2022.12.12
2022.06.30
2022.02.02
キャンプをはじめ、親子のアウトドア人気が高まっている昨今。わが子にもたくさん自然と触れ合わせてあげたいけど、身近に良い環境がない……と諦めてしまっていないだろうか。都会には都会なりの自然がある。家の周りにも多くの動植物が暮らしているはずだ。
畑や公園も、それらを必要とする人間の営みをひっくるめて自然の一部を構成していると考えられる。都市部での自然体験でも、子供に良い効果があるという検証結果が発表されている。
調査を行ったのは、株式会社ベジリンクと株式会社電通サイエンスジャム。Momo統合医療研究所の木村理砂医師・医学博士、慶應義塾大学理工学部の満倉靖恵教授の監修の下で実施された。
調査内容は2種類。1つ目は、農作業や公園遊びをした子供たちについて、感情の変化を脳波計測を通して測定したもの。2つ目は、日頃から農作業に親しんでいる子供たちとそうでない子供たちに、好きな野菜の絵を描かせて野菜のイメージを比較したものだ。以下、結果を見ていこう。
まず、都内の畑で農作業を経験した子供たちに感情の変化はあったのだろうか。測定の結果、農作業中はワクワク度が大きく向上し、集中度、好き度、興味度、ストレス度にも変化があったという。つまり農作業は、子供たちの心を生き生きと揺さぶったのだ。
次に、都内の公園で遊んだ子供たちの感情の変化。遊んでいる間から遊び終わった後まで、ワクワク度の持続やストレス度の低減が見られた。体を動かしお友達と遊ぶことで、気持ちが溌剌とし、ストレスが解消できたことがわかる。
そして2つ目の調査、子供たちの野菜の絵からは何が見えてきただろうか。日頃から農作業を経験している子供たちの絵には、土、野菜の葉や根、人物が描かれる傾向があり、絵に多様性があった。
A群:日常的に農作業を体験している園児(12名)の描画
一方、農作業を経験していない子供たちは全員が野菜を単体で描き、絵もやや均質的だった。
B群:日常的に農作業を体験していない園児(10名)の描画
農作業に親しむことで、野菜を1つの生命として、また人間や土地との関係の中で捉えられていると言えるだろう。
これらの違いについて、監修した木村氏は、「日常的に農作業を行っていない幼児では、野菜を単体で、小売店にて購入する状態で描く傾向がみられた」とし、「野菜を育て収穫する過程の経験値が、食育の観点で野菜に対する興味・関心を高めることが考えられる。」と検証している。また、「日常的に農作業を行っている幼児は絵が多様であり、野菜を描くことにおいてより想像力を働かせて自由に描いている傾向がみられた。」とも述べている。
子供に自然を体験させると言うと、遠くの山、川、海に出かけることをイメージしがちだ。しかし、近所の公園もちょっとした田畑も正真正銘の自然環境だ。お出かけももちろん貴重な体験になるが、日頃から近場の自然に触れることの意義を、今回の調査結果は教えてくれる。
昆虫を追いかけたり土をいじったり、ベランダで野菜を育ててみることが、子供の心身の発育に効果的のようだ。まずはわが子に好きな野菜や虫の絵を描かせてみて、ちゃんと自然と向き合えているか判断材料にしてみてもいいかもしれない。
〈調査概要〉
調査内容①:脳波計測
・検証実施日:A群 2020年11月17日、B群 2020年11月18日
・検証実施場所:A群 都内畑、B群 都内公園
・調査対象者:A群 保育園児(4~5歳)男女12名、B群 保育園児(4~5歳)男女10名
・実施内容:A群 農作業、B群 公園遊び(遊具は使わない)
・使用機材:感性アナライザ(株式会社 電通サイエンスジャム)
・調査方法:各アクティビティの前後に脳波計による感性計測を行い、アクティビティを通じて幼児の感性がどのように変化したかを計測
調査内容②:「好きな野菜」の描画
・検証実施日:A群 2020年11月17日、B群 2020年11月18日
・検証実施場所:各保育園内
・調査対象者:A群 日常的に農作業を体験している園児(12名)、B群 日常的に農作業を体験していない園児(10名)
・調査方法:「好きな野菜の絵」を自由に描画
文:平井達也
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