル・ネーム/ゴダイゴ

1979年は、国連が定めた国際児童年でした。当時、人気急上昇中だったバンド、ゴダイゴがそのテーマソングとして発表したのが、「ビューティフル・ネーム」という曲です。

「子供たちは皆素晴らしい名前を持っている」というシンプルなメッセージで、キャンペーンソングとしてTVで流されたことも相まって、ゴダイゴの代表的なヒット曲となりました。

「だれかがどこかで答えてる、その子の名前を叫ぶ… 名前 それは燃える生命(いのち)、ひとつの地球にひとりずつひとつ…」

このメッセージが多くの人の心に響き、話題になりました。1人ひとりの多様な個性を祝福するこの歌は、もしかしたら、いまの時代にこそ必要な歌かもしれません。

今回は「名前を呼ぶこと」。この神秘的な力について語ってみようと思います。

「名前」は生涯にわたり、その人を表すとても大切なものです。神社で参拝する時に、神様にむかって自分の名前と住所をしっかり伝えることが大切と言われています。名前はその人の人生における、重要なパスワードです。

古来から名前には力があり、名前には身体を保護する力があると信じられていました。なので氏神様から名前を頂き、氏神様の守護の下、幸せな一生を送れるよう祈念したり、あるいは偉人や社会的名声を持つ人にあやかって命名したり、といったことが行われてきました。

人には、それぞれ「宿命」があり、人間の意志を超えて、幸福や不幸がやってきます。そうした幸福や不幸、その巡り合わせを「名前」の持つ力によって変化させようと、「命名」に願いを込めてきました。

紙に書いた印象も大切ですが、その子が「呼ばれた時の印象」、そして皆が呼ぶ時の「音のひびき」が、その人の心に働きかけます。なにより、自分の名前を愛情を持って呼ばれること、それは心地良い体験です。自己の存在の確認、承認は、自己肯定感を高め、それぞれの内面へと作用し、生きる力の源泉になると考えられます。

名前は生まれてきた赤ちゃんへの初めての贈り物でもあります。赤ちゃんの言語発達の研究をされているNTTコミュニケーション科学基礎研究所の小林哲生さんによると、生まれてすぐの赤ちゃんでも、耳は聞こえていて、周りの会話や、自分への語りかけを聞いているそうです。生後6ヶ月頃には、半数のお子さんがすでに自分の名前がわかっているそうです。

人生を生きていくための土台となる能力の80%が6歳までに出来上がるため、乳幼児期の過ごし方が人生に及ぼす影響は大きいと言われています。何度も繰り返し、愛情をこめて名前を呼ばれることで育まれます。

シュタイナー教育の中では0~7歳までに生きることへの「意欲」が育まれると考えられていますが、シュタイナー自身は、「幼い子供たちは、天使の世界に近いところにいる」と語っています。そして「天使は『聴覚』に関わっている」とも。繰り返し名前を呼ばれることで自己肯定感が高まり、幸福度が上がります

これは心理学では、ネームコーリング効果と言われています。会話中に「あなたが」「君は」などの三人称で声をかけられるのではなく、名前で「〇〇さん」と呼ばれることで、肯定的な気持ちが生まれ、呼んだ相手に対しても好感度が高くなる傾向があるという心理効果です。

カリスマ保育士のてぃ先生は保育園で、さらに「名前の前に『大好きな』『大事な』という言葉を入れてあげる」といいます。「大好きな〇〇ちゃん、朝だよ~」「大事な大事な〇〇くん、保育園に行くよ~」とか言うわけですね。それだけで、無条件に愛されていた自分に戻るような感覚を得ることができるそうです。

こういった心理学的な研究を裏付けるように、人は名前を呼ばれると「オキシトシン」という幸せホルモンが分泌するという報告があります。ポーラ化成工業の研究によると、名字ではなく、下の名前で呼びかけられると、愛情ホルモンである「オキシトシン」が増加し、さらにストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」が減少することが明らかになりました。

子供の名前を何度も愛情をこめて呼ぶ。もちろん、それは大人になってからも、友人や夫婦の中でも、有効なわけです。あなたの大切な人の名前はなんですか?

PROFILE

谷崎テトラ
1964年生まれ。放送作家、音楽プロデユーサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の発信者&コーディネーターとして活動中。シュタイナー教育の教員養成講座も修了。
公式サイト:TANIZAKI TETRA OFFICE

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FQKids VOL.11(2022年夏号)より転載

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