2022.10.15
2023.12.20
2024.07.03
梅雨が明ければいよいよ猛暑がやってくる。子どもと高齢者は特に、体温調節のコントロールがしきれずに熱中症になるリスクが高いと言われる。わが子が熱中症の危険にさらされないようにするには、どう対策すればいいのだろうか?
今回は、著書『いのちを守る水分補給~熱中症・脱水症はこうして防ぐ』を通じて熱中症予防・対策を啓発している医師、谷口英喜先生のアドバイスのもと、熱中症に強い身体づくりの基本や、猛暑の真っただ中に摂取すべき栄養素&おすすめの食事を紹介する。
谷口氏によると、毎日の食事を規則正しく3食きちんと摂り、バランスのとれた内容にすることがまず重要であるという。その上で、特に覚えておきたいのが、今すぐにでも摂る習慣を取り入れたい「タンパク質」「タウリン」「ビタミンC」と、盛夏に欠かせない「カリウム・ビタミンB」だ。
順番に、それぞれの栄養素が重要な理由と、どんな食材から摂取できるかを見ていこう。
たんぱく質は筋肉をつくるのに欠かせない栄養素として知られているが、熱中症に強い身体づくりにも筋肉量を増やすことが重要だという。
なぜなら、体内の水分のうち約半分の量は筋肉に貯蔵されるため、筋肉量が多いほど水分を身体に維持でき、脱水になりにくく、熱中症予防につながるからだ。
また、血管中に水分を引き込む浸透圧を維持する役割を担う、血漿の中に含まれるアルブミンというたんぱく質の原料になるのも、たんぱく質が熱中症対策に欠かせない理由の1つだ。
貯水しやすい身体づくりという観点からも、肉や魚、卵といったたんぱく質の豊富な食事を心がけ、涼しい時間帯に運動をすることなどもぜひ習慣にしたい。(気温の高い時間帯の外遊びは熱中症リスクにもつながるので要注意。)
タウリンと聞いて、日頃仕事中に飲用している栄養ドリンクを思い浮かべた人も多いのでは。その通り、筋肉疲労の回復や滋養強壮などの効果で知られているのが、タウリンだ。
実は、タウリンには身体のさまざまな機能を調節する働きがあることがわかっており、近年はさらに、深部体温を下げる働きがあることもわかったという。その意味で、中長期的にタウリンを摂取しておくことで、熱中症に強い身体づくりにつながるといえる。
タウリンは、牡蠣やあさり、タコ、イカなどの魚介類に豊富に含まれているため、魚介類を積極的に摂取しよう。夏遊びの疲労回復にもつながり、一石二鳥だ。
ビタミンCには抗酸化作用があり、体内の活性酸素を減らして細胞を守り、炎症を軽減してくれる働きがあることから、「暑熱順化(しょねつじゅんか)」という、“身体が暑さに慣れる”ことをサポートしてくれる。
暑熱順化が進むと、発汗量や皮膚血流量が増えて身体の表面から熱を逃がしやすくなり、熱中症のリスクを低減できる。ビタミンCはご存知の通り、野菜や果物に豊富に含まれているので、意識的に摂取したい。
野菜嫌いなわが子にはその分果物を……という場合は、食べたいだけ食べさせるのは糖分の摂りすぎになるおそれがあるので注意しよう。
カリウムやビタミンB1は、気温が上昇し、たっぷりと汗をかくようになったら特に意識したい栄養素。野菜や芋類、海藻類に豊富なカリウムは、尿を出しやすくし、体温を下げることに役立つ。
緑黄色野菜や豚肉に豊富に含まれるビタミンB1は、暑さによる疲労感をやわらげ、食事から摂取した糖質を体内で燃やし、効率的にエネルギーをつくることで、必要な身体作用をサポートしてくれる栄養素だ。
タウリンやビタミンCは、どちらも水溶性で水に溶けやすいため、野菜や魚介類などをゆでて調理すると、ゆで汁に栄養素が流れ出してしまうので注意が必要。流れ出した分も一緒に摂取できるよう、汁物の料理がおすすめだ。
例えばタウリンであれば、あさりの味噌汁、クラムチャウダー、牡蠣鍋など、ビタミンCであれば、野菜や果物は生で食べる、料理に使うときはスープや鍋物、シチューやカレーなど、ゆで汁や煮汁も一緒に食べられるメニューを選ぶと良いだろう。
谷口先生によると、おすすめなのは夏野菜カレーだという。その理由は野菜をたっぷり摂取できる上に、野菜や芋類などに豊富なカリウムやビタミンB1も摂取できるからだ。そしてカレーのメインの具に魚介類を選べばタウリンを、豚肉を選ぶと、ビタミンB1が摂取できる。
カレーならば、きっと多くの子どもが喜んで、たっぷりおかずを食べてくれそうだ。ぜひ夏は、家族みんなで熱中症予防カレーを楽しもう。
今回は、長期的な観点から熱中症に強い身体づくりを行うための5つの栄養素「タンパク質」「タウリン」「ビタミンC」「カリウム・ビタミンB」を紹介した。
どれも重要な栄養素だが、偏りのないように食事を摂取し、水分補給をこまめにさせ、よく睡眠を摂らせること、また、クーラーをきちんと使用し、涼しい場所で過ごせるようにすることが熱中症対策の基本だ。日頃から熱中症リスクを意識して、安全で楽しい夏を過ごそう。
谷口 英喜先生
済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/周術期支援センター長/栄養部部長、医師。麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理のエキスパート。日本麻酔学会指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医、TNT-Dメディカルアドバイザー。1991年、福島県立医科大学医学部卒業。学位論文は「経口補水療法を応用した術前体液管理に関する研究」。2024年5月に新刊『熱中症からいのちを守る』(評言社)が刊行。その他の著書『いのちを守る水分補給~熱中症・脱水症はこうして防ぐ』(評言社)など。
文:FQ Kids編集部
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