
2022.03.07
小学生にスマホを持たせている親550人に聞いた! ルールや制限、取り上げの実態は?

2025.06.06
親が子どもに対して持つ普遍的な願いといえば「幸せな人生を送ってほしい」ということ。心理カウンセラーの中島輝氏によると、この幸福=ウェルビーイングというものに深く関わっているのが自己肯定感だという。
「自己肯定感とは『自分が自分であることに満足し、価値ある存在だと受け入れられること』。言い換えるなら、毎日の暮らしを支えるエネルギーになるものです。そして、認知能力や非認知能力などの学びの土台にもなる大切な力なのです」。
自分らしく幸せな人生を送るために必要な認知能力と非認知能力。この2つを支える土台となるのが自己肯定感だ。
自己肯定感が高い場合、勉強や運動、遊び、人間関係において主体的に動いたり失敗を恐れずに挑戦したりすることができるようになるが、低い場合は「面倒くさい」「できるわけがない」と感じ、知識を得ても使う気が起きにくいという。いろいろな経験をよい学びにするか悪い学びとしてしまうかは、自己肯定感の働きが不可欠なのだ。
自己肯定感が一番高いのは、生まれたての赤ちゃんだという。それが成長と共に低下していってしまう場合、実は親の普段の接し方や声掛けが適切でないといえるようだ。
自尊感情や自己肯定感に関する調査研究
出典:令和2年度 東京都教職員研修センター紀要 第20号より抜粋
日本の子どもの自己肯定感は、諸外国の中でも低いと指摘されて久しく、年齢と共に下がっていく傾向にある。さまざまな機関で小中高生向けの自己肯定感の調査が行われているが、どれも自己肯定感が下がり始めるのは、学業面や人間関係が難しくなる概ね10歳前後。
幼少期から自己肯定感が高い状態にあると、一時的に下がっても回復しやすく、維持もしやすい。いつでも遅すぎることはないが、小さい頃から自己肯定感を高める習慣づけは大切だ。
「自己肯定感を語る上で欠かせないのは、『自分軸』という考え方です。褒めるときも叱るときも、他人とわが子の比較をするのではなく、過去よりどれだけ成長したのかに目を向けてあげてください。
例えば童話の『うさぎとかめ』の登場人物で自己肯定感が高いのは、足に自信のあるウサギではなく、実はのろまなカメの方です。カメはウサギとの競争よりも自分自身の目標を達成することに価値やモチベーションを感じているので、他者との比較でなく自分軸で生きています。
逆にカメの進捗状況によって余裕を見せたり居眠りをしたりするウサギは、『自分がカメより優れていると証明したい』と他人軸で生きているため、能力は高いのに自己肯定感は低いといえ、結果も伴いませんでした」。
能力が高く自信があっても自己肯定感が高いとは限らないというのは、意外な事実だ。
「間違われやすいのですが、自己肯定感が高い=常にポジティブな状態であるわけではありません。これは体調などと同じで、高いときもあれば低いときもあるからです。できなかったり、落ち込んだり……そんな自分も含めて自分なんだと、認めてあげられることこそが本物の自己肯定感なのです」。
自己肯定感には、親の言動が大きく影響する。ここでは中島さんのメソッドから、自己肯定感の性質を理解すること、自分自身を把握すること、よい習慣の身につけ方を3STEPで紹介する。
日々の中で高くなったり低くなったり、揺らぎやすい自己肯定感。それはひとかたまりのものではなく「6つの感」からできているからだという考え方がある。花、葉、幹のようにそれぞれの「感」の役割が組み合わさり、大樹のように強く作用することも、逆に1つの「感」が揺らぐことでバランスを崩すこともあることを知っておこう。
また、自己肯定感を高める方法にはセルフハグのように一瞬でできる「瞬発型」と、効果を実感するまでに時間はかかるが自分軸を育む「習慣型」の2つがある。生活環境や親の言動に左右されやすいものなので、親自身の自己肯定感の高さや、幸せを感じているかが子どもに影響する。
● 高低して当たり前
● 高め方には瞬発型と習慣型がある
● 環境で変えられる
● 親の自己肯定感は子どもに直結
<採点方法>
それぞれ以下の12の質問のうち、○が10個以上の場合は自己肯定感が低い状態にある。STEP1の「6つの感」にも対応し、○がついた部分は現在低い部分にあたる。
子ども(3~12歳)向け
自己肯定感チェックシート
自尊感情 |
自分のいいところって何? と聞かれても言えない | |
自尊感情 |
家の人や園・学校の先生に褒められないとやる気が出ない | |
自己受容感 |
友だちのしていることがうらやましく感じてしまう | |
自己受容感 |
友だちに嫌われているのではないかとさみしい気持ちになることがある | |
自己効力感 |
やりたいことがあっても「失敗したらどうしよう?」と思ってしまう | |
自己効力感 |
うまくいかないことがあると、投げやりになってしまうことがある | |
自己信頼感 |
知っている人に会った時、自分からあいさつするのが恥ずかしい | |
自己信頼感 |
自分の意見を周りに言えない | |
自己決定感 |
毎朝、自分ではなく親が選んだ服を着て出かけることが多い | |
自己決定感 |
わからないことを、素直に人に聞くことができない | |
自己有用感 |
周りの人に注意されるとすぐにすねてしまう | |
自己有用感 |
自分より小さい子が困っていても、何をしてあげればいいかわからない |
パパ・ママ向け
自己肯定感チェックシート
自尊感情 |
他の子どもと比べてわが子の成長を遅く感じてしまい、気にしてしまう | |
自尊感情 |
他人から「いいママ」「いいパパ」だと思われたい | |
自己受容感 |
わが子が自分のいうことを聞いてくれないとイライラしてしまう | |
