2022.11.20
2020.10.30
2022.10.29
きょうだい育児に、思い悩んでいる人は少なくないでしょう。上の子の赤ちゃん返り問題や、公平に愛せるか心配だ、など。
私はある時、1人で遊ぶ1歳の長男の背中を見て「もう1人いたら、私が息子くんに付き切りで遊んであげなくても良くなるな……手が離れて、その分家事を片付けることができるぞ!」と思いました。
息子も、大人よりも子供と遊ぶ方が楽しいのではないか。9歳離れた姉のいる私自身は、子供の頃にずっと「周りは大人ばかりで寂しいなぁ。自分と年の近いきょうだいがいたらいいのになぁ」と思っていました。そんなわけで、長男よりも3学年下の弟が誕生したのです。
次男を病院から自宅に連れ帰った直後の写真は、何度見てもキュンとなります。私にピタリと寄り添い、ママに抱かれた次男に腕を回している2歳の長男は、不安と決意がないまぜになった、それはそれは真摯で健気な表情をしています。
子供はみんな生真面目です。小さな仲間ができて嬉しいと同時に、もう自分が両親を独り占めできない寂しさを2歳なりに懸命に受け止めようとしていたんですね。
そこで私は、当面はひたすらミルクを飲んで寝るだけの次男くんには体のケアを、長男くんには心のケアを第一に考えることにしました。
幸い、次男くんはよく飲んでよく寝る子で、仕事から帰ってくると夫がひたすら抱っこしていてくれたので、私は以前と同じように保育園から戻ってきた長男くんの話を聞いたり一緒に遊んだり、絵本を読み聞かせたりしてあげることができました。
そして新生児期から密着していたせいか、次男くんはパパが大好きに。何かあると、とにかくパパの膝。私がちょっとやきもちを焼いてしまうほどのパパ愛ぶり。高校2年でほぼ夫と身長が同じになった今でも、よく父親にハグしています。
子供たちにはとにかく分け隔てなく、フェアに接するように心掛けました。でもそれは人としてフェアに接するということであって「親の愛を兄弟で公平に半分こにしなさい」ということではありません。親にとって子供はきょうだいのうちの1人でも、子供にとっては、自分の親はその人だけです。
ですから私も夫も「この子は2人いる子供のうちの1人」ではなく「この子は〇〇くんという世界にたった1人のかけがえのない存在」と思って、それぞれに対して1対1で向き合うようにしてきました。子供が「ぼくは誰と比べられることもなく、うんと大事にされているんだな」とわかるように。
それと同時に、「君たち2人は超絶素敵で素晴らしいよ、本当に君たち2人の親になれて幸せだよ!」ともしょっちゅう言うようにしています。
日本にいた時からそうですが、彼らが小学生の時にオーストラリアに移住してからは、幼いなりに努力を重ねてしっかり異国に根を張った息子たちを、私と夫は心底尊敬しています。これは本当に、親として何より幸福なことです。彼らにも、お互いへの敬意を持ってほしい。
それと私はよく「何百人という群衆の中でも、君たち2人だけは私の目には8Kクオリティで輝いて見えるんだ!!」とも言っています。他の人がどう言おうと、自分にとってあなたたち2人は大好きで特別な人なんだ、ということを伝えたくて。息子たちは毎度呆れていますが。
でもある時、共著『絵になる子育てなんかない』を出す機会を頂いた養老孟司さんと話している時に、「次男は新生児の時からパパ大好きで、ちょっとやきもち焼いちゃうほどなんです」と言ったら「それは、母親には先客(長男)がいるのを見て、空いてる方の父親にしようと思ったからじゃないか」と仰ったのです。
目から鱗がポロリと落ちました。あ、そういうこと? 次男くんはナチュラル・ボーン・パパっ子なんだなと微笑ましく、ちょっと寂しくも思っていたけど、もしかしてこれは彼なりの生存戦略で、ママのスペースには先客がいると遠慮してたのかしら!?
私も次男くんがパパに懐いているのを見て、パパっ子なら無理に私が介入しなくてもいいか、と2人に任せていたところがあったなと自覚。そうか、必要なのは積極的にこちらから関わろうとすることだったんだなと猛省しました。
それからは次男と2人の時間を作るよう心がけたら、いろんな話をしてくれて、私に対してとても愛情深い思いを抱いていたことがわかったのです。うう、ごめんよ次男くん。人にはいろんな愛情表現がある。言葉豊かな長男と、非言語の表現が豊かな次男と。1人ひとり異なる子供を育てることは、大人にとっても深い学びがあるのですね。
きょうだいはきっと、ライバル意識を感じる時や考えが違うこともあるでしょう。でも2人にはいつもこう伝えています。「人生の初めを一緒に過ごして、移住という大冒険を共に乗り切った仲間は他にいない。この先の人生でも、お互いをリスペクトし、弛まず関係を更新して、いい関係を育てていってほしい」と。
きょうだいは、いろんな人間関係づくりの基礎になるものかもしれないですね。だからこそ「どの人もそれぞれに大切なんだよ」と親が伝えてあげることが大事なのでしょう。
小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
Twitter:@account_kkojima
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公式サイト:アップルクロス
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