鈴木えみさんと考える子どもの性教育「正しい知識と会話で“性のモヤモヤ”は軽くなる」

鈴木えみさんと考える子どもの性教育「正しい知識と会話で“性のモヤモヤ”は軽くなる」
2024年11月、10代向けの性教育Webメディア「セイシル」のトークイベントに、モデル・クリエイターの鈴木えみさんが登壇し、子どもの性教育をテーマにトーク。現在、性教育を広める活動にも取り組んでいる鈴木さんに、イベント後、話をうかがった。

<目次>
1.性教育をしない大人と“モヤモヤ”を抱える子ども
2.子どもの誤解を生まないためのセックスの伝え方
3.科学的な知識を助けに思春期の難しい時期を乗り越える

 

性教育をしない大人と
“モヤモヤ”を抱える子ども

より良く生きていくうえで、性に関する正しい知識は欠かせない。ところが子どもだけでなく大人ですら、正しい性の知識をもっていない傾向がある。この状況を変えようと行動を起こしたのが、モデルでクリエイターの鈴木えみさんだ。

2024年に性教育の普及を目指すサポート団体「Family Heart Talks」を立ち上げ、講演活動などを行っている。

鈴木さんは、1999年に雑誌モデルとしてデビュー。「えみちぃ」の愛称で親しまれ、やがてカリスマ的人気を誇るモデルとなった。そんな鈴木さんが性教育の普及を目指した動機は、自身のネガティブな経験と、間もなく12歳になる長女にある。

「実は子どもの頃、露出狂や痴漢の被害にあって。当時は性の知識がなかったので、親に相談するという選択肢すら思いつかず、心にモヤモヤした感情だけが残りました。

自分が経験したことの意味を知ったのは、大人になってから。子どもの頃に性の知識をもっていたら、モヤモヤした感情を抱え込まずに済んだのでは、と悔しくなりました。

また、出産をして子育てをするなかで、自分自身がした経験は“いらない”経験だった、という思いが強くなって。学校でも性教育はしてくれますが、内容が不十分だったり始めるのが遅かったりします。何か私にできることはないかなと考え、『Family Heart Talks』を立ち上げました」。

これまで複数回にわたって「Family Heart Talks」の講演会で登壇し、対談や参加者との質疑応答を重ねてきた鈴木さん。時には、性に関する認識の甘さを痛感することも。

「あるママが打ち明けてくれたエピソードが、特に印象に残っています。『仲良しの家族と一緒に温泉に行った時、温泉にゆっくり浸かりたかったので、娘には夫と一緒に男湯に行ってもらおうと思っていました。

けれども一緒に来ていた家族のパパから、娘さんを男湯に連れていくのは良くないと言われたんです。世の中にはいろんな人がいるから、と。これまで娘と性を結びつけて考えたことなんてなかったので、とても驚きました』というのが、そのママからのエピソード。

このエピソードは、突飛なものに聞こえるかもしれません。けれども、子どもと性を結びつけて考えられていないパパやママは全体の大多数を占めるんじゃないかな、と感じています」。

子どもが突然、性犯罪の被害者や加害者になるかもしれない。今日から意識を変えて、子どもの性と向き合ってほしい。これが、鈴木さんが「Family Heart Talks」の活動を通して伝えたいことだ。

※「株式会社TENGAヘルスケア」による10代向けの性教育Webメディア「セイシル」では、読者から寄せられた悩みや疑問に医者や専門家が回答する取り組みを展開。10代だけでなく大人からも質問が寄せられており、双方の質問内容がほぼ同じという結果も。

子どもの誤解を生まないための
セックスの伝え方

性教育を始めるタイミングについて、「早ければ早い方がいい。子どもが素直なうちに始めると、その後もスムーズに教えられると思います」と鈴木さん。

また、家庭で教えづらいセックスについては、「子どもが興味を持ちはじめた時が、教えるのに適したタイミングだと思います。教える時に心がけたいのは、親がセックスをいわゆる“エロ”としてとらえないこと。

以前、講演で対談した医師の方が『セックスについて教える時は、科学として冷静に話すことで、子どもにきちんと伝わりやすくなります』とおっしゃっていて、その通りだと思いました」と語る。

鈴木さんは、セックスという難しいテーマのもと、子どもとどのように向き合うつもりだろう?

「私であれば、『赤ちゃんができるって奇跡みたいなことなんだよ。卵子に精子を確実に届けられるように、身体と身体をくっつける必要があるんだよ』といった感じで、包み隠さずに教えます。教材に使われている絵などがあると、より教えやすいと思うので、そういったものも活用したいですね。

あと、いずれはAVについても話さなくては、と思っています。AVは男性目線で作られたものが大多数で、自然な姿は描かれていません。これが一般的なセックスだと思い込むのを防ぐためにも、“AVはファンタジーだよ”と伝える必要があると考えています」。

科学的な知識を助けに
思春期の難しい時期を乗り越える

鈴木さんの長女はママっ子で、鈴木さん親娘は、いつも密にコミュニケーションをとっているそう。けれども長女は、思春期の世代。大きく揺れ動く自分自身の心に戸惑い、イライラしたり泣き出してしまうこともあるという。そんな姿も鈴木さんは、温かく見守っている。

「思春期の頃の自分を思い返すと『私の方がひどかったな』と思います(笑)。それに思春期ならではの感情の起伏は、本人の意思に反して起きるもの。だから娘がイライラしたり泣いてる時は、『今日はそういう日なんだね』と声をかけて、広い心で見守るようにしています」。

また、科学的な知識を取り入れたケアも欠かさない。

「身体が急激に変化し、ホルモンのバランスが崩れやすくなるのが思春期です。娘には『身体が変化しているから、イライラしたり悲しくなったりするんだよ』といった話をするようにしています。

こうした話を通して知識が得られれば、不安が抑えられるはず。娘が思春期という難しい時期と、うまく付き合えるようになれば嬉しいですね」。

「株式会社TENGAヘルスケア」が展開する10代向け性教育メディア「セイシル」が、2024年12月に立ち上げから5周年を迎えた。これを記念して2024年11月、報道関係者向けトークイベント「ライフステージごとの性のモヤモヤにどう向き合う? いま必要な性教育のあり方」が開催された。イベントに登壇した鈴木えみさんは、TENGAヘルスケア 教育事業部でセイシルを運営する福田眞央さんと「保護者目線から考える子どもの性教育の重要性」をテーマに、意見を交わし合った。また、大人向け性知識メディア「おとなセイシル」のローンチ発表も行われた。
>>セイシル
>>おとなセイシル

 

PROFILE

鈴木えみ
1999年に雑誌モデルとしてデビュー。数多くのメディアで活躍し、同世代のアイコンとして人気を博す。デザインプロジェクト「Lautashi Design」のディレクターをはじめ、クリエイターとしての活動も多岐に渡る。


写真:松尾夏樹
文:緒方佳子

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