レジャーが最高の学びに!? 子供が「釣り」で身につける3つの重要な能力とそのコツ

レジャーが最高の学びに!? 子供が「釣り」で身につける3つの重要な能力とそのコツ
家族との時間が増えた今、キャンプや釣りなどの自然体験を楽しむ人が増えている。親子で自然体験を行うことにはたくさんのメリットがある。教育の専門家も太鼓判を押す、子供が「釣り」から得られる3つのスキルとは?

メイン画像:「虫が苦手」という子供もいるが、親が積極的に餌をつける姿を見せると、子供も安心して虫をつかんでハリにつけられるようになる。釣れた瞬間をイメージしながら餌を選ぼう!

教えてくれた人

吉川隆さん
フィッシング「DAIWA」を事業展開するグローブライド社の広報担当。子供の釣りクラブ「DAIWA YOUNG FISHING CLUB(D.Y.F.C)」では、釣りを通して子供の成長につながる企画を試案。


中山芳一さん
岡山大学全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のキャリア教育に取り組むと共に、各世代の子供が非認知能力やメタ能力を伸ばすことができるように尽力。著書、論文多数。

SKILL 01
自分で予測を立て答えを探す力

準備しても釣れなかった!
そんな経験が成長のチャンス

学校教育では答えが用意されている事がほとんどだが、自然体験ではどれだけ準備しても正解にたどりつくとは限らない。それが、楽しみのひとつであり、醍醐味でもある。

低学年以下の子供が集中できるのは30分程度。ただし、1匹目を釣り上げることができれば、子供はがぜん集中力を発揮する。釣れた瞬間の「やった!」という気持ちを大切にして。

釣りの場合も同様に、しっかりリサーチして準備したつもりでも、条件によって環境が変わるので、当然釣れない日が出てくる。同じ川の中でもポイントによって流れの強さが変わり、魚の動きも変わってくるため、条件に合わせて答えを想定し、1つひとつ試す作業が必要となる。自分で問いを立て、自分自身で答えを見つけるクリエイティブな作業は、子供をきっと成長させてくれるはずだ。

同じポイントでも季節や時間帯、天候、気温、気圧、水温によって魚の動きは変化する。「前回うまくいった」やり方にこだわると釣れないケースも多いので、フレキシブルに動く事も重要!

中山先生からひと言!

釣りは知識や準備が重要なアクティビティ。知識を備えて挑んでも、その通りにいかないのが面白いところです。釣れなかった時に「なぜ失敗したの?」「他のやり方があるのでは?」とトライ&エラーを重ねる作業は、非認知能力を育てる点でも重要。自らリサーチとトライをくり返す作業は、勉強や他のアクティビティにも役立ちます。

SKILL 02
多様な考えを学べる
釣り場でのコミュニケーション力

普段は接する機会が少ない
異年齢の子供や大人からの学び

親が子供に釣りを教えようとすると、子供に甘えが生じたり、逆に親が手を出しすぎたりするケースも。親でも教師でもないインストラクターという存在が、新鮮な刺激になるはず!

子供を対象とした「ダイワヤングフィッシングクラブ」のスクールでは、子供だけを小グループに分けてレクチャーを進めている。親と共にいると子供に甘えが生じてしまい、簡単に答えを求めてしまうケースが多いのだとか。

新しい経験に興奮してしまう子供も多いが、大声や足音は釣り場のルール違反! こうした知識は親よりもインストラクターや第三者の大人からの方が子供も冷静に聞くことができる。

子供同士で釣りに参加するメリットは、遊びの中から自然に競争が生まれたり、異年齢の子供に教えられたりする点にある。ひとりでは解決できない問いがあることを自覚するのも、自然活動のメリットのひとつ。また周囲の人たちやインストラクターとコミュニケーションを取り、協力しながら釣りを楽しむことで、多様な考え方を学ぶことができる

子供同士の参加は遊びの中に競争が生まれ、集中して楽しめる! 友達家族と誘い合ったり、年齢の近い子供がいる親戚と出かけたりと、子供同士で参加できる機会を作ろう。

中山先生からひと言!

異年齢同士で活動するメリットは、年上の子供がロールモデルになる点にあります。あと数年頑張ったら到達できる存在が近くにあると、子供にとって将来のイメージがつきやすく、モチベーションもアップ。また、年下の子供と触れ合うことは自身の成長を自覚させ、「年下の子のお世話もできる」という自己有用感を育てます。

SKILL 03
魚だけでなく自然環境全体を
意識できる力

魚を取り巻く環境を知らなくては
釣りの楽しみも半減する!

マス釣りの場合、水温が4℃以下では魚の動きが鈍くなるため釣るのが難しい。気圧が低くなると魚は活発になり、餌の食いつきもよくなる。釣りに挑戦するならこうした知識も必要だ。

釣りの準備をするためには、魚だけでなく、自然全体に目を向ける必要がある。餌ではなくルアーやフライ(毛バリ)といった疑似餌を使う釣りならば、本来の餌となる小魚や虫の動き・生態を知り、どんな動きに魚が反応するかも知る必要がある。また川や海で釣りをする場合、天気や気圧の影響、水温によって変化が生じる魚の動き、川の流れについてもチェックが必要だ。

自然の中では危険もつきもの。特に川釣りは流れに足を取られやすいので、注意が必要だ。また水流の速さによって魚の動きも変わってくるため、川の流れも事前にチェックしておきたい。

自然の中で過ごせば危険もつきもの。常にまわりへ意識を向ける必要がある。自然環境全体に目を向ければ、環境意識も当然高まるだろう。釣りという自然体験を通じて、さまざまな学習をするチャンスだ。

釣りを経験した後は、魚や自然環境について学習する絶好のタイミング。自分で釣った魚がどんな魚か知りたい時は、写真を撮るだけで検索してくれるアプリ「Googleレンズ」がおすすめだ。

中山先生からひと言!

自然の中で過ごすと、音や光、においを感じる「体感する知的好奇心」と、虫の動きなど細かい部分を焦点化する「注目する知的好奇心」のふたつの知的好奇心で、自然環境を認識することができます。何より、自然は予想がつかないからこそ面白い! 「次はどういう動きをするんだろう?」とさらなる好奇心が育ちます。

>>関連記事【自然体験が子供の自己肯定感を高める!? 専門家が「親子の釣り」をオススメする理由】


文:藤城明子
写真:グローブライド株式会社提供

FQ Kids VOL.10(2022年春号)より転載

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