2020.07.27
2020.03.16
2022.01.17
「デザイン的思考」を身につけたらこういうことができるようになる、といった期待は大人が勝手に決めつけるものではありません。育むためにはこうじゃなきゃいけない、なんていうやり方もありません。ただ、生活の中で、「あれ、これデザインかも」なんてことを時々でも繰り返していくと、世の中をデザインの目で見る力は養われるはずです。
例えば、書類のレイアウト1つひとつもデザインです。子供が大きくなった時、「自分が好きなように」じゃなくて、「他の人が見てどうか」という視点は、どんな仕事をするにも必須ですよね。
「自分らしく」というのは本当によく語られるし、わが子にはわが子らしく生きてほしい、個性を大事にしてほしい、だからやりたいことをやらせる。それはそれですごく大切ですし、私自身もそういう環境に恵まれましたから、すごく感謝しています。
でも、自分を中心に全て考えるということが、ややもするととても傲慢な生き方になる。「自分が!」と考えることはいいんです。表現することもいいんです。ただ、そこで終わりにしてはいけない。
これからサステナブルという、世の中がどういう状態を保っていけるのか、というのが世界の大問題なわけですよね。それには自分がしたことを相手が、第三者が、もしくは自分のお父さんお母さんが見たらどう思うんだろう? という視点が重要になると思います。
そんなことは子供にはどうでもいいだろうと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、自分勝手・自分中心の生き方につながらないとも言い切れません。
私は「デザイン=気遣い」という言い方もしているのですが、自分がやっていることが相手にどう役立つのか、相手のためにどう優しくなっているのか。もしくは先々のことを「今こうしておいてあげるとみんなが過ごしやすくなるな」「周りの人がラクになるだろうな」と考える習慣は人として大切なことですよね。
昔は大家族で、子供はおじいちゃんおばあちゃんからよく叱られたものです。「まったく、気が利かない子だね!」なんて(笑)。しつけという意味でとても良い環境でした。今は核家族化して、叱り方も非常にデリケートな時代になってきて、それはそれでとても良いことですが、しつけというものが難しい世の中になってきています。だからこそ、人を気遣う気持ちや心なんてものも、デザインを通して養うことが必要だと思うのです。
佐藤卓(さとう・たく)
グラフィックデザイナー。1955年東京生まれ。1981年東京藝術大学大学院修了後、株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所(現:株式会社TSDO)設立。東京ミッドタウン内「21_21 DESIGN SIGHT」館長兼ディレクター。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」のアートディレクター、「デザインあ」総合指導を担当。「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」のパッケージデザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」のシンボルマークを手掛けるなど幅広く活動。
文:脇谷美佳子
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