わが子の“自己効力感”を高める教育とは? 幼稚園や学校選びよりも重要な親のスタンス[前編]

わが子の“自己効力感”を高める教育とは? 幼稚園や学校選びよりも重要な親のスタンス[前編]
夫の予期せぬ退職をきっかけに、日本からオーストラリアへの教育移住を決めた小島さん。誰もが憧れる海外生活だが、決して簡単なことではない。海外生活を通した経験、子供や教育の未来についての考えを綴るエッセイ。「小島慶子の“子育て 世育て 親育て”」連載第2回前編!

“親の見識”って何だろう

子育てには、親の見識が表れると言われます。親同士も、それこそ粉ミルクのメーカー選びから習い事の教室のセレクトまで、実に細かいことで「ああ、おたくはそっちなのね」などと選別をしがちです。私も初めての子育てではずいぶん「いいモノ選び」に悩みましたが、今考えると、どっちでも良かったことばかりです。

次男を産んだとき、長男同様に初めて口にするものは初乳で! と思っていました。ところが分娩後に一寝入りして目覚めたら、看護師さんがにこやかに「赤ちゃんにミルク飲ませておきました!」と言うではないですか。

わが子の腸壁バージンが……とショックだったものの、おかげで「もう細かいことはいいや、元気ならよし!」と発想を切り替えることができました。

それ以降は長男の時よりもグッとハードルを下げて、おしゃれじゃないレンタルベビー用品を借りまくり、手作り離乳食もはなからスキップして和光堂とキューピーで育てました。長男17歳と次男14歳の現在、揃ってすくすく育っています。だからどっちでもいいのです、たいていのことは。

では幼稚園や学校選びはどうでしょう。これも親の教育理念が問われますよね。公立で育てるのは不見識で、私立ならいいのか、それともその逆か。17年経って分かったのは、これまたどっちでもいいということです。

もちろんもし可能なら、より質の高い教育を受けられるチャンスを与えた方がいいでしょう。ただ、最高のものをと思っても経済的な理由などからそれが叶うとは限りません。

肝心なのは、親が「学ぶことは大事だ、あなたは学ぶのにふさわしい子供なんだ」と伝えること。学ぶのにふさわしい、ってつまりそれだけの価値がある存在だということです。

歓迎の気持ちを持つことが重要

教育とは、ウェルカムすること。ようこそこの世へ! ここはいいところだよ。いろいろ教えてあげるから安心してね、あなたはここにいていいんだよ、という社会からのメッセージです。

歓迎は「勉強しないと惨めな人生が待っているぞ」という脅しよりも、子供を強くします。親の心がけは、そのような子供への言葉がけに表れるのではないかと思います。

アメリカの心理学者、キャロル・ドウェックは「成長型マインドセット」の重要性を訴えています。たとえ子供が今はいい結果を出せなくても、「不合格:だめ」ではなく「未合格:まだ」と評価されれば、自分は成長できると信じ、学習意欲を維持できるというのです。

「あなたは賢い子だね」という言葉がけは子供にプレッシャーを与え、不安を強めますが、「君は本当によくやっているね」なら、子供は自己効力感を高めることができる。努力のプロセスが評価されるなら、自分はきっとやれる、チャレンジしてみようと思えます。

親だってそうですよね。あなたは優秀な親だと言われるよりも、子育て頑張っていますよねと言われた方が緊張が和らぐし、報われた気持ちになるでしょう。

後編:「よくやっているね」の言葉がけには注意が必要?

プロフィール

小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1972年オーストラリア生まれ。95年学習院大学卒業後、TBS入社。アナウンサーとしてテレビ、ラジオに出演。99年、第36回ギャラクシーDJパーソナリティ賞受賞。2010年に独立後は各メディア出演、講演、執筆など幅広く活動。14年、オーストラリア、パースに教育移住。自身は日本で働きながら、夫と息子たちが暮らすオーストラリアと往き来する生活。新刊『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
オフィシャルサイト
Twitter:@account_kkojima

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