子供のうちに必ず教えてあげたい人権の話「大切な人が明日も安全に生きるために」

子供のうちに必ず教えてあげたい人権の話「大切な人が明日も安全に生きるために」
わが子がもし、いじめや差別で人を傷つけたり、傷つけられたりしてしまったら……考えるだけでやり切れない思いだろう。子供が幼いうちから伝えるべきことがある、と語る小島慶子さんが実践してきた「人権教育」とは?

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今の子供たちにこそ
繰り返し伝えていくべきこと

お子さんと、人権について話したことはありますか? なんだか難しそうだし、そういう偏った話はしない方がいい、と思いますか。

今の子供は、生まれた時からスマホのある世界を生きています。手のひらの上の端末を指先でタップするだけで、世界に向けて発信できるのです。言葉や情報の扱い方の訓練を受けたプロしか人々にものを伝えることができなかった時代とは、全く異なる世の中を生きていくのですね。

このことは少し前にも書きましたが、だからこそ幼い頃から「人は誰も皆同じように大切にされるべき、かけがえのない存在である」「自分が手にしている自由や権利を、他の人の自由や権利を奪うために使ってはならない」という大切なことを繰り返し伝える必要があります。短く言うと、人権教育です。

うわぁ、「人権」とか言っちゃう人、苦手だなぁ……と思った人もいるかもしれませんね。でも実は、あなたが普段人権について全く考えなくても平穏に暮らしていられるのは、まさにあなたの人としての尊厳と権利が日々しっかり守られているからなのです。人権は「ごく一部の可哀想な人たち」のものではなく、あなたが安心して今日と同じように明日を生きることができるようにするものです。

まずは大人が理解したい
「人権」を考える必要性

今私が誰にも検閲されることなく、こうして思うままに文章を書いていられるのも、あなたがそれを何も気にせずに読めるのも、私たちよりも強い力を持つ誰かが私たちからその自由を奪うことができないからです。それが、基本的人権が守られているということ。

そして私たちは、社会の重要事項を決める強い力を持つ人たちに対してただ受け身でいるのではなく、選挙などを通じて意思表示をし、世の中を変える力も持っています。それは昔からあったものではなく、声を上げた人々の命懸けの努力によって獲得された、大切な権利です。

時代劇を見ていて、身分が違うために好きな人と一緒になれなかったり、奴隷のように売買されたりする時代に生まれなくてよかったなぁと思うことがあるでしょう。単に時間が経って自然に今のような世界になったのではありません。力を持つ人たちが決めたルールに抗議し、あるいは議論を重ねて、世の中を変えた人たちがいたおかげです。

そうした長い歴史を経て、どんな人も他の人との違いを理由に排除されたり、いじめられたり、自由を奪われたりすることがないように、社会のルールが決められています。それでもまだ、肌の色や民族、性別、性的指向、障害や病気などで「社会の主流ではない/少数派」とされた人たちが、他の人と同じように扱われず、仲間はずれにされたり暴力を振るわれたりしています。

まぁ、そういう気の毒な人がいるのは知っているけど、あんまり身近じゃないな……と思う人もいるでしょう。でも、例えば世界人口の半分に当たる女性は、いまだに男性よりも圧倒的に弱い立場に置かれています。残念ながら日本は世界の中でもそうした男女格差(ジェンダーギャップ)がとても大きい国の1つですよね。

また、パンデミックが始まってから、アメリカなどでアジア系の人々への差別や暴行が激化しました。ただアジア系であるというだけで、通りすがりの見知らぬ人から罵倒され、殴り倒された人がたくさんいるのです(念のため書くと、ほとんどの日本人はアジア系とみなされます)。

今あなたが「人権とか言っちゃう人はイタいな」と思って安全に暮らしていられるのは、たまたまそう思える環境に恵まれているからです。もし違う国に引っ越したり、違う立場に身を置いたり、体の状態が変わったりしたら、世界はあなたにとって理不尽で不自由で危険な場所になるかもしれません。

同様に、今あなたにとって快適で平穏な場所が、近くにいる誰かにとっては安全ではないかもしれないのです。多様性と公正さと包摂性(DE&I)を尊重する平和な世の中を作るためには、そういう想像力を持つことが、とてもとても大切です。

幼いわが子にもできる
日常の中の人権教育

では難しい言葉を使わずに、子供に人権について伝えるにはどうすれば良いのでしょう。「思いやりを持とうね」と言っても、幼い子供は言葉の意味をまだ知りません。親の態度や行動で伝えることが第一歩です。

何より大切なのは、「子供の人権」を尊重すること。子どもの権利条約は、1989年に国連総会で採択されました。子供は親の所有物でもペットでもありません。親とは別の人格を持つ、親と等しい価値のある一人の人間として尊重されるべき存在なのです。

「大好きだよ」「生まれてきてくれてありがとう、あなたを大歓迎するよ!」「あなたはとても大事な人なんだよ」「あなたの気持ちや意志を聞かせてほしい、私はそれを尊重して、真面目に向き合うよ」という思いを込めて、ハグしたり一緒に遊んだり話を聞いてあげましょう。未熟でもののわからない存在だと軽んじず、同じ人間として向き合うのです。私も息子たちにそのように接することを心がけました。

そして、差別や暴力にはNOを。仲間はずれや嫌がらせ、人を貶めたり蔑ろにしたりする言動にも、はっきりと厳しい態度を示すことが大事です。実生活だけでなく、創作物やニュースの中の出来事に対してもです。子供は成長すれば、人権という抽象的な概念についての話もだんだん理解できるようになります。自身が大切にされ尊重された経験は、その理解をより深めるでしょう。

プロフィール

小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
Twitter:@account_kkojima
Instagram:keiko_kojima_
公式サイト:アップルクロス

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