
2020.10.21
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2025.04.16
今回は、最近多く寄せられる相談の中から「宿題」について考えてみたいと思う。
小学生になると、親の悩みの中でもかなり大きな割合を占めるものになる、宿題。まだ未就学のお子様がいる読者の方には、小学校に入って大きな悩みになる前に、宿題との向き合い方を考えていただき、もう既に小学生のお子様の宿題問題で悩んでいる方には、改めて宿題について考えるきっかけにしていただきたい。
全国各地、宿題をやらない子に宿題をやらせようと悪戦苦闘している保護者はたくさんいる。これまでも、宿題をしない子どもに悩む親御さんから「どうすれば、言わなくても宿題をやるようになるんでしょうか」という相談を、耳にタコができるくらい受けてきた。
もはやこうなってくると、宿題は子どもに学習習慣をつけるための良いものではなく、親子の仲を悪くする原因を生み出す悪いものなのではないかとすら思う。もちろん、そんな意図で宿題を出している先生などいないが、各家庭でそうなってしまっている面は否定できないのではないだろうか。
これまでの経験上、宿題というものは、親が無理にやらせようとすればするほどやらなくなっていくものだ。親がうるさく言うと、子どもは言われないとやらないようになるし、監視しながらやらせると、子どもは見ていない時はやらないようになる。
年齢が上がれば上がるほど知恵がつくので、「宿題ない」ってうそをつくとか、答えを丸写しして終わらせるとか、とにかくもう何とかして手を抜いて、できるだけやらなくて済む方法を考えるようになる。そっちに頭を使うのではなく、宿題で頭を使ってほしいのに。
改めて、小学生にとって、宿題は何のために存在するのか考えてみる。いろいろな理由はあるが、一番の目的は? と問われたら私は「子どもが自ら学習する習慣をつけるため」と答える。小学生の宿題は、家に帰ったら当たり前に机に向かって学習する習慣づくりのためにある。
学習内容の定着効果は、10問程度のドリル1ページ、漢字5個を1行ずつ書く程度ではほとんどないと考えてよいだろう。また、社会人になった時に仕事の納期を守れるようになるための訓練とか、人との約束を守る練習とかいう人もいるが、それは後付けの理由で、それを主目的として宿題を出している先生なんて、限りなくゼロだと思う。
さらに言わせていただくならば、宿題を出すことに対して、徹底的に考えに考え抜いた上で出している先生は多くないと思う(少なくとも私はそうだった)。
宿題というのは昔から出すものと相場が決まっていて、なくてもいいかなと思いながらも、出さないと「宿題がないと家で全然勉強しないから出してください」と保護者から言われるし、授業で終わらなかった分を家でやらせなければ、という場合もあるし、成績をつけるための材料(証拠)として、宿題(の提出率)が必要だったりするものだった。
もちろん、ないよりはあった方がいい気がするし、やらせれば役に立つとは思う。ただ、少なくとも私は、宿題を出した場合と出していない場合の違い、宿題がどれだけの効果をあげるかについてのエビデンスを集めたことはなかった。
そして、教員時代には、こんなにも多くの保護者(親子)が、宿題があることによって苦しんでいるなんて、思いもしなかった。「宿題出してください」と言われるくらいだから、親は喜んでいるんだろうと思っていた。
でも、教師を辞め、たくさんの保護者から「わが子が宿題をしないこと」についての相談を受けるようになって、こんなにも宿題が親子の悩みの種になっていたのかと気付いた。
それだけではない。話を聞いているうちに、宿題が狙った意図と逆の効果を発揮していることにも気付いた。「早くやりなさい!」と親に怒られながら嫌々宿題をやるうちに、それが習慣化して、言われなければ勉強をしない(宿題がなければ勉強をしない)習慣が身についていく。
こうなると、宿題を使って「子どもが自ら学習する習慣づくり」ではなく「親が勉強をさせる習慣づくり」をしていることになる。これでは宿題として意味をなさない。
なぜこんなことが起こるかというと、手段が目的化するからだ。本来、考えなければいけないことは「どうすれば子どもが自ら学習する習慣が身につくか」だ。そのための手段として宿題がある。
それがいつの間にか「どうすれば宿題をやるか」が目的になり、宿題をやらせる手段として、怒る・ゲームやスマホを禁止する・終わるまで遊びに行かせないなどの選択をするようになる。
その結果「子どもが自ら学習する習慣を身につける」という本来の目的とは逆の方向に進んでいく。怒られたり、自分の好きなことを制限された結果、自主的に学習に向かうどころか、勉強すること自体を嫌がるようになる子すらいる。
子どものためにやっているつもりなのに、本来の目的から離れて逆に進んでしまっては元も子もない。何かうまくいっていないと感じたときには「なぜやるんだっけ?」と、自分に問いかける癖を持つことが大切だ。
宿題の目的が「子どもが自ら学習する習慣を身につけるため」だとすると、罰を与えることは目的を達成する手段としては間違った選択だと気付ける。では、どんな手段でアプローチすればいい? と考えることができるようになる。
例えば、子どもに学校から帰ってきた後の宿題完了までの理想のタイムスケジュールを考えてもらって、それをやる。例えば、親に言われる前に宿題ができたらシールを1つもらえて、5個たまるごとに好きなおやつ、20個たまったら好きなところにお出かけできることにする。
例えば、親が「自分も資格の勉強を始める!」と宣言し、子どもに頼んで自分の勉強の管理をしてもらい「1人じゃできないから」とお願いして、隣で一緒に勉強してもらう。こんなふうにいろいろな方法が考えられる。
大事なのは宿題をすることではなく、子どもが自ら学習する習慣づくりだ。そのためには、子どもが進んで机に向かいたくなるような仕掛けが必要である。ということは怒る、禁止する、監視するは逆効果。ならばどうする? と、感情ではなく冷静に分析できるようになるだけで、子どもとの関係は今よりも快適になるはずだ。
鶴岡そらやす
大学を卒業後、小中学校合わせて15年の教員生活の中で2000人以上の子どもたちと関わり、2014年、一念発起して退職し学習塾を開講。小、中、高校生の子どもたち、保護者へのコーチングにて問題発掘と課題解決を行う専門家として実績多数。大学生のキャリア支援メンター、高卒人財の就職支援、企業の新入社員研修などにも関わっている。2020年には親子で考える多様性についての書籍を出版。学校、教育委員会や、市民の集いなどで、生徒、教員、保護者への講演会を開催。小学校から社会人として自立するまでの発達段階を踏まえた、長期的視点からの子育てのポイントを伝えている。
●Amebaブログ オフィシャルブロガー:ameblo.jp/soranyasu
●インスタグラムでは思春期の子どもとの関係づくりのコツを発信中! @sorayasunavi
FQ Kids VOL.19(2024年夏号)より転載