大豆生田啓友先生が解説! わが子の「小1プロブレム」対策で親が気をつけたいこと

大豆生田啓友先生が解説! わが子の「小1プロブレム」対策で親が気をつけたいこと
新しい季節を前に、子供が新環境になじめるか不安に思う親も多いはず。進級・入学に必要な準備について、幼児教育の専門家である大豆生田啓友先生に聞いてみた。

進級・入学が楽しみになる
「わくわく」気分を作る

春は入学や進級の時期。本来は楽しく、喜ばしい季節のはずだが、環境の変化についていけず、子供が不安定になってしまうことも多い。最近では子供が入学した小学校にうまく溶け込めない問題を「小1プロブレム」と称し、子供たちの課題として取り上げるケースも多くみられる。

「子供が小学校に入学後、なかなか適応できないのは、単に子供自身や親の育て方の問題ではありません。“小1プロブレム”が起きる要因の1つとして、子供1人ひとりの個性やペースに対応できていない、学校の授業のあり方があるとも言われています」と語るのは、幼児教育を専門とする大豆生田啓友先生。

「大切なのは学校のあり方だけではなく、家庭や園が子供の進級や入学の“わくわく”をできるだけ自然体で支えることです」。

「小1プロブレム」といえば「椅子に座っていられない」「先生の話が聞けない」などのイメージがあるが、最近では文部科学省による「架け橋プログラム」によって、幼稚園・保育園からスムーズに移行できる授業や環境が小学校に推奨されている。

もし子供が新しい環境になじむことができないようであれば、それは学校を含む大人の課題なのだ。

気をつけたいのは、親があせって子供に余計なプレッシャーを与えてしまうケース。「これができないと年長さんになれないよ」「小学生になるんだから、頑張ろう」といった言葉は子供にプレッシャーを与え、ネガティブな結果につながりかねない。進級や入学の準備として必要なのは、「わくわく」のイメージづくりだろう。

「年長になったら〇〇ができるよ!」「小学校に入ったら、お友達がたくさんいるよ!」など、「春から楽しいことが始まるイメージ」を親子で共有することができれば、子供も安心して新しい環境に飛び込むことができるはず。

「家庭は子供のいちばんの安全基地。子供が安心して過ごし、不安なことがあっても親子で話せる環境をつくることがいちばん大切です」。

「架け橋プログラム」って何ですか?

小1までは「架け橋期」として無理のない移行を進める
幼稚園や保育園(以下、幼保)から小学校への進学をスムーズにするために、文部科学省が推進するカリキュラム。幼保と小学校が連携体制をとり、子供が違和感なく学校生活をおくるための遊びや学びのプロセス、環境づくりを提唱している。

5歳から小1の2年間を「架け橋期」と位置づけ、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を共有。幼保、小学校でそれぞれふさわしいカリキュラムを開発し、無理のない移行を進めている。

親子で一緒に「わくわく」のイメージをつくるには?

point 1
「わくわくする場」のイメージを作る
point 2
「昔の小学校」のイメージは捨てよう!

 
最近の小学校では「全員同じことをする」ことを強いることが少なく、新しい環境へのギャップも小さい。「春からはこんなに楽しいことが始まるよ!」という「わくわく」のイメージを親子で共有して、新生活に飛び込もう。
 

大豆生田先生に聞いた!
進級・入学準備のためのQ&A

Q.就学前の学習準備はどこまで必要ですか?

A.親子で楽しく読み聞かせを。あせって教えるのはNG!
ひらがなや数字の書き方、計算については小学校でも充分時間を割くので、無理強いして教える必要はありません。物語に興味を持つことは、言葉の豊かさにもつながっていくので、読み聞かせはおすすめ。一緒に絵本を読み、楽しみながら文字に親しむ時間があれば、自然に興味はわいてくるはずです。

文字に興味を持つタイミングが遅くてもあせる必要はないので、子供が知りたいタイミングに合わせましょう。

Q.入学前に小学校の公開授業を見学する時の注意ポイントは?

A.授業風景をチェックして気になる点は相談を
小学1年生の授業風景を見学すれば、文字を読むのが苦手な子や、計算に初めてトライする子たちも、楽しく授業に参加できているのが実感できるはず。「ウチの子はここで困るかも」と気になる点があれば、あらかじめ入学前に学校に面談を申し込み、先生に相談しておけば安心です。

最近は和式トイレも減っていますが「トイレが不安」という声もよく聞くので、親子で確認しておきましょう。

Q.小学校に「行きたくない」と言われたらどんな声かけをすればいい?

A.「行きたくない」気持ちをまずは受け止めてあげて!
子供が「行きたくない」と言うのは何か無理をしていることが多いので、まずは「行きたくない」という理由と気持ちを受け止めてあげましょう。

そのうえで、「じゃあ保健室まで行ってみる?」「今日だけ休んで、明日行ってみようか」など、子供にとってどこまでがOKか探ってみて。別室登校やフリースクールなどさまざまな選択肢があるので、学校にも状況を確認しながら、どうすればいいか相談できるのが理想的です。

Q.「発達障害の傾向がある」と言われました。どのように対応すればいいでしょうか?

A.わが子のペースに合ったスタイルを親が決める
支援級のゆっくりペースが安心する子、普通級と支援級をかけもち(通級)するのが合う子など、子供のタイプによって対応もさまざま。正解はひとつではなく、ケースバイケースです。学校の説明も聞きつつ、わが子のペースを見ながらベストなスタイルを決めてあげましょう。

不安は1人で抱え込まず、学校や相談機関、スクールカウンセラーなどに相談を。「この人に聞いてもらえるとラクになる」という相手がいれば安心です。

この方に聞きました!

大豆生田 啓友さん

玉川大学教育学部教授。乳幼児教育学・子育て支援が専門。NHK Eテレ「すくすく子育て」をはじめ、テレビ出演や講演活動、執筆活動など幅広く活躍している。著書に『非認知能力を育てる あそびのレシピ』(講談社、共著)など


文:藤城明子

FQKids VOL.13(2023年冬号)より転載

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