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2021年11月10日、ユネスコの最新報告書 「Futures of Education」が発表されました。
先日、ユネスコ加盟70周年のイベントに参加し、ユネスコやESD(持続可能な開発のための教育)などに関わってきた聖心女子大学の永田佳之教授に、このレポートの内容についてお話をうかがったので、みなさんとシェアします。
まずこのレポート、SDGsの達成期限である2030年のはるかに先、2050年までの教育の方向性が示されたものです。まさに「未来の地球人育て」。これから世界の教育はどのような方向にむかっていくのか、という考え方が示されたものなのです。
まず、気がつくのは報告書のタイトルが「Futures」と複数形になっていること。教育の未来が多様であることが示されています。学びの場は必ずしも学校だけではないんですよね。多文化・異文化に対する理解や、エコロジー、デジタルテクノロジーなど、多様な未来にむけての目線が示されているかのようです。
さて内容ですが、まず「私たちは世界の転換期にある歴史的な時代を生きている」ことが示されます。そして「知識と学習が再生と変革の基礎である」と続き、さらに、「教育自体が、変容する必要がある」と語られます。
これまでもユネスコは「教育」は子供だけでなく、生涯を通じてお互いに学び合うものになる、と言ってきたんですが、それが「教育のトランスフォーメーション(変容・見直し)」の必要性にまで踏みこんでいるんです。
そして転換は「ニューソーシャルコントラクト(教育の新しい社会契約)」という言葉で表されます。社会契約論って歴史の授業で習いましたよね。ルソーです。近代になって、自由で平等な個人が互いに契約を結ぶことで社会が成立する、という思想です。その「社会契約」が、いま教育の分野において契約更新されると言っているんですね。
そしてその新たな契約というのは、単なる個人の自由によるものではなくて、「社会正義」や「環境正義」に基づくものになる、というのです。これ、けっこう強い言葉ですよね。人類共通の課題に対する意志の力を感じます。
人々は生涯を通じて高い教育を受ける権利がある。それと共に、教育は、社会・公共的な取り組み、共通の利益のためにこそ存在する。そして地球と環境に対する学びを重要視し、教育の果たすべき意図を見直すべきとまで言っています。
2005年にESDがスタートしたときの基調講演で、アーヴィン・ラズロ博士はプラネタリーコンシャス(惑星意識)のための教育という概念を提示しました。考えてみると教育は各国が、それぞれの国家のために行ってきた現実があるわけです。それがあらためて、地球のための教育、プラネタリーエデュケーション(惑星的学習)にむけて、ようやく舵を切ろうとしているのかもしれません。
グローバルな経済の影響を大きく受けている現在の教育市場、あるいは国家の力を最大化するための教育というトレンドと、SDGs以降の人類社会のあり方を示すユネスコの提言。いずれにしても大きな社会変容の基礎となるのが教育なのです。
ということで、今回はユネスコの最新教育レポートの解説でした。これが世界の教育の未来の最上流だとして、数年かけて、各国の教育の現場レベルへと落とし込まれていくことになるのだろうと思います。
「未来の地球人育て」。人類文明の崩壊のまえに、惑星のための教育が社会実装されていくことを願います。
※レポートリンク:UNESCO「Futures of Education」
谷崎テトラ(TETRA TANIZAKI)
1964年生まれ。放送作家、音楽プロデユーサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の発信者&コーディネーターとして活動中。シュタイナー教育の教員養成講座も修了。
公式サイト:TANIZAKI TETRA OFFICE
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