2023.02.22
2024.10.28
2023.05.30
《 今回の相談内容 》
我が家は7歳と5歳の2人兄弟です。兄が2歳下の弟に泣かされることが多いのです。弟の性格は、我が強くて、負けず嫌い。おもちゃを奪って返さなかったり、ちょっとしたことでけんかをふっかけます。多少のことならと放置してみるのですが、最後には弟の手が出ます。
兄は「やめて」と言うだけで、やり返すこともなくやられっぱなしです。弟を落ち着かせるか、あるいは兄にもう少し強くなってもらうか。とにかくどうにかしたいのですが、良い対処法があれば教えてください。今後もし、お友達との間で同様のことがあった場合、上の子が自力で対処できるか心配です。
(匿名さん・7歳、5歳の男の子の親)
まず、お兄ちゃん本人はどう感じているのでしょうか?
もしも、本人が「やられっぱなしで本当は悔しい」「やり返したいし、言い返したいこともたくさんある」と言うなら、親がフォローしてもいいかもしれません。
ただ、やり返さない理由はいろいろ考えられます。もしも、年上の自覚があるから下の子には手を出さないとか、我が強くて負けず嫌いの弟を受け止めようと思ってのことだったら、気遣いをしているお兄ちゃんということになります。
匿名さんは、お兄ちゃんが強くなったり、やり返したりできるようになることを望んでいるようですが、無理に変わらなくてもいいんじゃないでしょうか。
1人ひとり皆個性があり、物事への向き合い方も違います。やり返すことだけが正解ではありません。大事なことは、本人の気持ち。自分の気持ちに正直になって、思った通り行動できればいいのです。
気をつけたいのは、親や周りの大人が「やり返したほうがいい」という雰囲気を作ってしまうこと。その子の中でそれがしたいことではなかった場合、とても辛くなりますよね。親ができることは、まず本人の想いを聞くことだと思います。
また、弟の方への対応も必要ですね。5歳という年齢はお話しも得意になってきたように思えますが、基本的にはまだ言語的発達よりも身体的発達の方が早いので、「共感」と「代弁」が必要です。言葉で気持ちをうまく言えないから、叩いたり、引っ掻いたり、物を投げたりすることになります。その方が楽だからです。
そんな弟が自分の気持ちを言葉にできるよう、積極的に「共感」と「代弁」をしてみましょう。例えば「お兄ちゃんのおもちゃを使いたかったんだね。じゃあ、お兄ちゃんに言葉で貸してと言ってみようか」といったアプローチです。
ただし、1つ気をつけたいことがあります。それは、けんかが始まってすぐには介入しないということです。
保育園でもよくあるのですが、けんかにすぐ介入すると、子どもたちが「大人が介入する前提のけんか」をするようになります。あるとき、保育士同士で話し合って、普段入るタイミングでの介入をしないことにしてみました。すると3分も経たないうちに、子どもたちが先生の方をチラチラ見ながら「なんで入ってこないの?」という雰囲気になったのです。
良かれと思って大人が介入し続けると、自分たちで解決できなくなり、介入すればするほどけんかが長引いたり、回数が増えることすらあります。
手が出たら止めるべきですが、そうでない間は前向きに見守ることで、いずれ子ども同士で解決できるようになります。
大人の役割として大切なのは、けんかをすぐに止めることではなく、けんかをした子ども同士が、その後話し合えるようにすることです。話し合える場をつくり、言葉で表現できなかったお互いの気持ちを伝え合う手助けをしてみましょう。
相手の主張を黙って聞いていられず、すぐに手や口が出そうになるときは、こんなやり方もあります。
▼てぃ先生おすすめ!
話し合いを助ける「口/耳」カード
こちらを印刷し、切り取って使えます。
紙に「口のマーク」を書いたものと「耳のマーク」を書いたものを用意して、それぞれに渡します。耳のマークは聞く役、口のマークは話す役と伝えます。
視覚化すると、子どもはルールを守りやすくなるんです。おうちでもぜひやってみてくださいね。
てぃ先生
関東の保育園に勤める保育士。名前の読み方は「T」先生。Twitterフォロワー数、YouTubeチャンネル登録者数はともに60万人を超える。著書である『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』は15万部を超える大人気作に。『てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』は自身初となる育児本であり、こちらもベストセラーとなっている。現在は保育士の専門性を生かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などを発信中! 2022年、「第15回ペアレンティングアワード」にて文化人部門を受賞。
文:脇谷美佳子
FQ Kids VOL.14(2023年春号)より転載
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