2021.05.08
2021.05.29
2022.02.26
子供と、お金の話をしていますか? 生々しいから……とつい避けてしまうかもしれませんね。でもこれは本当に大事なこと。
私はお金の教育を全然受けなかったので、たくさん遠回りしてしまいました。お給料をもらうようになってからも、無駄遣いばかり。気づいたら、同期の子はさっさと頭金を貯めてマイホームを買っていました。実家では、お金の貯め方や使い方について具体的な教育は一切なし。母は、繰上げ返済で住宅ローンを早めに完済したことを自慢していましたが、私にお金の知識は伝えませんでした。
はじめて真剣に学んだのは、30代で子供を産んでから。保険の見直しをはじめとして、試行錯誤しながらの遅い学びだったので、もっと早く知っていれば! ということがたくさんありました。たまたま2000年代に当時勤めていた会社が退職金制度から企業型確定拠出年金へと移行したので、投資についてもその時に色々と勉強しました。
今、私には大学2年生と高校2年生の息子がいます。彼らにはいつもお金の話をしています。小学生の時には、お小遣い制をやめて、必要なものがある時は家の中で自分で仕事を見つけて親に賃金を交渉し、働いて稼ぐようにしました。欲しいものの価格を自分で調べて、なぜそれが必要なのかを親にプレゼンすることも奨励。
そして、もし家の中で働いた際に親がうっかり支払いを忘れていたり、金額が間違っていたりしたら、きちんと請求することも伝えました。働く人にはその権利があるからです。お金の教育と同時に、働く人の権利について教えることもとても大事。将来、子供がひどい雇い主に搾取されないようにするためです。
今は、息子たちは自分のオンライン銀行口座を持っています。金利の高い口座で貯蓄するなど長男は自分なりに工夫しているものの、次男はまだ関心が薄いようです。やはりアルバイトをして本格的にお金を稼ぐようになると、金銭感覚が変わりますね。長男には「毎月の明細を見て、ちゃんと働いた分支払われているか確認すること。未払いがあればしっかり請求すること。毎月一定割合をしっかり貯蓄すること」を伝えています。
今回のパンデミックのようなことがいつまた起きるかわかりません。ですから息子たちには、働き始めたらまず、何かが起きて収入が断たれても最低でも1~2年は生活できる額を貯蓄することや、資産のうち一定割合をリスクの低い長期投資で増やすことなども伝えています。そして極力、借金はしないこと。
投資の知識は証券会社のサイトなどでも無料で学ぶことができます。若者は、お金はなくても時間がたくさんあります。投資の元手は少なくても、時間という資源は年長者よりもうんとたくさんあるのです。
息子たちには、わが家の資産状況も開示するようにしています。私1人しか稼ぎ手がいませんから、かつて東京で共働きしていた時のような余裕はありません。オーストラリアは日本よりも賃金が高く(最低賃金は1600円ぐらいで、ちょっとしたバイトでも時給2000円ぐらい)お金持ちが多い国。息子たちの友人の中には、美術館のような邸宅に住んでいる子も珍しくありません。
私の日本での出稼ぎだけで食べているわが家は、為替リスクもあるし、古い借家住まいで贅沢はできません。息子たちには、今うちにはどれくらいの貯蓄があり、どれくらいを投資に回していて、学費の支払いにはどれくらい余裕があるかを開示し、奨学金制度についてもよく調べておくようにと伝えてあります。幸いオーストラリアでは奨学金を借りても、収入がある程度の額になるまでは返済が猶予されますから、もし学費が高いコースに進学したくても、何かしら方法はあります。
さて、そんな息子たちへのお金の教育効果は今のところどんな形で表れているか。まず2人とも、わりかし倹約家で、リサイクル品も上手に使っています。不要なものはネットのサイトで売るか、地元の慈善団体に寄付。どんな仕事に就きたいのか、その仕事はいくらぐらいの収入が見込めそうなのか、自分はどんな暮らしを送りたくてそれにはいくらぐらいかかりそうなのかなどを、彼らなりに具体的に考えているようです。
共働きの両親の姿も、専業主夫になった父親と大黒柱になった母親の姿も見ているので、それもいい教材になっているかもしれません。私からは、将来パートナーと生きていく時には、お互いに経済的に自立していることが大事だよと話しています。それがお互いを自由にするし、フェアな関係を守ることにもなるから、と。
人生には思うように働けない時もあるし、休む時もあっていいけれど、はじめから一方がもう一方に完全に依存するのはリスクが大きすぎると伝えています。変化に合わせて、働き方や稼ぎ方を柔軟に変えられる環境を選ぶことも大事だよ、とも。
お金の教育は、働き方や生き方の哲学を伝えることであり、何が幸せかを自分で決められるようになるための大事な教育でもあると思います。小さい時から、親子で自然な形で話せるようにするといいですね。
小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
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公式サイト:アップルクロス
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