大切なのはわが子への“リスペクト”! 自己効力感を高める教育とは?[後編]

大切なのはわが子への“リスペクト”! 自己効力感を高める教育とは?[後編]
夫の予期せぬ退職をきっかけに、日本からオーストラリアへの教育移住を決めた小島さん。誰もが憧れる海外生活だが、決して簡単なことではない。海外生活を通した経験、子供や教育の未来についての考えを綴るエッセイ。「小島慶子の“子育て 世育て 親育て”」連載第2回後編!

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努力に敬意を払って褒めることが
子供を強くする

でもこの「よくやっているね」には注意が必要で、目上の者が褒めるような言い方では、単に上下関係を強調することになりかねません。必要なのは、リスペクト。たとえ相手が幼い子供でも、相手の努力に対して敬意を払って褒めることがとても重要です。

実は、母は私に対して女王様が家来を褒めるような感じで「よくやっているわね」と言う癖がありました。「自慢の作品よ」とも。すると娘としては、なんだか搾取されているような気持ちになってきます。

私はママを気持ち良くするために生きているんじゃない、あなたの持ちものでもアクセサリーでもない!という怒りが湧いてくるのです。

母もまた、頑張っても承認してくれない母親になんとか褒めて欲しくて、最後までそれが叶わなかった子供でした。だから自分が子供を育てる時には「いい親だ」と褒められたかったのでしょう。世間からも、娘からも。「慶子、頑張っているわね」というとき、彼女は優秀な娘を育てている自分自身を褒めていたのです。

結果として子供が受け取るメッセージは「賢い子ね」と同じ、条件付きの承認です。あなたはママを満足させる子供でないといけないのよ、という。それは非常にしんどいことです。

もう私も大人ですから、今は高齢の母が人生を肯定して老いていけるように、全ての言葉がけを「看取り」だと思って話しています(母は至って元気!)。あなたは子育てを頑張ったよ、うまくできたよと言ってあげることで、彼女の中の愛情に飢えた子供を労るのです。それが、ゆっくりと時間をかけて送るということなのでしょう。

生きてるだけでリスペクト

さてそんなこともあり、私はわが子に条件つきの愛情を与えるのだけはやめようと思っていました。結果として、真性の親バカに。どんな人混みでも、息子たちだけはくっきりと8Kクオリティで見えるのです。

彼らは私にヒトが人間になっていく様を具に見せてくれた先生であり、11歳と8歳で外国に引っ越して、言葉も何もかもゼロから身につけたのですから、私には到底できないことを成し遂げた人たちでもあります。

親にとって何が幸せって、わが子を尊敬できることではないでしょうか。息子たちには「大きくなるって大変だよね、すごいね」と言っています。だって毎日身体が育って、何もかもが変貌していくんですよ。そりゃ戸惑いもするでしょう。考えることもいっぱいあるでしょう。つまりは、生きてるだけでリスペクトです。子供は親の作品ではなく、彼らの魂は親の手の届かないところにあります。

子育ては、親の見識を示すためのものではありません。プロセスにこそ、その行為の価値がある。子供との毎日は、人がいかにしてこの世に迎え入れられ、生を肯定されるのかを知る学び舎です。私たちは、永遠の「まだ」なのです。

プロフィール

小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1972年オーストラリア生まれ。95年学習院大学卒業後、TBS入社。アナウンサーとしてテレビ、ラジオに出演。99年、第36回ギャラクシーDJパーソナリティ賞受賞。2010年に独立後は各メディア出演、講演、執筆など幅広く活動。14年、オーストラリア、パースに教育移住。自身は日本で働きながら、夫と息子たちが暮らすオーストラリアと往き来する生活。新刊『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
オフィシャルサイト
Twitter:@account_kkojima

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