顔に傷が! イヤと言えないわが子を見守るための、親の「共感・代弁」3ステップ

顔に傷が! イヤと言えないわが子を見守るための、親の「共感・代弁」3ステップ
テレビ番組やSNSでも大人気の現役保育士・てぃ先生が、FQ Kids読者の悩みに答える連載企画。今回は「娘はされたくないことをイヤと言えないのでは」と悩む親御さんのお話です。

《相談内容》

1歳4ヶ月になる女の子を育てている母です。娘は今年の4月から保育園へ通い始めました。最近保育園で顔をつねられているようで、よく傷を作って帰ってきます。されたくないことをイヤと自分で言えるように教えるには、どうしたらいいでしょうか。

また、子どもがおもちゃを投げたり、人におもちゃをぶつけたり、手を出したりすることがあります。注意をしたいのですが、いい方法がわかりません。

(こんちゃんさん・1歳の女の子の親)

親が子どもの気持ちを
決めつけていませんか?

保育園で顔をつねられて、傷を作って帰ってくる。大人にとっては「よくないこと」だと感じますよね。でも1歳4ヶ月のその子にとっては、それだけではないかもしれません。

「つねられるのは嫌なこと」で、「嫌なのに自分で言えない」のだと決めつけるのは、お子さんの価値観や人間関係の構築の上ではもったいない見方です。

もしかしたら、友だちと関わることの楽しさ、嬉しさがあり、大人が考えているほど嫌だと感じていない可能性もあります

1歳4ヶ月の子どもは、言語的に発達していく段階。もし言語が未熟で「イヤ」と言えないのだとしても、相手を押したりして気持ちを伝える方法はあります。

嫌と感じたことに対して自分が反応し、それに相手もアクションを起こす。そうやって、子どもたちは人間関係を学びます。大人の役割は、まずはそれを見守りながら、気持ちに共感して代弁していくことだと思います。

例えば、ある程度は話ができる子が傷を作っていたら、僕だったら「どうしたの?」とまず状況を聞きます。それに対して「〇〇くんに引っかかれたんだよ!」と答えたとしても、それが「嫌なこと」だったかどうかまだわかりません。

そこで「そうか。引っかかれたんだね」と事実だけ繰り返します。ここで大人が「嫌だったね」と言ってしまうと、そう感じていなくても「嫌なこと」になってしまうからです。

もしも「引っかかれて嫌だった!」と答えたら、「そうか、嫌だったんだね」と共感してみます。まだ上手く話せなかったりして、わが子に聞いただけではわからなかったら、園の先生に詳しい様子を聞いてみてもいいかもしれません。

何にせよ、子どもの気持ちを勝手に決めつけるのではなく、子どもが感じていることをそのまま受け止めることが大切。

もちろん、ケガを負わされること自体はネガティブなことですから、心配することは悪いことではありません。ただ、遊びの中でたまたまできたような傷まで、“嫌なこと”と教え込むのはもったいないと思います。

親の価値観を子どもに押しつけない方が、その子自身の性格や個性が良い形で表現されていくのではないでしょうか。

なぜそのおもちゃを投げたの?
見えない気持ちを考えてあげて

おもちゃを投げることにも、似たような面があります。

子どもが悪意を持っておもちゃを投げていたら、もちろん注意した方がいい。でも、大人にとって一見よくない行動でも、子どもにとってどんな意図があったのか、考える必要はあると思います。

単純に遊びたいから投げているのか? 遊びに飽きたから? もしかしたら、単に大人の注意を引きたくて投げているのかもしれません。

最初から全部悪意があると決めつけてしまうと、子どもは「お友だちに関わろうとすると、いつも叱られる」ととらえてしまうかも。「おもちゃを投げてはいけないよ」と伝えたいなら、「危ないよ」と一言で伝えてあげて。

子どもが「身体を動かしたい」と思って投げているなら、「投げたらダメ」と伝えるだけじゃなく、柔らかいボールなど投げてもよさそうなおもちゃを渡して、「これなら投げてもいいよ」と伝える方がいいかも。ダメなことより、やっていいことを伝えた方が行動の修正が早くなります

もしその子が「お友だちにイヤなことをされたから投げた」のであれば、その気持ちに共感して、代弁することが大切です。

大人は「どういう風にやめさせるか?」ではなく、「なぜ子どもはそれをしたのか?」をまず考えてあげられたらいいなと思います。

PROFILE

てぃ先生

関東の保育園に勤める現役保育士。名前の読み方は「T」先生。SNSの総フォロワーは200万人を超え、保育士として日本一の数である。超具体的な育児法や子育てにおけるアドバイスは斬新なアイデアにあふれており、世のパパ・ママに圧倒的に支持されている。現在はSNSだけでなく、報道番組からバラエティー番組まで幅広いジャンルのテレビにも出演し、「いま一番相談したい保育士」と紹介されることも。

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文:藤城明子

FQ Kids VOL.19(2024年夏号)より転載

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