自分でやらせる? 手伝ってあげる? 子供が乗り越える力を身につける、親の見守り方

自分でやらせる? 手伝ってあげる? 子供が乗り越える力を身につける、親の見守り方
わが子の成長に伴い、教育や自分でやり通す力をつけるためにと、つい力が入りがちなしつけ。でも、親がイライラしてしまうくらいなら手を貸しても問題ないと、小島慶子さんは語ります。本当に必要な見守り方とは?

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しつけの思い込みは
親も子も追い詰める

何でも親が手を貸してはいけませんよ、お子さんが自分でやり通すことが大事なんです――そんなふうにアドバイスされたことはありませんか? 着替え、お片付け、お支度などなど、なかなかやろうとしない子供をジリジリしながら見ている人もいるでしょう。

息子たちが幼かった頃を振り返って、あんなに拘らなくてもよかったなーと思うことがいくつかあります。その1つが、「幼少期から、自力でやり通す習慣をつける」というしつけ。もちろん大事なルールなんですが、もっと柔軟に運用すればよかった

保育園から帰る時、息子たちはいつも玄関の上り框(あがりかまち)に座ってのんびりおしゃべりしたり、先に帰るお友達に手を振ったりで、なかなか自分で靴を履こうとしませんでした。周りの子はサッと自分で履いてトコトコと帰って行きます。あるいは親がパッと穿かせて帰っていく。

でも私は「自分でやらせなくちゃいけないんだ」と生真面目に信じていたので、「靴を履いてね」と何度も声をかけながらイライラして息子たちを待っていました。玄関に座ってから保育園を出るまでに20分かかることもザラでした。

すると帰り道で、つい「どうして自分でサッと履けないの」という苛立ちを息子たちにぶつけてしまうのです。せっかくママに会えて嬉しいのに、不機嫌な声で叱られながら帰るのは、かわいそうですよね。かわいそうだなと思う気持ちと苛立ちの板挟みで、私もしんどかったです。

当時は「親が手を貸したら負け」と思っていたので(一体何と戦っていたのやら)、ずっと手伝うのを我慢していました。そうしないと、ちゃんと自分で身支度できない子になっちゃうかもしれないと心配だったんです。

だけど、保育園を出る時に靴を履くだけが「自分でやる」体験をするチャンスではありません。もっと親の心と時間に余裕のある時にやらせて、ゆっくり待って「できたね、すごいね、上手だね」ってたくさん褒めてあげれば、子供も自信がつくし、そのうち自分でやるようにもなるでしょう。

どのみち小学校に入ればもう親がそばにいてくれることはないのだから、自分でやるようになります。あんなに頑なにならなくてもよかったのです。

子供の成長のために
見守ってあげたいこと

今19歳と16歳の息子たちは、ちゃんと自分で靴を履けるし、身支度もササッとやります。それは毎日保育園の玄関で自力で靴を履くようにしたおかげではなくて、彼らが成長に伴っていろいろな場面で自然に身につけたからです。子供が何かを学ぶチャンスは、親と一緒にいる時以外にもたくさんあるのです。

ご飯のお行儀もそうでした。保育園の頃から「ちゃんと全部食べなさい」と息子たちに合計2万回は言ったんじゃないかと思います。精神的にかなり追い詰められました。息子たちは驚異の低燃費体質で、間食しているわけでもないのに、食事をほんの少し食べただけですぐにお腹いっぱいになってしまう子供だったのです。

元気に走り回っているなら無理に食べなくても大丈夫では? と今は思います。あんなに食の細かった息子たちも、私よりも遥かに背が高くなって、しっかり育っています。

残さずバランス良く食べようねというのは、その理由を理解できる年齢になってから言えばいいのです。その方が遥かに少ない回数で伝わります。効率がいい上に、親子ともに心穏やかに過ごせます。

親が手を貸さずに見守ってあげる方がいいのは、子供が失敗する時です。失敗はとてもいい学びの機会。危険がないように見ていてあげるのは大事だけど、一切失敗しないようにと親が手出しすると、子供から貴重な学びの機会を奪ってしまうことになります。

例えば消しゴムで字を消そうとしている時に「紙を破らないように気をつけてね」と言うのはいいけど「あ、破れそうだからちょっと貸してごらん」と代わりにやってあげるのは、我慢しましょう。子供は、紙を皺くちゃにしたり破いたりしながら、力加減のコツを覚えていくものですよね。親はそれを励まして、がんばったねと褒めてあげればいいんだと思います。

壁にぶつかった時に
本当に必要な“自立の術”

人生には誰にも頼らず自力でやり遂げることが必要な時もあるけれど、私はそれよりも大事なのは、「上手に助けを求める方法」や「相談する習慣」を身につけることだと思います。小児科医の熊谷晋一郎さんは「自立とは依存先を増やすこと」とおっしゃっています。

人は、誰にも頼らないで生きていくことはできません。たった1人に依存すると、その人なしでは生きていけなくなります。でも少し頼れる人をたくさん持つことで、今はこの人、ここではあの人、と自分で工夫して助けを求めて、やりくりすることができます。

人に頼るな、自力でやり抜け! よりも、いろいろな人とつながって、助け合おうねと言う方が、子供も安心して生きていけるのではないかと思います。親だって、そうですよね。そんな世の中なら、子育てももっとリラックスしてできるでしょう。

プロフィール

小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
Twitter:@account_kkojima
Instagram:keiko_kojima_
公式サイト:アップルクロス

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