2023.12.08
2022.09.17
2021.08.05
2020年は新型コロナウイルスの世界的パンデミックの1年になりました。
新型コロナウイルスの世界的なパンデミックは、社会や経済に大きなダメージを与えていますが、子供は比較的重篤化しにくいと言われています。他の多くの感染症や疾病が子供の健康を脅かしてきたことを考えると、唯一の救いと言えるかもしれません。手を洗うこと、うがいをすることで他の疾病も抑えられているとも言います。在宅勤務で子供と過ごす時間も増えた家庭も多く、これまでのような仕事の仕方やライフスタイルを見直すきっかけになっているのかもしれません。
新型コロナウイルスのパンデミックは、地球環境的には悪いことばかりではなくて、毎年、世界の炭素収支を公表しているグローバルカーボンプロジェクト(GCP) の報告によると、2020年の世界の化石燃料消費によるCO2排出量は、前年比で約7%の減少となる見込みであることを2020年12月に発表しました。
中国の大気汚染も都市封鎖によって一時改善され、汚染による死者を最大約7万7千人減らす効果があるとの分析が行われたりしました。そのほかにもインドの大気が改善されたり、ベネチアの運河の水がきれいになって、水鳥やイルカたちの姿が見られたというNEWSがありました。人類の経済活動と環境保全がトレードオフの関係にあることが明確になった形です。
人類が地球環境に与える負荷を計算するエコロジカルフットプリントもWWFの報告によると2020年の調査では10%改善されていて、新型コロナウイルスの影響により、人々の移動など消費行動が抑えられたことで、化石燃料由来の二酸化炭素排出量などが下がったことに起因します。
ユニセフ(国連児童基金)、世界保健機関(WHO)、ランセットの報告書「世界の子どもたちの未来のゆくえ」(原題:A Future for the World’s Children?)によると、「世界で発生する全ての死亡の約4分の1は、何らかの形で環境問題に起因し、その死亡者の3分の1以上を14歳以下の子供が占めている」そうです。
この気候の危機を止めるため、世界のあちこちで、まだ10代の若者たちが立ち上がりはじめています。気候危機のアクションはスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんの呼びかけが、世界150ヶ国の同世代の若者たちのアクション、FFF(フライデーフォーフューチャー)として広がっています。
また北米先住民の若者シューテスカット・マルティネスの活動は映画「気候戦士」でドキュメントされるなど、様々な形で若い世代のメッセージが発信され始めました。
カナダ在住のエマ・リムが18歳で立ち上げた「#NoFutureNoChildren(未来がないなら子供は持たない)運動」は、未来に絶望した若者が「子供を持たない宣言」をしていく運動なのですが、子供たちに「自分たちの世代はもう子供を持ちたくない」と言わせてしまう状況にハートが痛いです。
そんな中、気候変動への国際的な取り組みを決めたパリ協定にアメリカが復帰することは1つの希望と言えます。トランプ前大統領は前回16年の大統領選で「温暖化問題は中国のでっちあげ」と発言し、昨年11月4日に「パリ協定」 からの離脱を正式に国連に通告していたわけですが、次期大統領のバイデン氏は大統領就任と同時にパリ協定への復帰を明言しました。
さらに2050年までに温室効果ガスの実質排出ゼロを目指すことも公約に掲げています。温室ガス排出削減のための規制強化や、温暖化対策につながるインフラへの投資などに2兆ドル(220兆円!)を投入する計画を進めると言われています。
日本も2050年までにカーボンオフセットを宣言していますので、世界はようやく、現在の気候危機に目を向け始めたと言えるかもしれません。
気候変動の影響や、負担、利益を公平・公正に共有し、弱者の権利を保護するという人権的な視点を「気候正義(ClimateJustice)」といいます。2021年、「気候正義(Climate Justice)」元年になるか。
子供たちに未来を絶望させるようなことがあってはならないと考えます。
谷崎テトラ(TETRA TANIZAKI)
1964年生まれ。放送作家、音楽プロデユーサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の発信者&コーディネーターとして活動中。シュタイナー教育の教員養成講座も修了。
公式サイト:TANIZAKI TETRA OFFICE
FQ Kids VOL.05(2021年冬号)より転載
編集部のオススメ記事
連載記事