2020.08.27
2023.06.27
2023.01.06
今、低年齢からデジタルメディアに触れる子供が増加している。それは、昨年度内閣府により行われた、低年齢層児の保護者向け調査の結果からも明らかだ。
世界的な増加を受けてWHO(世界保健機関)は、『1歳未満では視聴を推奨しない。2~4歳は1日1時間以内』という、5歳未満児の身体・運動機能の発達を守るためのガイドラインを発表。子供の発達や生活に及ぼす影響が危惧されている。
「特に体内時計が出来上がっていない2~3歳までの子供は、睡眠覚醒リズムの形成を阻害される恐れがあります。なぜなら夜にデジタルメディアを見ると、画面から発するブルーライトの作用で睡眠を促すメラトニンの分泌が抑えられ、睡眠覚醒リズムを狂わせてしまうからです。
同様に目も発達段階にあるため、近くの画面を長時間見ることは、視力低下の原因にも。座り姿勢で長時間いることで、肥満リスクも増加します」と七海先生。もちろん、これらのリスクは3歳以上でも少なからずあり、使用時間が長いほどに高くなる。
※令和3年度 内閣府による「青少年のインターネット利用環境実態調査 第3章 低年齢層の子供の保護者調査の結果」(0~9歳)より引用
表1 年齢別、通園・在学別の
子供のインターネットの利用状況
(平成30年度~令和3年度調査)
0~9歳まで全ての年齢で年々増加傾向にあり、特に令和3年は突出して高い傾向にあることが窺えた。
表2 子供のインターネットの
利用時間(機器別)
(令和2年度調査)
どの機器でも、利用時間は「1時間未満」が1位を占めるが、各種スマートフォンとゲーム機においては、「1時間以上2時間未満」という回答も多い。
表3 子供のインターネットの
利用内容
(平成30年度~令和3年度調査)
平成30年から令和3年まで一貫して「動画を見る」が突出して最も高く、次に、「ゲームをする」が続いている。
だが一方でデジタルメディアは、子供に不利益なだけの存在ではない。
「いつの時代も子供は新しいメディアをうまく遊びに取り入れ、それに親も順応してきました。デジタルメディアもその延長線上にあり、すでに生活の一部なのではないでしょうか。
子供の発達に一番重要なのは、生きていくために、社会や環境に適応することです。そういう意味では、『デジタルメディアを利用する環境にどううまく適応するか』が、今の子供たちに大切なことだと考えています」。
これからの時代は、デジタルメディアを“読み書き”のように当たり前に使いこなす感覚やセンスが必要とされる。その能力を身につけなければ、得られるものも限定されていく恐れがあるというのだ。
確かに幼少時代、“読み書き”は覚えるほどに言葉と対象のつながりをもたらし、自分の世界と興味を広げてくれた。その過程は誰しも楽しかったはずだ。
「同じように、デジタルメディアは楽しく、無限の可能性を秘めています。今後、大人が考える以上の新しい何かを得ていくことができるのではないでしょうか」。
デジタルメディアが認知能力、非認知能力両方を高めるという声もある。実際、ゲームに熱中する幼稚園児は、複数の情報を同時に処理する能力や、問題の法則性を知り解決法を導き出す能力が高いという研究結果も。
他にも、テレビを受動的に見るよりも、スマホやタブレット端末を能動的に使った方が、計画を立て、目標を達成するために自分の行動や思考、気持ちを調整する脳の「実行機能」がより育まれるという調査結果もある。つまり、デジタルメディアはリスクもあるが、使い方を誤らなければポジティブな力を与えてくれるのだ。
「だからこそ大人が、うまく付き合える環境を整えてあげる必要があります。ぜひご家庭で、長期計画を立ててあげてください。ゴールは、『子供がトラブルに遭わず、自立してデジタルメディアを使いこなす』ことです。そのゴールから逆算して、お子さんの性格や教育方針に合わせたルールをご家庭ごとに考えてほしいのです」と語る。
七海 陽さん
相模女子大学 子ども教育学科 准教授。PCメーカー勤務を経てフリーランスに。デジタルメディアと子供の育ち・発達を領域として調査 研究・執筆・講演活動を行う。現在は相模女子大学の准教授として教鞭をとる傍ら、教育番組などにも出演。専門は児童文化学、子供メディア論、メディアリテラシー教育など。著書に『佐藤家のデジタル生活 子どもたちはどうなるの?』(草土文化)。
監修:七海陽
文:笹間 聖子
FQKids VOL.12(2022年秋号)より転載
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