2021.11.05
2021.05.19
2023.11.02
鳥山雅代さん
教育者。ドイツでシュタイナー教育を学び、シュタイナー学校の教師となる。現在、東京都立川市にある東京賢治シュタイナー学校で教師を務める他、シュタイナー教育に関する講座や、動画・音声配信などで情報を発信。シュタイナー教育に関する訳書多数。
親子のコミュニケーションがうまくいかないとき、「もしかして相性が悪いのかも?」と悩む親も多い。「確かに、自分と似た気質の子どもは一緒に過ごしやすく、理解しやすいという傾向はあります」と鳥山先生。
ただし、異なる気質だから理解できない、相性が悪いということではない。子どもの気質を知り、その行動や傾向を理解することで、コミュニケーションもスムーズになるはずだ。
「親と真逆の気質の子どもは、自分にとって“成長”をもたらす存在と考えて。“自分とまったく違う”と感じる子どもからこそ、親は多くのことを学ぶことができます」。
多血質・好奇心旺盛タイプの親
× 胆汁質・熱血やる気タイプの子ども
ほがらかな多血質の親はいい面もあるが、胆汁質の子どもにとっては目標がなく、軽薄な存在に見えることも。親が目標を持ち、頑張って取り組もうとする態度を見せることで、親子の信頼関係を築くことができる。
多血質・好奇心旺盛タイプの親
× 憂鬱質・シリアス慎重タイプの子ども
いつも前向きな多血質の親は、憂鬱質の子どもにとって深刻なことも「それくらい大丈夫だよ!」と受け流してしまいがち。逆に「気持ちをわかってもらえない」と落ち込む場合があるので、子どもの気持ちに寄り添ってあげよう。
鬱質・シリアス慎重タイプの親
× 多血質・好奇心旺盛タイプの子ども
心配性な憂鬱質の親はほがらかに生きる多血質の子どもを理解できず、心配が高じて叱ったり、「すぐに飽きるんだから!」と文句を言ってしまうことも。一緒に喜んでほしい子どもの気持ちに応えるよう心がけて。
胆汁質・熱血やる気タイプの親
× 粘液質・ゆっくり穏やかタイプの子ども
せっかちな胆汁質の親は、ゆっくりペースの粘液質の子どもに「早くしなさい!」「いつも遅いんだから!」とイライラしてしまい、結果逆効果になりがち。時間に余裕を持たせ、子どものペースを守れる環境づくりを。
【気質別コミュニケーションのコツ】
気質別 子どものほめ方・叱り方Q&A
わが子をもっと理解して、有効なほめ方・叱り方を知るための「気質」の生かし方について、鳥山先生に伺ってみました。
A.自分自身の「気質」と自分の中の偏りに目を向けて!
「本来、人は4つすべての気質を持っているもの。親も子どもも、そのうちのいくつかの気質が偏って強く出ているだけです。
気質の異なる子どもとの生活は、自分の中の偏りを学び、成長するための絶好のチャンス。一度自分の中の気質の偏りと向き合ってみましょう。『自分とまったく違う』と感じる子どもこそ、自分にないものを補ってくれるでしょう」。
A.夫婦や同僚の「気質」を知ることはお互いの理解へとつながる!
「もちろん使えます。夫婦関係を理解するときや、仕事におけるコミュニケーションをスムーズにしたいときに、気質について理解することが役に立つでしょう。
例えば胆汁質の人間は活動的なリーダーにもなれますが、部下や同僚、家庭でのパートナーを感情的に叱りつけることがあるかもしれません。そんなとき、胆汁質の子どもへの対応方法が応用できるはずです。これまで理解できなかった相手を理解する一歩となるでしょう」。
A.自分の気質を十分に発揮することで別の気質も伸びていく!
「子どもの気質は3~4歳から出てきます。ただ周囲に自分を合わせすぎて、本来の気質をうまく出せない子もいるので、その場合はその子らしさを出せる空気を家庭で用意してあげましょう。
自分が特に強く持っている気質を十分に発揮すると、次は別の気質が伸び始め、しだいに4つの気質が調和した人間へと成長していきます。『ウチの子は〇〇気質だから変わらない』と決めつけず、長い目で見守ってあげましょう」。
A.決めつけの表現は子どもにとっての足かせに!
「例えば『あなたは“~タイプ”ね』と話すことは、子どもにとって足かせとなるので避けましょう。決めつけるような表現をすることで、子どもを傷つけてしまうことがあります。
本来、子どもは可能性に対して変化していく存在。気質=その子のすべてではなく、気質の奥に本当のその子の個性があります。子どもを理解するために気質を知ることは大切ですが、『本当のこの子はどんな子なんだろう?』『これから何が伸びていくんだろう?』とわくわくしながら見守る気持ちを大切にしてください」。
文:藤城明子
FQ Kids VOL.14(2023年春号)より転載
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