【こどもの命を守る最新常識】生死を分ける、交通事故や家庭内事故などの予防&対応策

【こどもの命を守る最新常識】生死を分ける、交通事故や家庭内事故などの予防&対応策
親が目を離したわずかな時間や、思いがけないきっかけで起こるこどもの重大事故。もし命が失われてしまったら、二度と大切なこどもを取り戻すことはできない。これまで事故が実際に起きた場所ごとに、事故の内容と、予防法を紹介する。
<目次>
1. 重大事故のリスクが日常の意外なところに
2. 水の事故の事例と予防策・対応策
3. 交通事故の事例と予防策・対応策
4. 家庭内での事故の事例と予防策・対応策
5. こどもの命を守るための「知識のアップデート」に欠かせないCDRとは

 

重大事故のリスクが
日常の意外なところに

こどもの死亡や大ケガの原因となる重大事故の多くは、何気ない日常の中で起こっている。海・川・プールなどの水辺、交通事故、家の中など、身近なところに重大事故の危険が潜んでいる。

こどもたちの命を守るためには、周りの大人たちが過去に実際にあった事故事例から学び、あらかじめ予防策を取ったり、いざというときの正しい対応策を知っておくことが重要だ。

水の事故

海・川・プールで実際にあった事例、予防策・対応策を紹介する。

実際にあった事例
海浜において、家族など8名のうちこども3名が波打ち際で遊んでいたところ、高い波を受けて沖に流された。状況を⾒ていた父親と、付近で釣りをしていた男性も救助に向かったが、同様に流されてしまった。

参照元:www6.kaiho.mlit.go.jp/info/keihatsu/
20170424_umi_anzenkyouzai.pdf

予防策・対応策
ライフセーバーや監視員がいる海水浴場など、安全管理が行われている海水浴場の指定された遊泳エリア内で泳ぐ。
必要に応じてライフジャケットを着用し、遊泳禁止となっている場所では絶対に泳がない。
海の状況は刻々と変化するため、風向きや波の高さ、満潮か干潮かをしっかり確かめてから入る。
こどもから目を離さずに、いつでも手が届く範囲で見守る。
河口付近、堤防沿いに人工物がある場所、岩場など、沖に向かって発生する強い流れ「離岸流」が発生しやすい場所には入水しない。

参照元:www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/
caution/caution_062

実際にあった事例
川岸にてバーベキューの最中、水遊びをしていた児童3名が深みにはまって溺れ、救助に向かった男性1名も同様に溺れた。
川で遊泳中の中学生が波にのまれ、防災ヘリで救助。事故当時の波の高さは台風の影響で約4メートルだった。

参照元:www.cbr.mlit.go.jp/kawatomizu/working/suinan03

予防策・対応策
川に近づくときはすべりにくく脱げにくいかかとのあるサンダルやシューズを履き、ライフジャケットを着用する。
雨や落雷などの天候不良時や上流で雨が降っているときなど、河川が増水する恐れが高い時には川に近づかない。
上流にダムのある川では、事前に放流情報を確認し、サイレンが鳴ったらすぐに離れる。

参照元:www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/
caution/caution_062

プール

実際にあった事例
小学校6年生の体育の水泳指導中、身体に何らかの異変が起き、水中に沈みかけているところを友人が見つけ抱えあげたが、意識がなく心臓停止、呼吸停止状態にあった。
夏休みで水泳部の練習中、飛び込んだ後浮いてきたため、プールサイドに引き上げた。意識はあったが手足が思うように動かなくなっていた。

参照元:www.jpnsport.go.jp/anzen/Portals/0/anzen/anzen_school/
suiei2018/suiei2018_2.pdf

予防策・対応策
体調がすぐれない時はプールに入るのを止める。小さなこどもは保護者が体調を確認する。
飛び込みやプールサイドからのジャンプは避ける。禁止事項が定められている場合は必ず守る。
吸い込まれると危険なため、排水口には近づかないようにする。
遊具や台などの下にはもぐらない。遊具を利用する際は係員の指示に従い、決められたルールを守る。

参照元:www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/
caution/caution_062

 

交通事故

車にひかれる・車に同乗中の事故について、実際にあった事例、予防策・対応策を紹介する。

車にひかれる

実際にあった事例
幼児が保護者と一緒に道路を渡ろうとして、保護者の後を追いかけて車にひかれた。
こどもが道路へ飛び出したことにより交通事故に遭った。
こどもが正しく横断歩道を渡っているにも関わらず、車両側の信号無視などが原因で交通事故に遭った。

参照元:www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/kids/
kodomo01.html

予防策・対応策
こどもと歩く時は手をつなぎ、白線の内側を歩く。歩道を歩く時は、大人が車道側を歩く。
道路に飛び出しをしないことなど、交通事故の危険や交通ルールについて教える。
道路越しにこどもに声をかけると飛び出す危険があるため、声をかけない。
駐車場での車の乗り降りの際は細心の注意を払い、駐車場内ではこどもと手をつなぐ。

