見た目への発言が子供の呪いに!? 親がルッキズムを植え付けないために意識すべきこと

見た目への発言が子供の呪いに!? 親がルッキズムを植え付けないために意識すべきこと
メディアや周囲の会話など、「カッコいい」「可愛い」といった表現は日々当たり前のように子供の耳に入る。無自覚にルッキズムを植え付けないために、エッセイストの小島慶子さんが思う、大人が気をつけたいこととは?

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※ルッキズム:外見重視主義。look(外見、容姿)+ism(主義)を合わせた造語。主に人間が、視覚により外見でその価値をつけることを指す。

子供の見た目ばかりを
褒めたくない2つの理由

先日、ある会合の参加者がお子さんを連れてきました。すると出席者は口々に「かわいい!」「イケメン!」「モテそう!」などお子さんの容姿を激賛。私は「イケメン!」の大合唱には加わりませんでした。

褒めた人たちは親への気遣いで言ったのかもしれないけれど、善意からとはいえお子さんの顔のことばかり言うのは、聞いていていたたまれなかったです。確かに整った顔立ちのお子さんだったのだけど。

なぜ私は「イケメンだね!」と言わなかったのか。理由は2つあります。

1つは、自分がされて嫌だったから。私は非常に人見知りが激しく、愛想のない子供でした。よく知らない大人に作り笑顔で「可愛いね」と言われる度に、いきなり顔のことを言うなんて本当に失礼だな、子供だと思って舐めんなよと腹を立てていました。3歳ぐらいの時からそうだったのです。

だから、大人になってからは子供に気安く「可愛いね」などと言わないようにしています。もう1つの理由は、子供には人の値打ちは見た目ではないということを知ってほしいからです。

褒めるのは呪いにかけることと紙一重。やり方を間違えると、相手に不安を与えることになってしまいます。見た目ばかり褒めていると、子供は見た目の良くない自分は愛されないのではないかという不安を感じるかもしれません。

子供に必要なのは、安心できる居場所です。あなたはそのままでいいんだよ、油断しまくった姿でそこにいていいんだよと言ってあげたいですね。清潔にする習慣を身につけることは大事だけど、顔立ちや体型を他人にあれこれ言われる筋合いはないし、他人にも言うべきではないと繰り返し伝える必要があります。

無自覚な親の言動が
ルッキズムを植え付ける教材に

親がテレビやSNSの投稿で有名人を眺めながら「イケメンだなぁ」「この子可愛いね」「この人、前より太った」「整形してるのかな」などと感想を言うのを日常的に見ていると、子供は自然にそういう視点を学習してしまいます

保育園や小学校の集合写真を見て誰が可愛いか論評したり、どの子がタイプ? と子供に聞いたりしていないでしょうか。何気なくやってしまっているかもしれません。

実は私の夫は以前、小学生だった息子に仲の良い女の子の友達ができた時に「さすがだなぁ。パパは集合写真を見てあの子がクラスで一番可愛いと思ってたんだ」と言ったことがありました。

それを聞いた私は2人を前にしてめちゃくちゃ怒りました。その言い方は女の子の価値は見た目だと言っているようなものだし、子供の集合写真を品定めする目で眺めていたなんて最低だと。

息子にも、友達の女の子にも失礼極まりない言い方です。息子には、夫の言葉からそういう視点を学習して欲しくありませんでした。だからその場で夫に対して怒ったのです。もちろん、夫にまったく悪気はありません。小さい頃から、そういうものの見方が習慣化していたのです。私が怒ったのを見て、夫もハッとしたようでした。

私もかつて、人の見た目を比べて勝手な論評をしていました。どの子がカッコいいとか、だれが可愛いとか。人の見た目を揶揄うのは日常のコミュニケーションだとすら思っていました。自分が言われて傷ついたことは忘れなくても、人にあれこれ言うことには無自覚でした。

お笑い番組のツッコミの真似事をしたりして、面白いことを言ったつもりになっていたのです。悪気はないのだから構わないだろうと軽く考えていました。でも年齢を重ねるにつれていろいろな人の気持ちを想像することができるようになり、ルッキズムという言葉を知って、自分がひどく無知で無神経だったことに気がつきました。

どこでそういう視点を学んだのかを考えると、幼い時から目にしていた周囲の大人の言動や、テレビや漫画などが「教材」になっていたように思います。

ものの見方や表現の仕方を
幼いうちから意識するために

目はとても強力な器官で、意識よりも先に動いてしまいます。ことに他人の顔や体つきには気を取られやすく、見たものをあれこれ勝手に評価してしまう。容赦ない眼差しは自分の身体にも向けられ、自らを傷つけます。

だから早いうちから何を見るか、どこを見るか、それをどのように扱うかには意識的であった方がいいと思うのです。

もちろん、何を美しいと感じるかや、心地いいと思うかは各々の心の自由です。そして、その胸の内を言葉にするか否か、言葉にするならどのような言葉を選ぶべきかを、私たちは自分で決めることができます。そこに知性や品性が表れるのではないでしょうか。

子供との会話の中で人を見た目で判断するような言い方をしないようにしていても、一緒に動画を見ている時にそういう会話を目にしてしまうこともあるでしょう。その時に大人がどんな態度を示すのかが大切です。子供は動画の中身よりも、それを見た身近な大人の言動から学ぶからです。

見た目いじりを面白がって笑うのか、スルーするのか、これはひどいねというのかで、子供に伝わるものが違ってくるのです。親子の会話で、大人も学び直しができたらいいですね。

プロフィール

小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
Twitter:@account_kkojima
Instagram:keiko_kojima_
公式サイト:アップルクロス

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