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2022.05.04
物と情報があふれる現代。店には魅力的なオモチャが並び、検索すれば世界中の遊びを知ることができる。それらも、子供の「非認知能力」を引き出す一助にはなってくれるだろう。例えば積み木は、想像力や根気を伸ばしてくれる。
だが一方で、すでにある遊びやオモチャには子供に既成概念を植え付けたり、ルールも決まっているものも多く、自由なアイデアや創造力を発揮する余地は少ない。
実はこの余地こそが、「非認知能力」を育むうえでは重要だという。その点、自分で考えた遊びやオモチャは、ルールや制約が無いため可能性は無限大。積み木以上の想像力や創造力が必要とされる場面も多いに違いない。そして、そこで育まれた力は、生涯にわたって子供たちの強い味方になってくれるはずだ。
そこで今回は、「こどもコンサルタント」として広く講演や執筆を行う幼児教育の専門家、原坂一郎先生にインタビュー。既成の遊びやオモチャに頼り過ぎず、子供たちが自分で考え、つくる遊び方から、その遊びへと導く親の関わり方。さらに、どんな「非認知能力」が育まれるのかまで、詳しく伺った。
遊びやオモチャを自分でつくることで育まれる「非認知能力」は、大きく分けて3つあるという。
「『自己を高める力』『コミュニケーション能力』『困難を乗り越える力』です。そして、それぞれの中にまた複数の力が含まれています。これらの力は『この遊びをしたからこの力が生まれる』という限定的なものではなく、複数の力が同時に育まれていきます。この時、カギを握るのが親の関わり方なんです」と原坂先生。
例えばきょうだいがドミノで遊ぶとしよう。並べる担当を決めたり、倒れそうな場所を認識し合ったりすることで、「コミュニケーション能力」が育まれていく。もしこの時、ドミノが倒れて2人の心が折れそうになったタイミングで、親が「もう一回がんばってごらん」と応援してまた意欲が復活したら……。「粘り強さ」という「困難を乗り越える力」の1つが、「コミュニケーション能力」と同時に育まれるということだ。
「大切なのは子供を放っておかずに、少しでもいいから親が関わることです。『もうできたの? すごい』と褒めるだけでもいい。それだけで、チャレンジ精神や意欲という『非認知能力』が生まれてきます。『楽しそうだね』とか、共感の言葉も自己肯定感を高めますよ」。
一方で注意すべきは、気になることがあっても、否定的な言葉は言わずに見守ることだ。「『何やってるの!』『またそんなことして』とか、規制や文句の多いご両親の下では『非認知能力』は育ちにくくなります。遊びづくりも途中で止めてしまうかもしれません。おおらかに見守り、子供の考えを尊重していけば、ひとりでに非認知能力が伸びていきますよ」。
では具体的に、どうすれば自分で遊びやオモチャをつくり始めるのだろう。
「モチベーションが大切です。まずは親がきっかけづくりをして、遊びたくなる気持ちを持たせることです。例えば親が突然、新聞を細長くちぎって放り投げ、子供にキャッチさせるだけでもいい。
封筒に顔を描いて中に手を入れて動かし、『封筒で人形ができるんだって』と言うだけでもいい。それだけで子供は興味を持ち、そこから違う遊びに変化させていきます。要は、身の回りに遊びやオモチャのヒントがたくさんあることに気付くきっかけをつくるということです」。
そして、オモチャをつくり始めた時や途中で立ち止まっている時など折々に、親が関わっていけばよいのだ。また、折り紙や油性マーカーなどを手に取りやすい場所に置き、遊びやすい環境を整えておくことも重要なのだとか。
最後に、このような「非認知能力」が、将来にどう役立つのかを聞いてみた。
「社会に入ってからはもちろん、今は就職試験や公務員試験でさえ、『非認知能力』の有無を見極める面接を重視しています。実際に友人の会社では筆記試験が駄目でも『非認知能力』に長けている人物は採用しているそうです。非認知能力は1歳から大人までいつでも身に付けられ、大人になっても減っていかないもの。人生の財産と言えるのではないでしょうか」と笑顔を浮かべた。
いくつになっても身に付けられる“財産”。ぜひパパ・ママも一緒に身に付けるつもりで取り組んでみてはいかがだろうか。
原坂一郎さん
こどもコンサルタント/KANSAIこども研究所所長。23年間の保育所の勤務を経て、「こどもコンサルタント」に。どんな子供も笑顔になるそのユニークな保育法は、メディアから「スーパー保育士」と呼ばれ注目された。現在は、笑いと笑顔をキーワードに、子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開中。『読むだけで、子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂書店)、『ママのイライラが笑顔に変わる 男の子の育て方』(洋泉社)ほか著書多数。
文:笹間 聖子
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