幼少期の朝ごはん習慣が育脳のカギとなる!? その根拠、必要な栄養素やおかずの数とは

幼少期の朝ごはん習慣が育脳のカギとなる!? その根拠、必要な栄養素やおかずの数とは
子供が食べ進まない、忙しくて適当になってしまう……と、朝ごはんをないがしろにしてしまうのはもったいない! 朝ごはんを食べること・作ることのメリットについて、管理栄養士の坂本星美さんに詳しく聞きました。

“育脳”のカギとなる
幼少期の朝ごはん習慣

幼児のいる家庭にとって「朝ごはん」とはどんなイメージだろうか。「健康にいい」「元気が出る」などのポジティブな面もあれば「子供が食べたがらない」「忙しいのに時間がかかりすぎる」といったネガティブな印象もあるだろう。

厚生労働省の調査(※1)による1~6歳までの幼児の朝食の欠食率は、約7%。約14人に1人の幼児が毎日朝食を食べていないのが実情で、忙しい朝は簡単に済ませてしまう家庭も多い。だが「朝食の習慣は子供の脳の発達や、将来の幸福度にまで影響がある」と話すのは管理栄養士の坂本星美さん。

「朝食は1日で最も大切な食事です。最大のメリットは、脳への栄養補給。脳のエネルギー源となるブドウ糖は約7~8時間で効果が切れてしまうので、夕食を食べて就寝したら、起床時にはほぼ空っぽな状態です。このままブドウ糖を含む米やパンを摂取しない状態でいると、頭が働かない、疲れやすい、集中できないなど、生活リズムや学びへの悪影響が出てしまいます。

また子供の成長率をグラフ化した『スキャモンの発育曲線』によると、人間の脳の神経細胞が最も発達するのは3歳までで、その後6歳で大人の脳の90%にまで成長し、12歳にはほぼ完成すると言われています。つまり良い脳を作るためには、幼児期の早い段階から『脳を育てる』栄養補給を習慣化することが大切と言えます。ほかにも早寝早起きの習慣化や将来の生活習慣病、肥満予防や糖尿病のリスクを軽減できるなど、朝食のメリットは多いのです」。

※1. 厚生労働省 平成23年3月「幼児健康度に関する継続的比較研究、平成22年度厚生労働省科学研究費補助金成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業、研究代表者 衛藤隆」より引用

非認知能力とおかずの数
意外な関係とは

幼少期の朝食習慣の有無は“数値化できない能力”を示す「非認知能力」と関係し、大人になってからの性格や人間力、生活態度にも差を生むことが近年注目されている。

「朝食をほぼ毎日食べている人とそうでない人では、志望校への進学率、仕事へのやる気、生活への充実感、年収などに有意差があるという調査結果も出ています。これは朝食を食べて脳が活性化することで、非認知能力である集中力、記憶力、自制心、内発的動機づけなどが向上したからと言えるでしょう。

また料理全般にも言えることですが、朝食作りは子供の創造力、失敗から学ぶ力、目標解決の力などの非認知能力を育むのに最適なので、ぜひ作ることにもトライして欲しいですね」。(坂本さん)

主食に含まれるブドウ糖が脳を働かせると前述したが、実はそれを摂るだけでは不十分だという。

「最低限ブドウ糖は不可欠ですが、脳の神経細胞の間をつなぐ『シナプス』をしっかり働かせてパフォーマンスを上げるためには、他にも様々な栄養素を摂ることが望まれます。おかずの種類が多いほど脳の発達指数が高く、少ないほど低いので、理想としてはきちんとおかずのある朝ごはんを食べて欲しいと思います。ただ、朝は忙しいので何品も作るのは難しいかもしれません。前日の残り物を利用したり、時短食材を組み合わせたりと、できることから工夫してみましょう」。(坂本さん)

子供たちの心身を健全に発達させる朝ごはん。気張らずにできることから習慣にしていきたい。

朝ごはんを食べるって
こんなに良い!

□ 脳の栄養になる
□ 集中力UP
□ 記憶力UP
□ 肥満予防
□ 早寝早起きの習慣がつく

朝食は脳を動かすスイッチで、生活リズムを整えるのに重要な習慣だ。脳に栄養を送ることで集中力や記憶力などの非認知能力の向上にもつながる。また、朝食を食べることで空腹時の血糖値の急上昇を抑えることができ、将来の肥満や糖尿病などの生活習慣病の予防にもなるなどフィジカル的なメリットも多い。

教えてくれた人

坂本星美さん
管理栄養士/料理研究家
1995年7月7日生まれ。NPO法人Efy(エフィ)代表理事として「朝塾」など地域の人たちと子供たちを食育でつなぐ活動を行う。アジアの最貧国「ネパール」で食育活動をしながら、スパイス・薬膳について研究し、商品開発も手がけている。現在は「料理のおねえさん」として、YouTubeでお料理エンタメ動画や「アニメめし」を再現した動画の配信にも注力している。


文:松永敦子

FQ Kids VOL.06(2021年春号)より転載

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