
2024.11.25
子どもが幸せを感じる瞬間は「面白がる親の姿」から生まれる。大人も楽しめる絵本3選

2025.01.27
白百合女子大学
人間総合学部 児童文化学科教授
おもちゃコンサルタント
森下みさ子 先生
児童文化、玩具文化の研究者として、絵本、おもちゃ、アニメ、ゲームなどさまざまな分野から子どもの姿を見つめている。著書『おもちゃ革命』で日本保育学会文献賞受賞。その他おもちゃや遊びに関する著書多数。
おもちゃの語源は、「持ち遊ぶもの」だ。「そぶ」が省略され、「お」がついて「おもちゃ」と呼ばれるようになった。つまりおもちゃとは子どもが手に持ったり、触れ合って遊ぶもの。
そして、「遊ぼうとする子どもの気持ちが宿り、一緒に遊びはじめるすべてのもの」だと森下みさ子先生は言う。赤ちゃんは、スプーンなどを口に入れたり振り回して遊ぶが、それも広義でいえばおもちゃ。大人の顔や身体を遊具のように扱うこともあるが、それもまたおもちゃになっているということなのだ。
逆におもちゃの形をしていても、触らずただ見ていたり、嫌々動かしているときは、「おもちゃに生命が宿っていない」状態だという。
触れる気にならなかったり、強制されて「遊ばねばならない」状況は、子どもにとって「遊び」ではないからだ。あくまでも子ども自からの気持ちが動き、自然と触れる行動に結びつく対象がおもちゃなのだ。
では、子どもにとっておもちゃは、どんな役割を果たすものなのだろうか。森下先生は、「相棒、友達のような役割です。子どもが出会って気に入って、遊び方を覚えて、自分で工夫して、より遊べるように育てて……と対話を重ねて関係を深めていく相手ではないでしょうか」と説明する。
このような対話を通して、子どもはさまざまなことを学んでいく。
例えば、着せ替え人形の服を着替えさせるのは初めは難しいかもしれないし、コマをうまく回すのにも時間がかかるだろう。しかし、子どもは遊びを通して試行錯誤し、できるようになっていく。その過程でのおもちゃとの対話と、できたときの喜びが重要なのだ。
これらの経験は自己肯定感を培ってくれるのはもちろん、子どもにとっては「生きる力」といえるくらい大きなものだ。
「人はいつかおもちゃで遊ばなくなる時が来ます。でも、おもちゃで深く遊んだ記憶は心の養分になっていて、人生の土台となり、人との付き合い方や物との向き合い方など、その後の豊かな生き方につながります」と森下先生。
それを過去、顕著に示したのが、コロナ禍でのおもちゃの存在である。自宅で多くの時間を過ごさなければならなかった時、おもちゃや人形、家族とゲームで遊ぶことで、心を落ち着かせた子どもが多かったのだ。
では、心の養分になるおもちゃとは、一体どんなものなのだろうか。
森下先生いわく、子どもにとって良いおもちゃの条件の根っこはたった一つ。「楽しんで遊べるもの」であることだ。反対に悪いおもちゃとは、パパ・ママが「これは良いものだから」と押し付けてしまうおもちゃ。
親は、知育につながるアイテムや温もりが感じられる木のおもちゃなどを選びがちだが、そういった思惑ではなく、「子ども自身が遊びたいという気持ちを呼び起こし、良い対話ができるか」という視点で選ぶのがおすすめだ。
もともと子どもには、遊ぶことに関して、生まれつき天才的な能力が備わっているもの。まずはその力を信じてあげることが親の役割なのだ。
また、最初から「良いおもちゃ」「悪いおもちゃ」に分かれるというよりは、遊ぶ中でだんだんと「自分から生き生きと遊べるか」や「対話が積み重ねられるか」が見えてくるもの。パパ・ママが一緒に遊んだり、観察することも重要だ。
「親が良い形でおもちゃと出会えるよう演出したり、遊ぶきっかけを作ることはいいと思います。それ以上は子どもに委ねて見守りましょう」と森下先生。
高価で高品質なおもちゃより、お菓子のオマケのようなものに夢中になることもある。子どもがおもちゃと良い関係を築き、生き生き遊んでいるのを見つけたら、それがどんなアイテムだったとしても認めてあげることが何より重要だ。
文:笹間聖子
FQ Kids VOL.19(2024年夏号)より転載