子供の可能性を引き出すために「親ができること」って? 幼児教育シンポジウムレポート

優れたICT教育とはなにか?

竹村さん:ICT教育の話題に移ります。最近「ICT教育」が注目されていて、どうしても「デバイスが学校に届きました!」みたいな所が取り上げられているイメージがありますが、それはほんの入口に過ぎませんよね。「本当に優れたICT教育」というのは、どういったものだと思いますか?

松田さん:1つは、世界最高レベルの教育を、世界中どこでも、誰でも受けられること。今までは、自分が通っている学校の先生から授業を受けるのが当たり前でしたが、ICTにより教育リソースが世界中に広がりました。

そしてやはり最大の魅力は、個別最適化された教育を提供できることだと思います。オンライン教育では一人ひとりの間違いの特性や得意な領域など、あらゆるデータを収集できるので、個人に合った授業を提供することができます。

あとは、学習を効率化できることも大きいですよね。今までは1日6時間授業を受けていたものが、実は3時間くらいに短縮できる。普通の学校生活を送るよりも、1日あたり4~5時間の隙間時間が生まれるんです。その時間使って習い事に行ったり、スポーツチームに参加したり、プロジェクト学習をやってみたり……。何が言いたいかというと、学校の中だと、いじめなどの問題があったりして信頼関係を醸成するのは難しい。でも、プロジェクト学習のように同じ興味をもった仲間と探求できる環境の中だと、良い関係を築きやすいんですね。

ICTでできることっていうのは、学習の効率化により好きなことを探求する時間を確保して、そこはなるべくリアルな交流ができる場にしておく。その中で、冒頭で申し上げたように、人と人とのつながりが生まれるような感性だったり、直感を育んでいくことではないかなと思います。

三鍋さん:幼児期においては、ICT教育を取り入れている小学校に「何かやっておいたほうが良いことはありますか?」と聞いたことがあるんですが、やはりタブレットに慣れ親しんでおくことで、次の段階がスムーズになるとおっしゃっていました。幼児期は何ごとも「出会いの場」なので、園ではまず道具としてICTに触れてもらうことを大切にしています。

▶ 子供がICT機器を使う上で気をつけること
・大人の人に確認して、時間を決めて使用すること。
・濡れた手で触ったり、乱暴に扱ったりしないこと。
・タブレットを使用しているときでも、人と話をするときは相手の顔を見ること。
・絵本と同じように、目を近づけすぎたりしないこと。
・カメラ機能では、人の嫌がる写真は取らない。撮ってよいか確認すること。
・歩きながら使用しない。また、移動して使うときは、使ってよい場所か、安全かを確認すること。

ICTを活用することで、どんな力を育める?

竹村さん:私も中学生と高校生の子供がいますが、オンラインだと自分たちでスケジュールを管理して大人と同じように行動する必要があるので、自律性が育つのではないかと思っています。その他にも、子供たちがICTを使うことで伸びたなと思うことや、役立っていることはありますか?

三鍋さん:ICTを使うと、今まで難しかったことのハードルを下げることができますね。例えば、絵を描くときにタブレットのようなデジタル端末を使うと、線を間違えたときに一発で修正できてしまう。これは、クレヨンを使って紙に描くときにはできなかったことです。何度失敗してもまたやり直せるから、最後まで作品を作り上げることができて、子供たちがアイデアを出しやすくなったんですね。そういう面で、ICTは活用できるなと思います。

竹村さん:たしかに、特に絵は上手・下手みたいなものがわかりやすい領域なので私は苦手だったのですが、もし5歳の時にタブレットがあったら何か違ったのかな……と思います(笑)。よく日本の教育の話をする時に、失敗しないように補助線を引きすぎるということがあると思うのですが、ICTは「良い失敗経験」を積むきっかけになるのでしょうか?

