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2022.11.26
2022.02.10
コロナ禍の外出自粛により、厳しい状況に置かれている旅行業界。その中でも、ワーケーションや人気アニメとのコラボ企画など、多彩なアイデアによる新鮮なステイ企画も生まれている。昨年12月には、子供がまだ幼いファミリーにぴったりなホテルが奈良県奈良市に誕生した。その名も『絵本ホテル』。
パパママにとっても、忘れていた子供心を蘇らせてくれる滞在になりそうだ。絵本のセレクトや設計、サービスに込められたこだわりを知って訪れれば、いっそう深い気づきをもたらしてくれるだろう。
絵本ホテルは、築36年の旧林野庁宿舎をリノベーションした建物の一室。もちろん住宅宿泊事業法の届出済みの宿泊施設だ。
既存建物をリユースするリノベーション・コンバージョンの手法を多数手がけてきたstudio D’ORO、イタリアを中心とする貿易業務・海外営業に従事してきた店主が運営するチェルビアット絵本店、電球交換から住宅リフォーム・店舗改装まで、暮らしや企業活動の基礎を支えるライフラインサービス株式会社。この3社が協力して開業が実現した。
壁いっぱいの本棚に並ぶ絵本は、イタリアを中心に世界中から選りすぐったもの。気に入ったものはその場で購入もできる。ラインナップにはジェンダー、環境問題など社会的なテーマを扱うといった、日頃なかなか出会えない絵本も。
ホテル内の仕掛けも子供目線の楽しさに満ちている。たとえばカベに穴を開けた「ノゾキアナ」。本棚に凹みを作って子供自身が棚に隠れられる「秘密のアルコーブ」。子供専用の「私の扉」や落書きし放題の「Drawing wall」など、自分の家ではできない過ごし方もここなら可能だ。壁一面に1,080もの穴が開けられ、ピンを抜き差しして遊べる「Play wall」も楽しい。
実はこのPlay wall、県内東吉野村産の吉野杉で作られている。無塗装で仕上げられているので、杉の香りに包まれて遊ぶことができるのだ。ホテルの裏山である赤膚山の桜枯木からDIYで作られたドアハンドルも温かい。
ミニバーでは地域の生産者、飲食店、配送業者との連携により、「奈良の味」を楽しめる。地産地消による環境負荷の低減も視野に入れていることを、わが子にも伝えたい。絵本ホテルはこれから、3年後までに奈良県内で10室、5年後までに日本全国で30室の展開を目指すという。
忙しい毎日の中で、子供に「早くして!」とまくしたてることも少なくないだろう。非日常な空間でスケジュールを気にすることなく過ごす穏やかなひとときは、パパママにとっても有意義な時間となるはずだ。親子で楽しさを共有することはもちろん、サステナブルな背景に触れてコミュニケーションを深めるには、そんなゆとりが必要かもしれない。
文:平井達也
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