2021.09.13
2020.09.30
2022.06.27
食を通して自然や社会への探求を深める食育が近年注目されている。そこに欠かせないのが調理体験だ。もちろん生活していく力を養うためにも大切だ。家庭でのファーストステップは、親子で一緒に料理をしてみることからだろう。
まず考えるのは「何を素材に、どんなものを作ろうか」だ。子供の好きなものをというのも選択肢の1つだが、野菜を使った調理体験なら、子供にある好影響をもたらしてくれるらしい。
キユーピー株式会社は、白百合女子大学名誉教授・生涯発達研究教育センター特別研究員の田島 信元先生と共同で、野菜料理を親子で共同調理することによる子供の心理的発達への影響について調査研究を行った。約800組の親子を、過去1年間に「野菜料理の親子共同調理を経験した」「野菜料理以外の親子共同調理を経験した」「親子共同調理を経験しなかった」の3つの群に分け、それぞれの群の子供の心理的発達を分析したものだ。
子供の心理的発達は親による4段階評定の質問紙への回答に基づきスコア化された。指標となったのは自己統制力、主張力、協調性、自己肯定感、論理的・集中的態度、好奇心の6項目だ。いずれも非認知能力にかかわるものといえる。そしてその結果は、どの項目においても「野菜料理の親子共同調理を経験した」子供たちは、他の2つの群の子供たちより有意に高スコアだった。
共同調理の内容も興味深い。「洗う」「ちぎる」といった作業を、任せられている子供と親子で一緒にしている子供は、パパママが主に「洗う」「ちぎる」をしている子供より積極性、自立性や満足感において高いスコアを示した。
では、なぜ「野菜」がそのような好影響をもたらしうるのだろうか。一口に野菜といってもさまざまだ。色や形、剥くものや刻むものなど、他の食材と比べても「野菜」にくくられるものは多様性に富んでいる。調理方法も生食できたり、茹でたり炒めたりといろいろある。だからこそ、自分の調理スキルの向上を実感しやすいのが野菜料理なのだ。「うまくできた」と感じられることで自己効力感を促していると考えられそうだ。
また、野菜の多様性は調理中の親子の対話を促すきっかけにもなる。「このおいも変なカタチ!」「カボチャってなんでこんなに固いの?」などと率直な体感を言葉にしてみること、それを受け止めて親から言葉が返ってくること。そんなキャッチボールも子供の心理的発達に好影響を与えているようだ。
共同研究者の田島名誉教授は本調査研究について、「親子による共同調理体験の心理的発達における重要性を追認しただけでなく、野菜料理という調理対象の重要性が示唆されたという点で、本研究の意義は大変大きいものがあると考えています」とコメントしている。
子供は自分で収穫した野菜だと食べられるようになる、とはよく聞く。紹介した調査研究では、親子で野菜料理をすることでも野菜の摂取を増やす効果があることも明らかになっている。野菜を栽培して収穫となると時間も手間も要るが、おうちでの調理ならハードルは低い。
洗ったりちぎったりと遊び感覚で触れることで食べる克服ができたら、さらに自信にもつながる。ゆくゆくは、ニンジンの皮をナイフでどちらが薄く長く剥けるか、など親子で競争してみるのも楽しいだろう。
文:平井達也
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