2022.04.25
2023.05.17
2022.12.04
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「Engineering(エンジニアリング)=工学」というと難しい印象を持つかもしれないが、幼児教育において主流となっているのはロボティクス(ロボット工学)。久木田先生の教室でも「mBot」や「VEX」を使用しながら、エンジニアリング教育を行っている。
小・中学生向けのロボット大会「MakeX」の日本予選。勝ち抜くためにはエンジニアリングの知識も欠かせない。
「どうしたらもっとスピードが出る?」「リフトさせたい時、構造はどう作ればいい?」「モーターの回転を上げてトルク力を上げるにはどうすればいい?」など、教室では子供たちが実践的なタスクに挑戦。
「基本にあるのは、“どうすれば頑丈な仕組みをつくることができるのか”という発想。小さな頃からレゴ®ブロックが好きな子は、アイディアを出すのも上手ですね」。
つまり、構造や躯体づくりを体験している子は、エンジニアリングの発想にも親しみやすい。逆に知識のないまま挑戦して、新しい発想を生み出すのは困難だといえるだろう。
まずは幾何学の図形の仕組みを知り、画面を充てんするタイル画のデザインに挑戦。
「当初は子供は自由な発想でロボットを作っていくと思っていましたが、ゼロから何かを生み出すことはないと実感しました」と久木田さん。教室でもまずはヒントをあげたうえで、課題を解決することを心がけているそうだ。
例えば、ブロックのようなパーツを提供したうえで「どのチームがいちばん高く積み上げられるかな?」とヒントのないまま課題を出すと、子供たちはがむしゃらに積み上げることを繰り返す。
そこで「四角形と三角形ではどちらが強い?」「ハチの巣を構成するハニカム構造には、三角形が入っているよ」とヒントをあげると、土台に三角形を組み込めば高く積み上げられることに子供たちは気がつくのだ。
これはトラス構造と呼ばれる三角形を単位とした構造骨組の一種。だが、難しい説明はしなくても「三角形が入った構造は強い」と理解することで、子供たちは自由な創造をスタートする。ヒントをあげるタイミングが、子供が興味を持ち、成長するための大きなポイントだ。
もちろん、こうしたヒントを与えるためには、大人もベーシックな知識が必要となる。家庭で実践しようとしても、エンジニアリングの知識に不安を感じる方は多いだろう。
「基本となるのは、小・中学校の理科の知識。わからなかったら子供と一緒に、小学生用の図鑑で調べてみるのもおすすめですよ」。
レゴ®ブロックを例に挙げたが、粘土や折り紙など、手を使った遊びの経験はこうしたエンジニアリングの基本を育むのに効果的。家庭でスタートするなら、こうした手を使った遊びから始めてみよう。
桶谷早苗さん
一般社団法人STEM教育協会代表理事。2017年に同協会を設立後、幼児教育からプログラミング教室の講師育成までSTEAM教育全般に関わる。国際ロボコン「MakeX」の国内大会や、「mBot」を使ったワークショップなども開催。
久木田寛直さん
一般社団法人STEM教育協会理事。小中学生向けプログラミング教室「DOHSCHOOL」教頭。昭和女子大学現代教育研究所研究員。2015年より小学校から大学までのプログラミング・情報教育の研究を行なっている。
>>【STEAM教育】他科目の記事はこちら!
・サイエンス(科学):【STEAM教育2022】子供が科学に興味を持つには? 専門家が実践する方法
・テクノロジー(プログラミング):【STEAM教育2022】プログラミングの能力はゲームで育む!? 専門家が推す理由
文:藤城明子
取材協力:一般社団法人STEM教育協会
FQKids VOL.11(2022年夏号)より転載
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