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すでに言葉は浸透している「食育」だが、幼児期の子を持つ親として、実際にどう実践していけばいいのだろうか。子供の食育スクールを運営する日本キッズ食育協会代表理事である榊原理加さんに伺った。
「食に対する意識や関わり方は時代と共に変化していますが、『食』が身体を作り、すべての源になっていることはどの時代もずっと変わりません。子供たちが、『正しい食を選ぶ力』『正しい食事作法』『食を通して地球環境に目を向ける』、この3つを家庭や社会の中で身につけて、自ら実践できるようになっていくことが食育の基本と言えます」。
では具体的に、小さい頃から食に親しむことは子供にどんな影響を与えるのだろうか。
「身体面で言うと、小さい頃からの食生活習慣が健康で強い体作り、成長期でしっかりと成長するための体の土台作りに繋がる重要な役目になります。また、食事の時間はもちろん一緒に準備する、作る時間を家族や大切な人と共有することは、楽しい思い出や記憶が生まれますし、そういう楽しい経験や記憶の積み重ねが、食に親しむ習慣を作ります。
それは好き嫌いせず食べることにも繋がりますし、幸せな食事の記憶が積み重なることで、自分自身が大人になってからその子供との間でも大切にしたい時間となることで食の大切さは次の世代に受け継がれていきます」。
子供の年齢により食との関わり方には違いがある。乳・幼児期には食を楽しみ味覚を育てたり、3歳頃からは箸を持ち始めたり、料理のお手伝いをしたり……。子供にとって食を通して学ぶことは本当に多い。
「子供の成長とその子の持つ個性に合わせて、それに寄り添った形で食育をするのが望ましいですね。食べる量、食べるもの、作法など親も子供も1つずつ目標をクリアしていけばいいですし、たとえ後退する時があっても、それも成長のひとつと考えてみて下さい。とくに未就学児にはよくあることです。
小学生になると『食育』と言っても、単に食べ物のことを学ぶというより“いろいろな学び”との繋がりを意識できる時期です。
『今食べたこの野菜は、私たちが住んでいる地域で作られているんだよ』など地元の農産物や地図と照らし合わせることでより子供の興味や理解を深められたり、料理をすることで自然に数や科学を学んだりと、実は国語・算数・理科・社会すべてが詰まっているのが食育なんです」。
昨今は「SDGs」の観点からも、食育の重要性は再注目されている。
「昔は、食への学びを家庭が自然に担ってきました。それから時代が変わり、家庭だけで担いきれない部分を第三者(学校や習い事など)から学ぶことができるようになり、それを学ぶツールも開発されるようになりました。
また、食べ残さない、食材を使い切るなどの『もったいない精神』や作法が、『食品ロス』『SDGs』という新しい視点から再び取り上げられ、食育の必要性・重要性を人々が改めて感じるようになることは良い傾向だと感じています。
ですが、『食は生きる力』であるという大切なことは昔から変わりません。『食育』という名前が、関係性の低い商品などにも付けられて拡散されることには少し不安も感じます。消費者側も、便利なものは上手に取り入れつつ、選ぶ力を身につけていくことが今の時代に大事なことになります」。
●正しい食を選ぶ力を育てる
●食事作法を身につける
●食を通して地球環境に目を向ける
人間生活のすべての基本となる「食」。「食」を通して心身の健康の増進と豊かな人間性を育むことを推進するのが「食育」と言われている。
<乳・幼児期>
食べることを楽しむのが大切な時期。離乳期から3歳ぐらいまでの間に味覚が育つと言われ、甘い、しょっぱい、酸っぱいなどいろいろな味を経験することで味覚が豊かになっていく時期でもある。
<2、3歳頃~>
好き嫌いが出はじめる時期。原因はその場の気分や、周りの環境によることも多い。食べなくても諦めずに食卓に出し、周りがおいしいねと伝え続けることで食べられるようになるケースも。
<3歳頃~>
手でピースができるようになると、箸を持つ練習ができるようになってくる。食べる以外にも親が行う料理自体に興味を持ちだすので“お手伝い”をしはじめる時期でもある。
<小学生頃~>
「バランス良く食べること」の大切さを理解する時期。また、食料が畑などの身近な場所で作られていることもわかるので、地元の農産物の話が食べる意欲に繋がったりもする。
榊原理加さん
一般社団法人「日本キッズ食育協会」代表理事。大手料理教室運営会社を経て2011年独立。2014年に3歳~小学生のための食育スクール「青空キッチン」をオープンし、その後全国展開。キッズ食育トレーナー養成講座の運営も行う。
文:松永敦子
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