2021.11.21
2022.03.28
2020.09.22
「今こそ、日本の教育が変わるチャンス」と語るのは、ICT教育の専門家・平井聡一郎さん。平井さんは、茨城県の公立小中学校で教諭、教頭、校長として33年間勤務。「教師主導型」や「一斉教授型」とも言われる、“一方通行”な日本の教育を変えたいと、ICT教育の普及を目指してきた第一人者だ。
「高度成長期から日本ではインプット型の教育が進められてきました。でも、これからの時代を生き抜くためには、自分で考えてアウトプットする力が不可欠です。ICT機器を適切に活用することで、一方通行ではない教育を実現する、1つの切り口。優れたICT教育では、『コミュニケーション』『クリエイティブ』『スペシャリティ』といった能力が磨けます。アウトプットを1つのゴールにした、“探究的学び”を実現できるのです」。
来るべきAI時代を見据え、2019年12月に文部科学省が新しいプロジェクトを打ち出した。全国の小中学校において「パソコン1人1台」「高速ネットワーク環境」の整備を目指す「GIGAスクール構想」だ。当初、5年以内の実現を目指していた同プロジェクトだが、コロナによる臨時休校の現実を受け、早期実現を推進すると表明。オンライン学習が当たり前になる日も近い。
「ただし問題なのは、自治体によって格差があること。コロナを機にそれが明白になりました。臨時休校時の対応でも、いち早くオンライン教育を取り入れたり、ICT教育を応用したりした自治体もありましたが、概ね7割の自治体ではプリント配布による家庭学習が中心でした。また、動画配信の内容が“一方通行”だったり、オンライン学習の質も玉石混交。今後その格差はより顕著になると思います。住んでいる地域の自治体はどうか、親御さんはしっかり確認しましょう。場合によっては、住む地域を選択することの検討も1つの手段です」。
学校教育のみならず、民間でもオンライン学習サービスが活況だ。語学、プログラミング、スポーツ、音楽など、多様なジャンルでコンテンツが提供され、幼児向け、小学校低学年向けなど、対象年齢ごとにわかりやすくパッケージングされたサービスも多い。
「子供たちが学びの場を選択できるのはとても大切なこと。休校中は、保護者が協力してオンラインで勉強会をしたケースもありました。そうやって、コミュニティを育てるのも1つの方法。家庭でもオンラインをうまく取り入れて、子供が主体的に学ぶ力を伸ばせるよう、さまざまな可能性を探ってみるといいでしょう」。
平井聡一郎さん
株式会社情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 特別研究員。茨城県で公立小中学校教諭、指導主事、管理職を経験後、早期退職し2017年から現職。文科省、総務省、経産省のICT関係の委員等を歴任。全国各地でICT機器整備のコンサルティング、ICT活用を切り口とした授業改善、小学校からのプログラミング教育普及等に取り組んでいる。
文:曽田夕紀子
FQKids VOL.03(2020年夏号)より転載
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