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関山 隆一さん
NPO法人もあなキッズ自然楽校代表理事/NPO法人森のようちえん全国ネットワーク連盟 副理事長/東京都市大学人間科学部児童学科 非常勤講師/田園調布学園大学人間科学部心理学科 非常勤講師。1971年神奈川県出身。1998年にニュージーランドに渡り、国立公園で現地ガイドとして働く。その後パタゴニア日本支社を経て、2004年にアウトドアオペレーターの事業で起業。2007年、NPOもあなキッズ自然楽校を設立。2009年に森のようちえんスタイルの保育園を開園する。現在神奈川県内に6つの園と1学童保育施設を運営。0歳児から小学生までの自然体験活動を実践している。
お出かけは、子供たちにとって小さな冒険だ。そこでの出会いや経験が、心身に大きな成長をもたらすこともあるだろう。また、なるべく外出して身体を動かすことで、運動不足を解消するというメリットもある。
「私たちの保育園が積極的に取り入れている自然の中へのお出かけは、実にさまざまな力を子供たちに育んでくれています。
例えば、今日は園外保育で河川敷に行ってきたのですが、色鮮やかな草花がたくさんありました。自然の緑には1つとして同じ色はなく、クレヨンや色鉛筆の色数ではとても追いつきません。それをただ眺めるだけでも、豊かな色彩感覚を育んでくれるのです。
また、北風が吹いていれば寒さを感じたり、水面に触れると冷たかったり、凍っていたり……。限られた色彩の中で、一定の温度湿度に保たれた家とは全く違う体験が数多くあり、五感を刺激してくれます」と関山さん。
蝶やトンボなど、生き物と触れ合うチャンスもある。家屋はあくまで人間のために考えられた環境だが、自然はそうではない。子供たちは自然の中でさまざまなものに興味を持つことで、多くの気付きを得られるのだ。また遊びの中で、体力もついてくるという。
「最近の子供は体力が低下していると言われていますが、子供たちは外に行くと、とにかく駆け回りますよね。延々と追いかけっこをしたり、木に登ったり。そうすると、アスリート向けの筋肉トレーニングのような身体能力ではなく、『不規則運動能力』と言われる、柔軟に動ける基礎的な運動能力が身につくのです。
自然の中で、右に左に敏捷に動けたり、するすると木登りができるようになるということは、自分の身体に向き合って、本来必要な体の動きを培えているということです」。
お出かけはまた、コミュニケーション能力も育んでくれる。幼児教育の現場では、子供たちに主体的・協働的に何かをさせるシチュエーションを用意して、コミュニケーション力を育てようとするシーンがしばしば見られる。だが、野原で子供たちが一緒に遊んでいるだけで、実は同じような能力が養われるのだという。
「木登りをしている時に前の子のおしりを押してあげたり、人に手を貸したりと、自然の中では子供たちが自ら友達を気づかうシーンがよく見られます。実は、そういった行動の資質は誰かが教えたものではなく、生まれつき子供たちに備わっているものです。
自然の中での協働が必要な場面がきっかけで、そういった資質が自ずと出て、身についてくるのです。これらの資質が出せないまま児童期になると、その後の人間関係で困ることもありえます。しかし、3歳頃からできるだけ主体的に遊べる自由な環境を用意してあげるだけで、子供自らが面白いことを見つけだしていきます」。
共感性や協働力が、長い人生を生きていく上で非常に大切な能力であることは言うまでもない。自然の中では、パパやママはつい心配で口や手を出したくなるが、仔馬が生まれた瞬間に自分で立とうとするように、協働力の他にも、子供には潜在的に生きようとする力が備わっているそうだ。
だから本当に危険だと思われる時以外、あえて手を出さずに見守れば、自然のロケーションや刺激により勝手に力が湧き出してくるという。
「現代のパパ・ママには、自分自身が自然の中で遊んだ経験が少ない方も多いと思います。ですから、子供たちにトレーニングをしてあげないと、そういう力が身につかないと思っている方も多いんです。
でもそれは勘違い。子供たちに備わっている力を信じて、『うちの子にはすごいところがいっぱいあるんだ』という気持ちで見守れば、これまで見えなかったものが見えてくると思います。『こんなにもやれるんだ。すごいなあ』という目で温かく見守ってあげることが、生きる力を育むお出かけで、最も重要なポイントかもしれません」。
大切なのは、自然の色彩や温度、匂いを五感で感じられる環境へ一緒に行ってみること、そして、子供たちの力を信じて、ギリギリまで手を出さずに見守ること。そんなお出かけであれば、パパ・ママも気負わずにチャレンジできるのでは。
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