SDGs調査で実証! 子供の興味・可能性を広げる“本当に自由な”オモチャの選び方

SDGs調査で実証! 子供の興味・可能性を広げる“本当に自由な”オモチャの選び方
ある保育園で実施されたプログラムでは、子供が自分の「好き」を大切にし、他者を思いやる力を備え持っていることを確信させる展開を見せた。オモチャを使ったプログラムの様子は、家庭での子育てにも参考になるものだ。

ジェンダー意識も重要なSDGs

持続可能な世界の実現を目指す開発目標・SDGsは、環境問題に引き寄せて語られることが多いが、決してそこにとどまるものではない。平等や平和、公正さといった価値を大切に、すべての人が自分らしく幸福に生きられることを目指す行動目標なのだ。そこにはジェンダーの問題も含まれる。

子供たちにとってももちろん無縁ではない。これまで男の子向け/女の子向けと分けられていた衣服やランドセルのカラーなども、ボーダーレス化が見られるようになってきた。では、子供たちに身近なオモチャはジェンダーの視点から見てどうだろうか?

オモチャに男女の区別は必要?

子育て支援サービスを提供する株式会社ここるくが開発した、保育園の子供たちと企業とが協同して取り組む「こどもSDGsプログラム」。第一弾企業として参加したのが、乳幼児向けオモチャの開発・販売を行うピープル株式会社だ。

オモチャについても男の子向け/女の子向けといった社会的意識がある。それは正当なものなのか。1人ひとりの「好き」「楽しい」こそが尊重されるべきではないのか。その時子供たちはどう振る舞うのか。こうした問いを解き明かすことがプログラムの目的だ。

プログラムを実施した園には新しく、男児用/女児用の偏りがないよう選定された、ピープル社を含む国内外のメーカーのオモチャ18種類が導入された。また、男児用/女児用の意識が先行して働かないようにパッケージも外された。子供たちは好きなオモチャを選んで遊べるよう配慮され、選び方や遊び方に大人のジェンダー観が影響しないよう、保育者たちも十分に注意を払った。

子供たちの遊びに特徴的な展開が見られた3つのオモチャについて、子供とオモチャとの接点が生まれて遊びを展開し始める「導入時期」、子供同士の間で遊びが広がる「拡散時期」、新たな遊び方や遊びの発展が見られる「拡充時期」の3段階に沿って、その様子を見てみよう。

ぽぽちゃん

導入時期には女の子のグループがお世話したりお医者さんごっこをしたりして遊び始めた。やがて男の子たちも興味を持ち、男女一緒に遊ぶ姿が見られた。ぽぽちゃんの人気に応える形で、2体を追加導入、計3体に。子供たちは「ぽぽちゃんたちのお家を作りたい」と希望を口にするようになり、1.5㎡のダンボールハウス制作がスタート(拡散時期)。

ある日の会話の中で、保育者が子供たちへ「ぽぽちゃんを誰かにプレゼントするとしたら、誰にあげたい?」と問いかけた。これをきっかけに、子供たちは園のお友達以外の人のことを考えるように。ある子は「やさしい人にプレゼントしたい」。自分たち同様にぽぽちゃんにやさしくしてあげてほしいという思いが汲みとれる。別の園児は「入院している人に」と発言した。この園児には入院の経験があり、入院している人を思いやる気持ちが育まれていることがわかる(拡充時期)。

将棋

導入時期に遊び始めたのは女の子のグループだった。彼女たちの多くに兄がいることがわかった。2、3週間経つと男の子たちが遊び始めた。この拡散時期においては子供同士で遊ぶことが多かった。

1ヶ月ほど経ち、男の子たちが保育者を相手に将棋を指すようになった。男の子たちは将棋の戦術やルールをどんどん理解。一方で将棋をする女の子は減っていった(拡充時期)。

ドールハウス

導入時期には女の子が中心になって遊んでいた。彼女たちは自宅にもドールハウスや似たようなオモチャがあることがわかり、初めから親しみやすかったものと思われる。

3、4週間経ち拡散時期に入り、男の子たちも遊ぶようになる。男の子ばかり数人でドールハウスを囲む姿が見受けられた。彼らは全員、同性兄弟のみであり、自宅にない新鮮な遊びとして受け入れたと思われる。お人形の衣服の着脱方法が分からず、女の子に教えてもらいながら習得するシーンもあった。

これらの様子から、子供たちは性別に関わらずさまざまなオモチャを柔軟に自分らしく楽しむことができるといえそうだ。むしろ自由にオモチャを選ぶ中で、お友達と適切に関わったり他者を思いやったりする心を育んでいると思われる。

ピープル株式会社取締役兼代表執行役の桐渕真人氏は、今回のプログラムでの様子から、次のようにコメントしている。

「いわゆる『男の子のあそび』『女の子のあそび』とは大人が勝手に思っていることであり、子供たちの好奇心にとってジェンダーは何も関係もないことだと改めて気づきました。子供たちが生まれながらの好奇心を発揮できるきっかけとなる役割がオモチャにはあると私は思っています。

今回の取り組みをきっかけとして、オモチャを通してジェンダー問題を解消するために私たちができることを探し出し、子供たちが性別や年齢などの属性にとらわれず没頭して遊べる環境を実現していきたいと思います」。

家庭から始められるSDGs

性差への意識が固定的な社会で育ってきた親世代にとって、頭ではわかっていても、無意識的に男の子/女の子の規範を子供に示してしまうことはあるかもしれない。大人の言動が子供の好奇心や可能性を抑え込んでしまうとしたらあまりにもったいない。

すべての人が自分らしく、というのがSDGsの精神だとしたら、それは家庭内からもスタートできるはずだ。パパママはわが子の自分らしさを少し意識的に尊重する必要があるのだろう。

〈調査実施概要〉
『こどもSDGsプログラム』
・実施回:プログラム第一弾 「おもちゃとジェンダー」(参加企業:ピープル株式会社)
・期間:2022年2月25日~5月13日
・実施園:社会福祉法人鐘の鳴る丘友の会 認定こども園さくら
・対象:4歳児クラス児童(期間中に5歳児クラスに進級)67名


文:平井達也

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