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近年少しずつ認知度が上がっている「ヘアドネーション」。医療用ヘアウィッグを作るために髪を寄付するという社会貢献活動だ。
社会貢献というとハードルが高そうだが、基本的には伸ばした髪を切るだけで、子どもでもできる「ちょっといいこと」だ。とはいえ、どのくらいの長さが必要なのか、どうやって寄付すればいいのか、そもそも医療用ウィッグとは何なのか……よく知らない方も多いのではないだろうか。
そこで今回は、「#fino_髪からはじめるちょっといいこと」をコンセプトに医療用ウィッグの推進に取り組むヘアケアブランド「フィーノ」が、2023年8月22日に開催した親子向けワークショップを取材した。
POINT!
①医療用ウィッグは、闘病しながら日常生活を送り、前向きな気持ちを保つために大切!
②ヘアドネーションに必要な髪の長さは31cm以上だが、45~60cm伸ばしておく必要あり
今回フィーノのワークショップに参加したのは、10組の小学生の親子。まず、医療用ウィッグ作成に携わるNPO法人「全国福祉理美容師養成協会」(以下ふくりび)の野島美都さんから、髪がウィッグに変わる過程を学んだ。
医療用ヘアウィッグとは、ガンなどの病気や治療の副作用によって髪の毛を失った人々が使用するウィッグだ。ガンの治療も、今は入院ではなく通院が主流。治療期間中も仕事や学校などの日常生活を送る上で、より自然な見た目にするために、ヘアドネーションで寄付された本物の髪が使われることが多いのだという。
次に、元SKE48のメンバーで、現在はタレント・声優として活動されている矢方美紀さんから、自身がガンになって医療用ヘアウィッグを使った経験を聞いた。
本物の髪を使うことで、髪色を染めたりパーマをかけることも可能になる。より「自分らしい」「好きだと思える」見た目になれることが、闘病中に前向きな気持ちを保つ面でもとても大切だったという。
また、洗うときは外して洗面器でシャンプーする、寝癖がつかないから忙しい朝は意外と便利など、当事者ならではのリアルな話を、子どもたちは興味津々で聞いていた。
続いて、長年ヘアドネーションに協力している美容師、大野道寛さんによる「ドネーションカット」のデモンストレーションが行われた。ヘアドネーション用のカットは通常のカットとは違い、切った髪を無駄にしないように、輪ゴムで小分けに縛って慎重に行う。
ヘアドネーションに必要な髪の長さは送り先の団体によって異なるが、「finoウィッグBank」では「31cm以上」が基準。ただ、切ったあとにショート以上の長さを残したい場合は、45~60cm以上の髪の長さが必要だ。そこまで伸ばすためには2~3年以上かかる計算になる。
デモンストレーションでドナーとなった莉衣紗さん(中1)。ファーストカットは自分で行った。
また、きちんと31cm以上の長さを確保しつつ、切った後のドナーが希望する髪型にするためには、美容師側の技術も求められる。どんな美容院でも対応できるわけではないため、事前に調べたり、問い合わせをするのがおすすめだという。
太い髪束を切るためのドネーション用ハサミの説明など、子どもたちは目を丸くして聞いていた。
次に子どもたちが体験したのは、「髪の仕分け」だ。あらかじめ用意されたさまざまな長さ・色・髪質の髪束を、近いもの同士で分けていく。
仕分けされた髪は工場に送られて、殺菌・消毒をしたり、キューティクルをはがしたり残したり、髪色を染めて色を統一したりといった加工をすることで、ウィッグになじみやすい髪へと生まれ変わる。
そのため、長さが規定以上なら、子どもの髪でも、くせ毛でも、カラーやパーマをした髪でも、グレイヘアーでも歓迎だという。もちろん男性の髪でもOKだ。
医療用ヘアウィッグ
ふくりびの場合、1人分の医療用ウィッグを作るために必要なのは、4~5人分のヘアドネーション。それを工場で加工後、職人が手作りでウィッグに仕上げ、さらに美容師が利用者の希望の髪型にカットすることで、ようやく1つのウィッグが完成する。
たくさんの人の想いがつながって医療用ウィッグが必要な人に届けられていることを、子どもたちは体験しながら実感できたようだ。
ヘアドネーションの送り方・受付先はさまざまだが、ヘアケアブランド「フィーノ」では、専用の「finoオリジナルドネーションキット」を無償配布している。キットは全国の「fino ウィッグBankサポートサロン」で受け取ることができる他、公式サイトから自宅への送付を申し込める。
中にはヘアドネーションの手順や髪を束ねるゴムなど必要なもの一式が入っており、キットの封筒に髪を入れて郵送するだけ※。封筒には31cmの目盛りがついていて、髪の長さの目安にできるのも便利だ。
※送料は自己負担。金額は髪の重さによって異なる。
finoオリジナルドネーションキットの中身
フィーノのキットの送り先はふくりびだが、他にもさまざまな団体がヘアドネーションを受け付けている。活動内容や、髪の長さ・状態についての条件もそれぞれ異なるので、事前に調べてから一番自分に合ったところに送るのがおすすめだ。
ワークショップの最後にキットを受け取った子どもたちは、「いつかヘアドネーションをやってみたい」と目を輝かせていた。
子どもたちが壁に貼った感想コメント
ヘアドネーションは、切った髪をまた伸ばすことで、人生に何度でも行うことができる。
特に女の子であれば、七五三、卒業式、成人式、結婚式などの人生の節目を彩るために、いつもより長めに髪を伸ばしたいということもあるだろう。そうして伸ばした髪を切るときにヘアドネーションをする、というのも1つの選択肢だ。人生の節目に誰かの役に立てることで、よりよい思い出になるに違いない。
さらに、親子で一緒に髪を伸ばし、親子でヘアドネーションに挑戦することもおすすめだ。暑い夏を一緒に乗り越えたり、髪のアレンジなどを楽しむことも、親子のコミュニケーションを増やしてくれる。
親子でヘアドネーションに取り組むことは、親子の絆をより深め、子どもが社会貢献に興味を持つきっかけになるのではないだろうか。
文:FQ Kids編集部
取材協力:株式会社ファイントゥデイ
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