2023.04.24
2020.10.12
2021.07.31
突然ですが、皆さんは「親バカ」ですか? 親バカと言うと、ドラえもんのスネ夫のママのようにわが子を自慢し、甘やかす親を思い浮かべるでしょう。でも私はかねて、真正親バカを公言しています。思い切り親バカであっていいと思っています。
私が考える真正親バカとは、わが子を全力で歓迎すること。子供を親のアクセサリーにすることでも、親の手柄にすることでもありません。成績が良ければ愛してあげるとか、言うことを聞くなら可愛がってあげると言う条件付きでもありません。
ただ全霊で「この世にようこそ! あなたがいてくれてめちゃくちゃ嬉しい。私は心からあなたを歓迎するよ」と言い続けることです。子供の存在を丸ごと肯定することです。
「どんな人混みでも、君たちふたりは8Kクオリティで輝いて見える」と私が言うと、息子たちは呆れて「親バカだよ……」と言います。その度に大真面目に「いや、まじで私にはそう見えるんだ、なぜって君たちは本当に素晴らしいから!」と答えています。他人との比較で素晴らしいのではありません。彼らの存在は、私にとって永遠の奇跡なのです。
親にとって、自分の子供を尊敬できることほど幸せなことはないと思います。子育てをしていると、そういう瞬間はたくさんありますよね。すごいなあ、尊いなあ、自分にはできないなあ、美しいなあ、などなど、親は子供の姿から色々なものを学んでいます。私はそう感じたときには素直に「君を心から尊敬するよ」と伝えています。
他人に息子たちのことを話すときも、彼らを卑下しないで話しています。テストでいい点を取ったとか、他の子よりも早くできるとかそういうことではありません。
子供と一緒にいると、うわあ、奇跡だ! と感じる瞬間があるでしょう。その時に感じたのは他者に対するリスペクトであり、人間そのものへの信頼です。その気持ちを話すことは自慢ではなく、子供の尊厳を大切にすることに他なりません。
わが子を卑下して言うのは「親バカだと思われたくない」「自慢していると思われたくない」と言う親の不安によるものです。私も息子たちがうんと幼い頃にはわざとふざけて息子たちを貶し気味に言っていたこともありました。
ですが保育園児だった息子たちがそれを横で聞いていて悲しそうに抗議したのです。ママ、どうして僕たちのこと笑うの、と。その時に、幼い彼らの自尊心を蔑ろにしていたことに気づいて大反省しました。
息子たちは私の一部ではないし所有物でもないのに、「子供を褒めたら自分を褒めているみたいに思われる」と思ってしまったのです。息子たちにはごめんね、もうしないよと謝りました。親バカを恐れる気持ちは、子供を1人の人間として認識せず、自分の持ち物のように扱っていることの表れなのだと痛感しました。
誰かに無条件に受け入れられること、大切にされ、どんな不完全な自分も安心して見せられる場所があることは、子供にとってとても重要です。
人は失敗しながら学んでいくもの。安心して失敗できる場所がなければ、思い切った挑戦はできません。失敗が許されないと、嘘をついたり誤魔化したりして怯えながら暮らすことになります。実は、それは親にとっても同じなのです。
オーストラリアに引っ越して7年半。小学校3年生と6年生でいきなり異国の地で生きていくことになった息子たちの大変さは想像を絶します。私も夫も、親として全力でサポートしてきたけれど、彼ら自身が乗り越えるしかないこともたくさんありました。言葉を習得するのはもちろん、友達を作るとか、勉強するとか、親が代わってやれないことばかりです。
そればかりか、英語で助けてもらったことは数知れません。息子たちは無力な子供ではなく、かけがえのない頼れる仲間です。彼らは、日本にいたときは「親はなんでもできる」と思っていたでしょうけれど、異国の地で全く無力な存在になった失敗だらけの私たち夫婦を見て、親も不完全な1人の人間であることを発見したはずです。そして、自分には親を助ける力があるということも。
親子は、もともと力の差のある関係です。でもそれぞれの弱みを晒し、助け合う経験をすると、自然と相手に対する敬意と労りが生まれるように思います。私たち夫婦は、途方に暮れたり悩んだりする姿を見せてしまいましたが、息子たちはそれを一度も馬鹿にせず、全力で励ましてくれました。
海外移住という大冒険を通じて、私たち親子はお互いを心から信じ、尊うことができました。親としてこれほど幸せなことはないと、夫とよく話しています。そしてそれを、息子たちにも伝えています。あなたを尊敬しているよ、生まれてきてくれてありがとう、と。
人と人を結びつけるのは、敬意と信頼です。本気の親バカとは、わが子を思い切り祝福し、親に生まれた幸せに感謝すること。さああなたも、明日からレッツ親バカ!
小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
Twitter:@account_kkojima
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公式サイト:アップルクロス
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