「人に痛いことはしない」を理解させるには? 言葉より効果がある9つの親子遊び

「人に痛いことはしない」を理解させるには? 言葉より効果がある9つの親子遊び
SNSで大人気の現役保育士・てぃ先生が、FQKids読者の悩みに答える連載企画。今回は、「戦いごっこでお友だちに小さなケガを何度もさせてしまう息子に、どう伝えたらわかってもらえる?」と悩む親御さんのお話です。

《 今回の相談内容 》

幼稚園や放課後に、毎日遊ぶ仲良しの同じクラスのお友だちがいます。 放課後、息子が戦いごっこなどで加減が分からず、わざとではありませんが、そのお友だちに小さなケガを何度もさせています。

不思議なことに、幼稚園内では同じように遊んでいるのにケガをさせていないようです。「人に痛いことはしないでね」と何度も伝えているのですが、その時は泣いて謝りますが、すぐに忘れて繰り返します

どうして幼稚園内と放課後で、同じ遊びをしているのに態度が変わってしまうのでしょうか。また、息子にどうやって伝えたらわかってもらえるのでしょうか。

(れおさん・5歳男の子の親)

まずは「力の加減を知る」こと
から始めてみよう

すべてのお子さんに共通していることがあります。それは、「そもそも全力の力を知らない」ということ。全力を知らないのですから、力を加減することはできません。火加減と同じで、料理を普段しない人は、ツマミを最大にした時にどれくらいの火の強さになるのかわかりません。強火、中火、弱火、とろ火といわれても、ツマミで火を加減ができないのと同じです。

親が「そんなに強くたたいたらダメ」といくら言葉で言っても、子供自身、 “強く” がどれくらいなのか、イメージできないのでしょう。

だから、まずは「全力で何かをやってみる」という経験をすることが大切です。力加減を知るために、5歳の男の子が全力を出し切ってできることって、なんでしょうか。そう、例えば、次のような遊びはどうでしょう。

「全力の意味を知る遊び」6例

1)おうちの中で全力で親子相撲をとる
2)丸めたダンボールの剣で、ダンボールを思い切り全力でたたく
3)粘土で作った作品を最後に思いきり全力でつぶしてみる
4)お布団を思いきり全力で押してみる、全力でパンチしてみる
5)寝転がっているパパまたはママを思いっきり全力で引っ張って移動させる
6)2リットルのペットボトルを全力で持ち上げてみる ……など

全力を知ったら、
次に必ずやるべきこと

頑張っても動かないもの、持ち上げられないもの、全力で壊してもいいもの、押してもいいもの、パンチしてもいい様々なものを使って、「全力を出す」という遊び体験をします。とにかく全力です。

そして、がむしゃらにやってみて全力の感覚を掴んだら、その次は「繊細なこと」をします。気を配って、気を使って、力加減を微調整しながら、全神経を集中する遊びです。5歳の男の子が力加減を微調整しながら全神経を集中する遊びとして、次のようなものはどうでしょうか。

「繊細な微調整をして力加減を知る遊び」3例

1)下敷きまたはうちわの上にお手玉を乗せて、落ちないように壁から壁まで歩く
2)ダンボールの上にボールを乗せて、転がらないように壁から壁まで歩く
3)背中に段ボール箱などを乗せて、箱が落ちないように四つんばいで進む ……など

これらの遊びは、全力とは対極にあり、ものすごく神経を使います。集中しないとすぐに落としてしまいますから。「どうしたら落とさないで運べるか?」。これにより、バランスを取りながら体の使い方を微秒にコントロールする繊細さを獲得します。

幼稚園内と放課後では、
子供の様子はなぜ違うのか?

幼稚園内と放課後で子供の様子が違うのは、実は「内面的な要素」以上に、環境的な「外的な要素」によるものです。

具体的に言えば、幼稚園内にいる先生、いる友だち。放課後だと、いない先生、いない友だち。明らかに環境的に違います。その子の態度が状況によって変わるからダメなのではなく、環境が変わるから当然のことなのです。

またメンタル面から言えば、放課後のほうが子供の人数が少ないから、「部屋が広く大きく見える」こともあります。部屋が広ければ心も解放されますし、アクションも大きくなります。

メンタルを別の面から考えてみると、もしかしたら幼稚園の中では、本人は一生懸命に気を張って頑張っているのかもしれません。頑張っていたぶん「幼稚園がやっと終わったー」という開放感から、気持ちが大きくなってしまう可能性も考えられます。

なので、まずはさきほどお話した力加減を知ることから初めてみるといいのではないでしょうか?
僕たち保育士は、よく声の大きさ・強さを動物に例えて子供たちに伝えます。

ゾウさんの声で「おはよう」を言おう
ウサギさんの声で「おはよう」を言おう
アリさんの声で「おはよう」を言おう

子供たちは数字の概念がまだないので、「10が全力」でゾウさんレベル。「1が最小」でアリさんレベル、ウサギさんだと「3」か「4」といったように、動物でたとえてみるのもいいですね。視覚的に認知しやすいボールの大きさなどを使って、力加減を親子で一緒に確認し合ったり、共有し合うのもいいと思います。

子供は「全力の意味を知る遊び」から「繊細な微調整をして力加減を知る遊び」の振り幅の中で、力の加減、自分の体を使ってコントロールする方法を学んでいきます。言葉でどう伝えるかというより、実際に子供が経験することが大切なのです。

自分の持つ全力で、何かを強く押す、握る、たたく。それを十分に経験して、力加減を知ったうえで、言葉で「これくらいでね」と伝えたら、きっとちゃんと理解できると思いますよ。

プロフィール

てぃ先生
関東の保育園に勤める保育士。名前の読み方は「T」先生。Twitterフォロワー数は50万人、YouTubeチャンネル登録者は20万人を超える。著書である『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』(KKベストセラーズ)は15万部を超える大人気作に。近著の『てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』は自身初となる育児本であり、こちらもベストセラーとなっている。現在は保育士の専門性を生かし、子育ての楽しさや子供への向き合い方などを発信中!

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文:脇谷美佳子

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