三鍋さん:そうですね。失敗を重ねて最終的には完成するのですが、ICTのいいところって、子供たちがここで失敗して描き直して……というような「絵を描いた順序」まで見ることができるんですね。こんな風に直したんだね、すごいね! と絵の途中の部分も子供たちにフィードバックできるので、色んな部分を可視化できるのが良いなと思って使っています。

松田さん:今までは、アウトプット=完成した絵だけが評価されてきたけれど、ICTが入ることで、たどり着くまでのプロセスを称賛することができる。そうすることで、子供たちも自分の思考パターンや特性に気づけたり、どんなことにワクワクしているかを知ることができますよね。

竹村さん:自分はこういうプロセスを踏んだけど、友達はこうだったんだ、という風に、仲間のプロセスを見ることで、ダイバーシティに気づくきっかけにもなりますね。

忙しい毎日の中で、大人も子供も
余裕を持つにはどうしたら良いか?

竹村さん:視聴者の方から質問が来ています。「子供たちは習い事や宿題に忙しく、大人は大人で共働きだと毎日をやり過ごすのがやっと。好きを探求する時間、ワクワクする余裕をどうやって作っていったらいいのでしょうか? 良い方法や事例があれば聞きたいです」。お二方、いかがでしょうか?

松田さん:近代の学校教育の問題は「子供たちの時間を奪っている場合がある」ということ。例えば、子供たちが学校に通う意味を、親御さんは理解できているでしょうか? もしそれが見えてないのであれば、子供と一緒に考えることで、実はもっと効率的な方法が見つかるかもしれません。

オンライン教育や海外の教育、フリースクールなど、色んな選択肢の中でベストマッチを探してみることで、今よりも時間が捻出できる可能性はあると思います。

三鍋さん:お仕事で忙しい毎日を過ごしていると、お子さんの感情に気づきにくいことも多いですが、子供の話をしっかり聞くこと、その時間を大切にしてほしいと思います。親との関わりは、子供たちのエネルギー源ですから。

さいごに

竹村さん:最後に、これを見てくださっている保護者の方に、これからの大人のあり方についてメッセージをお願いします。

三鍋さん:はい。幼児教育の場では、子供の興味関心を広げるために、色んなところに連れて行ってあげる、色んなものに触れさせてあげることが大切です。その環境を用意しながら、大人が一緒に楽しむことがすごく大事かなと思います。

松田さん:1つは、親自身が夢や目標・志を持ち、楽しそうに過ごすこと。それだけで、子供は自然と学んでくれますから。毎日愚痴を言っている食卓なのか、自分の夢を語っている食卓なのかで全然変わると思うので。そこをまず、一歩踏み出して欲しいなと思います。

もう1つは、大人は正解をもっていないんだ、ということを認めること。子供と一緒に考えていく、そういうゆとりを持つことがすごく重要だなと思います。

竹村さん:本日はどうもありがとうございました。


シンポジウム終了後、編集部から三鍋さんに「子供の可能性を引き出すために、コビープリスクールよしかわみなみ園が最も心がけていることや、意識していることは何ですか?」と質問をしたところ、このような返答を送ってくれた。

三鍋さん:幼児期の子供たちにとっては、様々な人や物、事などの出会いの場であるということ。子供たちの10年後20年後を見据えて、子供たちの「未来の力となる種をまくこと」を意識しています。

大人が見て感動するような「本物」との出会いが、子供たちを感動させ、その感動が未来への種をまくことにつながると考えて、本物との出会いを大切にしています。そのためには、大人が子供たちと一緒に楽しみ共感することが大事だと考えています。

子供たちの感性が育つ、たくさんの“本物”に触れられる環境を用意すること。子供たちが生きるずっと先の未来を考えて行動すること。それこそが、子供たちのために私たち大人ができる唯一のことであり、最も大切なことなのかもしれない。

DATA

主宰:次世代幼児教育研究プロジェクト(E4T)
協力:CANVAS
協賛:プリモトイズ日本販売総代理店 キャンドルウィック株式会社

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