2021.05.23
2022.10.20
2022.10.19
「食育はいつから始めたらいいのか」とよく聞かれます。
味覚的なことでいうと、味を感じる細胞である「味蕾(みらい)」は年齢とともにどんどん失われていくそうです。だから少しでも味蕾がたくさんあるうちに、食材本来の味や旨味のようなものを覚えられるといいですよね。
コミュニケーションの観点でも、小さい頃からいろんな野菜や魚の素材そのものの姿を見せてあげることは大事だと思います。あと、「これを料理してくれた誰かがいるから、あなたの目の前にごはんとして出てきているんだよ」という流れも、できるだけ早いうちに伝えてあげたいです。
ただ出されたものを食べてお腹を満たすのではなく、「これって何でできているんだろう」「どうしてこういう味になっているんだろう」「この野菜はどこからきたのかな」といったことを考える力がある方が、もっと積極的に自分の食べるものについて興味が持てるはず。
食べ物を見た時に、その裏側まできちんと想像できる「癖」をつけてあげるという意味では、できるだけ小さい頃から始めた方がいいのかなと思います。
食育の「入り口」として、いろんな食材に関心を持てるような環境づくりがオススメです。例えば、一緒にスーパーに行くだけでもいいと思います。
スーパーに行くと、何種類ものトマトが並んでいますよね。しかもそれぞれ値段が違います。例えばこっちのトマトは2つで300円だけど、あっちのトマトは1つ300円。「この違いはなんだろう? 高い方が美味しいのか、安いと美味しくないのか、どっちも買って食べ比べてみる?」というやりとりをするだけでも、十分に食育です。
産地もいろいろなので、「このネギは、ママがよく仕事で行く福岡で採れたんだよ」「ママはいつも飛行機で福岡に行くけど、このネギはどうやって東京まで来たんだろうね」なんて話をしてあげるだけでもいい。スーパーに行って、一緒に野菜を見ながらブラブラするだけで、子供たちにとっては発見がたくさんあるはずなんです。
わが家ではよく、ごはんを食べる時に「クイズ」を出していました。いただきますの後に、「今日のごはんには5種類の野菜が入っています。さて、なんの野菜でしょうか?」と、当ててもらうんです。そうすると、子供たちは必死で探し始めます。
「緑のがあるよ」「ほうれん草?」「ブー。違います。食べてみたらわかるかもね」「あ、なんだか筋っぽいなぁ」「いいところに気づいたね!」「わかった、小松菜だ」「正解です!」……みたいなやりとりを、子供たちはすごく楽しんでくれます。うちは3人いるので、誰から答えるか解答権の奪い合いになったりして、大盛り上がりの楽しい食卓になりました。
そんなクイズの中で自然と野菜のことを覚えますし、味の違いも少しずつわかってくるんです。「これは今の季節だから食べられる野菜なんだよ」と旬の話もできますし、私は料理にニンニクとショウガをよく使うので、料理の傾向や好みがバレたりする面白さもあります。だんだん慣れてくると「春だから春菊でしょ」みたいに、すぐにわかってしまって盛り上がらない、なんてこともありますが(笑)、それはそれでいいことだと思います。
ブロッコリーの味がちょっと苦手だったとしても、「トマトソースの中に入っていると食べられるね」なんて自分で気づいたりすることも。何をどう食べているのかがわかったうえでお腹の中に入るので、食育の一環として大切なポイントになります。
子供に教えてあげるには、親がいろんなことを知っていないといけないのかなぁ……などと不安に思う人もいるかもしれません。
でも、最近はすぐに何でも調べられますよね(笑)。だから「一緒に考える」というスタンスでいいのではないでしょうか。「ママもわからないから、一緒に調べてみよう」でいいじゃないですか。もしくは、知っている人に聞いてみよう、でもいい。
確かに何でもかんでも全部わかっていて、聞けばすぐ教えてくれるというのもカッコいい姿ですが、わからないことがあった時に「一緒に答えを見つけてくれる存在」というのも大事だと思うんです。構える必要はありません。
食育は続けないと意味がないですし、たった一回のイベントで終わらせてしまうのはもったいないですよね。だから、難しく考えないでほしいです。
自分を大切にできる人になってほしい、私はあなたのことが大好きで、大切で、だからごはんを準備していて、食べてほしいと思っているんだよ、と。そういう気持ちで接していれば、きっと伝わるのかなと。私はそんなふうに思いながら毎日ごはんを作っています。
和田明日香
料理愛好家・平野レミの次男と結婚後、修業を重ね、食育インストラクターの資格を取得。各メディアでのオリジナルレシピ紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての活動のほか、各地での講演会、コラム執筆、CM出演など、幅広く活動する。
文:志村江
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