2022.04.18
2020.10.16
2020.10.02
「自律的で主体的な学びができる環境づくり」とよく言われるが、どのようしたらいいのだろう。
そのヒントが「静岡あたらしい学校」にある。最大の特長は子供たちそれぞれの「やりたい!」を叶えるために、みんなでチームになってプロジェクトを進行するスタイルにある。それはまるで会社の新規事業チームのよう。
自身で調べ、計画を話し合い、調達が必要となれば自ら交渉にでかける。先生は指示する、評価するなどはしない。それらが子供の自律や自主性を奪うからだ。
公立小学校で30年間教鞭を執った元ベテラン教師の能口さんは「子供はいつでも答えは自分の中に既にあります。私たちがすることは、余計なことはしないこと。それって本当は一番難しいんですけどね」と笑う。
この学校には、大好きな地下足袋を履きたいのに学校から断られた子、家ではおしゃべりなのに学校では話さない子、一方ではゲームもパソコンも電気も全部自分でつくってしまう天才的な子など、個性豊かな子供たちが通う。
取材した当日は「旅学び」の日。旅学びとは、子供たちで行き先を決め、何ヶ月も前から自分たちで準備を進め、行き先の歴史や地理などを調べ、朝出発前にはお昼ご飯のおにぎりを自分たちで握り、旅に出て自主的に学ぶ活動だ。
「静岡あたらしい学校」が大切にしていることは「ホンモノ」。覚えるのではなく、体験から学ぶ。これまでも「鶏を飼って毎日卵の料理が食べたい!」「久能山東照宮に行きたい!」など、子供たちの様々な「やりたい」を叶えてきた。
本日の最初の行き先は、静岡市の乗馬クラブ。ここでの主役は酒井田のど香ちゃん。「大好きな馬を知ってほしい」という思いから計画した。常歩、速歩を披露し、みんなから大きな拍手をもらい、のど香ちゃんも自信ありげな笑顔を見せた。
次に向かったのは、里山遊びや里山体験ができる「遊木の森」。今度は佐藤暉てるまさ将君が案内役兼主役。彼は赤ちゃんの頃からここに通う森の達人だ。能口さんは簡単な注意事項だけ伝えると、子供たちを解散させた。走り出す子、ステージで踊り出す子、おにぎりをすぐに食べ始める子など、各々思い思いに行動を始める。
ある集団は昼食後、丘の頂上の見晴らし台へ続く薮の中のトレイルへ向かう。ペース配分などお構いないしに一気に駆け上がり、てっぺんまで登りきると山頂の景色を楽しむ間もなく一気に駆け下りる。下りのトレイルで「優しい道」と「険しい道」の分かれ道が現れた。険しい道は、崖っぷちさながらの急斜面。さあ、どっちに行こうか、と立ち止まって躊躇している子たちの背中に、能口さんは険しい道を指差して声をかけた。「今、こっち行きたい、と思ったでしょ?」
すると子供たちは勢いよく「険しい道」をトレイルランさながら飛び出した。彼らは “本当に行きたい道”を進んだのだ。「危ないから気をつけて」など、大人が言いがちな言葉(リミッター)は一切不要だ。子供自身も自制してしまう瞬間があるもの。大人はそれを見逃さずに「本当に行きたい道に進めば?」と背中を押す。それが「静岡あたらしい学校」のスタッフの役割なのだ。
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