自己受容感 |
わが子を感情的に怒ってしまい、あとで落ち込むことがよくある | |
自己効力感 |
ふとした瞬間に「無理」「忙しい」「疲れた」などネガティブワードを言ってしまう | |
自己効力感 |
育児が辛いときも自分が頑張らなければと思い、人に頼ることができない | |
自己信頼感 |
自分の子育てが間違っていないかいつも不安に思う | |
自己信頼感 |
周りの目が気になって、子どもがやろうとしていることを止めてしまう | |
自己決定感 |
学校行事のときの服装選びにとても悩む | |
自己決定感 |
PTAや子どものクラスの親のグループLINEのやりとりに振り回されてしまう | |
自己有用感 |
本当はやりたいことがあるのに、子育てを理由にあきらめてしまっている | |
自己有用感 |
配偶者や親(義母・義父)、学校などとの子育てに関するやりとりに疲れを感じる |
中島さんが定義した「6つの感」に沿って、親子で簡単にできる習慣をピックアップ。まずはSTEP2のチェックシートで低い結果だったものから取り組んでみよう。
子:1日1ついいことをしてみる
親:つねに肯定的な言葉を使う
親子:今日良かったことを家族でシェアする
自尊感情は、自分の個性や持ち味を自己評価し大切にする感情。育むことで夢や希望を持つことにつながる。
何も最初から大きな夢でなくても「列車だけの旅行って楽しそうじゃない? 一緒に計画しない?」など身近な希望でいい。具体的な未来や目標を、楽しく肯定的な言葉で子どもにたくさん投げかけたり、普段の生活からワクワクするようなことを集めて家族でシェアする習慣をつけよう。
特に他者に興味を持ち始める3歳、就学時の6歳、思春期前期となる12歳は、大切な時期なので意識したい。
子:自分の好きなおやつを選んで買う
親:「人は人、自分は自分」と声に出す
親子:家族に頭をなでてもらう
「これが自分」とありのままを受け入れる感覚だが、同時に「それがあなた」と他者を容認できる力でもある。自己受容感が低いと自分や友だちの小さなネガティブ面が許せなかったりするが、高まると良い面も悪い面もあるがままに認められ、失敗しても心が簡単に折れない人間に育つ。
また、自己受容感が低下している時は、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンやオキシトシンが不足した状態。そんな時は好きなものを食べて心を落ち着かせたり、親子のスキンシップをすることで分泌を促そう。
子:スモールステップをクリアする
親:あれこれ考えずとにかく始めてみる
親子:1日1つずつ親子で褒め合う
「どうせやるだけ無駄だし失敗したくない」というような自己効力感の低い子には、3つの承認キーワードが有効だ。それは「ありがとう」「うれしかったよ」「助かったよ」。この3つを普段の生活で頻繁に伝えることで「失敗も挑戦の証」と考えられるようになり、自分にはできるという感覚が身についてくる。
また、心理学で「スモールステップの原理」と呼ばれる、小さな成功体験も大切。「今日は自分で洋服を着る」などの簡単な経験を積み重ねることが行動する勇気につながる。
子:「僕/私はできる!」を口ぐせにする
親:過去と比べてできたことを褒める
親子:リフレーミングを習慣化する
「自分を信じられる」感覚のこと。親は他人と比較したり「あなたは○○な子だ」とレッテルを貼ったりするなど不用意に子どもの可能性を狭めてしまう言動に注意しよう。過去の子どもや自分と比べて少しでも前に進めたことを認めてあげたい。
子どもは日頃から「自分はできる!」などポジティブな言葉で“自己宣言”をしたり、親子の会話で「私なんて」ではなく「私だから」というようにマイナスをプラスに言い換えるリフレーミングを使ったりすることで、自信を作り出すことができる。
子:明日の服を自分で決める
親:決めつけをせず他の視点を探す
親子:親子でものごとの優先順位を決める
「他の人ならなんて言うかな」というように周囲への依存度が高いのは、自己決定感が低い状態。自立して人生を切り開くためには、主体的に選択できる力が不可欠だ。それにより自分の人生をコントロールできている感覚は幸福度にも比例することがわかっている。
幼少期から自分で決められることは決めさせるようにし、1人で決めるのが大変なことは「ピアノの宿題、どんな順番でやってみようか」と一緒に考えてあげよう。親は子をコントロールするのではなく、サポートするという姿勢を意識しよう。
子:パパ・ママや先生の手伝いをする
親:自分から人に歩み寄る姿を見せる
親子:「ありがとう」を口ぐせにする
人は誰かの役に立ったときに、最大の幸福感を得るという。例えば「食器を片づけてくれた」など子どもが人のためにしていることがあれば、「ありがとう」「助かったよ」などの承認のキーワードで気持ちを伝えよう。
特に「ありがとう」は人から人へ循環することで人間関係がより良くなるマジックワード。家族で口ぐせのように使う習慣を身につけたい。また、親が他者に歩み寄り、良いコミュニケーションを育む姿を見せることも有効。誰もが社会の一員であり、役に立つのだという安心感が湧いてくる。
心理カウンセラー
中島輝(なかしま てる)さん
作家、心理カウンセラー。自己肯定感アカデミーtorie代表。独自の自己肯定感論をセラピー、カウンセリング、コーチングなどを通してこれまで15,000名以上に提供し、回復率は95%。著書は累計65万部を超える。近著に『何があっても「大丈夫。」と思える子に育つ 子どもの自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ)。
文:松永敦子
FQ Kids VOL.20(2024年秋号)より転載