【世界の最新教育事情7選】子どもの語彙力を育てる、海外での絵本との触れ合い方

【世界の最新教育事情7選】子どもの語彙力を育てる、海外での絵本との触れ合い方
各国の現地ライターが世界の最新教育事情をお届けする「WORLD LEARNING NEWS」! 今回のテーマは「子どもの本」。オランダの児童書博物館やアメリカの対話型読み聞かせなど、海外情報をご紹介。

遊び心あふれる児童書博物館
From NETHERLANDS

絵本の世界に入り込んで楽しむ子どもたち。 ©Eveline van Egdom

デン・ハーグには図書館に併設した児童書博物館がある。「はらぺこあおむし」やオランダ発の「ミッフィー」をはじめ、子どもたちに人気の絵本の世界に入り込んで遊べる常設展や、自分で物語やキャラクターを制作できる体験コーナーがあり、さまざまな企画展、イベントも催されていて、幼児から大人まで楽しめる。

オランダで人気の児童書「きつねのフォスとうさぎのハース」の体験コーナー。 ©Eveline van Egdom

館内全体がオランダらしい遊び心あふれる魅せ方になっており、訪れる人は誰でも自然に本の世界に引き込まれていくだろう。

文:米屋香林

すべての子どもに等しく本を
パリ最古の児童図書館
From FRANCE

設立50年の1974年に現在の場所に移動した。 ©Clément Dorval – Ville de Paris

パリで最も古い児童図書館は、文教地区カルチェラタンにあるルール・ジョワイユーズ(楽しい時間)図書館だ。第一次大戦後に、当時児童図書館のパイオニアだったアメリカの支援で開設。図書館の敷居が高かった時代に、性別や階級、貧富の差なく無料で利用でき、子どもの自主性を育てる目的があった。

本の閲覧方法も、申請した本を司書が書庫から出す閉架式が主流だった中、利用者が自由に手に取れる、当時最新の開架式を導入。100年経った今も多くの子どもたちが集まる。

文:守隨亨延

言語発達に違いが出る
「対話型読み聞かせ(Dialogic Reading)」
From USA

アメリカの発達心理学者、グローバー・ホワイトハーストが1990年代初頭に対話型読み聞かせプログラムを最初に開発。

今、アメリカの多くの幼稚園や小学校などで導入されている「対話型読み聞かせ」。言語発達が早いことが科学的に証明され高い評価を得ている。基本的な技法は「PEERシーケンス」と呼ばれるもの。

例えば、消防車の絵を指して「これは何?」と促し(Prompt)、子どもが「消防車」と答えたときに、指導者は「そうだね」と評価し(Evaluate)、「赤い消防車だよ」と拡張(Expand)して「消防車って言ってみて」と繰り返し(Repeat)を促す。これによって、子どもの理解を深め、学習を促進することが狙い。

文:大山真理

お茶をしたり遊んだりしながら
本に親しむ場としての図書館
From DENMARK

カフェが併設されている図書館も多い。 ©Educational Visits Denmark

デンマークには、カフェや子どものためのプレイエリアが併設されている図書館もある。そんな図書館には、週末は朝から幼い子どもを連れた多くの家族が集って、カフェでお茶や食事をしながら他の親子と交流し、プレイエリアで子ども同士で遊び、図書スペースで本に触れ……と、それぞれがヒュッゲ(※)な時間を過ごしている。

図書館では子ども向けの本に関連したワークショップやイベント、さまざまな交流会や読書会が開かれることも多く、市民生活の中に本に触れることが自然と組み込まれている。

※ヒュッゲ:デンマーク語で「居心地がいい空間」や「楽しい過ごし方」を意味する

文:Ayumi Umino

ムーミンとともに「読み書き」の喜びを分かち合う取り組み
From FINLAND

ムーミン アルファベットコレクション マグ。 日本でも販売しており、店舗やオンラインストア等で購入できる。各¥3,960(税込)

世界的に有名なフィンランド文学のキャラクター、ムーミン。その作者トーベ・ヤンソンは、幼い頃からよく本を読み、やがて数々の大作を書き残した。その意思を継ぐムーミンキャラクターズ社では、ムーミンを通じて読み書きの喜びを広める「Reading, Writing and the Moomins」というプロジェクトを推進している。

同企画では、賛同する企業や団体と展示やコンテンツ、アルファベット本などをリリース。中でも陶器ブランドのアラビアは「ムーミン アルファベットコレクション」で毎年数種類ずつ、アルファベットをあしらったマグカップを発表し続けることでファンを魅了している。

文:靴家さちこ

文字のない絵本で育つ
語彙力と想像力
From GERMANY

ドイツで著名なイラストレーター、ペーター・エンゲルが描いた市場の様子。 ©editionbuntehunde.de

ドイツで定番の幼児本といえば1歳半から「見」始められる、ヴィンメルブッフ(Wimmelbuch)というタイプの絵本だ。各見開きページには商店街、駅、保育園などの日常風景が細かく、リアルに描かれている。文字や物語が載ることは珍しい。

ヴィンメルブッフには子どもの語彙力を伸ばす効果があるといわれている。さらには、想像力をかき立てるために「○○はどこにある?」「この人はなんで怒っているの?」と積極的に話しかけることが勧められている。

文:町田文

子どもたちが楽しみながら
本と触れ合う一週間
From ITALY

期間中は子ども向けのワークショップなどたくさんのイベントを開催。

イタリアの児童向けの本のイベントといえば、「ボローニャ・ブックフェア」が有名だが、実はミラノで2012年より毎年11月に行われている「ブックシティミラノ」というブックウィークでも、子どもが本に親しむための無料のプログラムが多数用意されている。

例えば昨年は、本の読み聞かせ、音楽やクイズ形式のゲームなども交えたワークショップ、寸劇を交えたストーリーテリング、本を読みながらのパジャマパーティ、そして子どもたちが作成した絵やプラスチック素材による作品などの展覧会等が行われた。

文:田中美貴

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FQ Kids VOL.19(2024年夏号)より転載

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