参照元:www.cfa.go.jp/policies/child-safety-actions/handbook/content-5

車に同乗

実際にあった事例
チャイルドシートを使用せずにこどもを後部座席に乗せている時に、シートベルトが首や腹部を圧迫して傷害につながった。
母親が助手席でこどもを抱っこして乗っていて交通事故に遭い、衝突時にこどもの体重を支え切れず、こどもが腕から飛び出してダッシュボードにぶつかった。

参照元:www.mlit.go.jp/jidosha/child/child-check.pdf

予防策・対応策
助手席では膨張するエアバッグでこどもに被害が及ぶ可能性があるため、できるだけ後部座席に乗せる。
国の基準への適合が確認されたチャイルドシートを使用する。
チャイルドシートの使用義務は6歳未満だが、シートベルトが正しく利用できるようになるまでは、学童用シートを使用する。(座布団やクッションでの代用は危険なのでNG)

参照元:www.mlit.go.jp/jidosha/child/child-check.pdf
www.yamanashi-kosodate.net/jidou/nennrei-taisyou/documents/2022kosodatehandbook.pdf

知っておきたい “魔の7歳”

“魔の7歳”といわれるほど、7歳は突出して車にはねられやすい。過去5年間の「歩行中の死者数」を統計した右のグラフでも、15歳以下では「7歳」が最も多いのだ。

なぜ7歳がこんなに事故に遭いやすいのか。背景には「もう小学生だから大丈夫」という親の思い込みがある。小学生になり、登下校で1人行動が始まるが、実はまだ交通ルールがわからなかったり、歩行中に他のことに気を取られたりする子も多い。交通ルールは未就学児の時から何度も教え、事故を未然に防ごう。

●年齢別歩行中の死者数(15歳以下)
5年(H24〜H28)の平均

参照元:www.npa.go.jp/bureau/traffic/bunseki/kodomo/
290323kodomo.pdf

 

家庭内での事故

誤飲・ベランダからの転落について、実際にあった事例、予防策・対応策を紹介する。

誤飲

実際にあった事例と予防策・対応策
たばこの葉・吸い殻を誤って飲み込んだ。
飲食は避け、吐かせてから医療機関へ。

たばこを浸した溶液を誤って飲み込んだ。
水または牛乳を飲ませ、吐かせてから医療機関へ。

洗浄剤・漂白剤(強酸または強アルカリ)を誤って飲み込んだ。
水または牛乳を飲ませ、吐かせてから医療機関へ。

防虫剤(ナフタリンなど)を誤って飲み込んだ。
水を飲ませ、吐かせてから医療機関へ。

芳香剤・消臭剤を誤って飲み込んだ。
水または牛乳を飲ませ、吐かせてから医療機関へ。

灯油・ベンジンを誤って飲み込んだ。
何も飲ませず、吐かせず、医療機関へ。

ボタン電池を誤って飲み込んだ。
何も飲ませず、吐かせず、医療機関へ。

参照元:www.yamanashi-kosodate.net/jidou/nennrei-taisyou/documents/2022kosodatehandbook.pdf

ベランダからの転落

実際にあった事例
窓・ベランダ等からの転落事故は、3~8歳を中心に幅広い年代で発生している。

予防策・対応策
この年齢ならもう大丈夫と思い込まず、転落を防ぐ対策をする。
こどもが勝手に窓を開けたりベランダに出ないよう、窓にはこどもの手に届かない場所に補助錠を付ける。
窓やベランダの手すり付近に、足場になるようなものを置かない。
窓、網戸、ベランダの手すりなどに劣化がないか、定期的に点検する。
小さなこどもだけを家に残して外出しない。
窓を開けた部屋やベランダでは、小さなこどもだけで遊ばせない。
窓枠や出窓に座って遊んだり、窓や網戸に寄りかかったりさせない。

参照元:www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/
caution/caution_061

 

こどもの命を守るための
「知識のアップデート」に欠かせない
CDR(Child Death Review)とは?

CDR(Child Death Review)とはこどもが不慮の事故などで死亡した際に、医療機関、警察、行政関係者など複数の専門家が、既往歴、家族背景、死に至る経緯などの情報を元に、協力して検証を行い効果的な予防策を導き出し予防可能なこどもの死亡を減らすことを目的とする取組だ。

多機関の専門家による検討が行われることで、いろいろな視点での検討が可能になり、より効果的な予防策を導き出し、類似の事故での死亡率を減らすための取組が推進されることが期待される。

また、ウェブサイトで事故原因や対策の情報を公開することで、誰でもこどもの命を守るための知識を身につけられるような啓発活動も実施している。CDRは現在、こども家庭庁の主導で、複数の都道府県でモデル事業として実施されており、体制整備に向けた検討が進められている。

CDRのサイトでは、こどもを守るための情報をまとめたリーフレット・Webサイト等を類型ごとに掲載しています。
 

 

問い合わせ

こども家庭庁


文:笹間聖子
協力:こども家庭庁

FQ Kids VOL.16(2023年秋号)より転載

Sponsored by こども家庭庁

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