2020.08.03
2022.07.14
2025.01.27
白百合女子大学
人間総合学部 児童文化学科教授
おもちゃコンサルタント
森下みさ子 先生
児童文化、玩具文化の研究者として、絵本、おもちゃ、アニメ、ゲームなどさまざまな分野から子どもの姿を見つめている。著書『おもちゃ革命』で日本保育学会文献賞受賞。その他おもちゃや遊びに関する著書多数。
1 親子で一緒に遊ぼう
子どもがどれだけそのおもちゃに夢中になっているかは、パパ・ママが一緒に遊んで初めて実感できるもの。親自身がおもちゃの魅力に気が付き、自分の中にある子どもの心で子どもと通じ合えれば、一緒におもちゃとの対話を積み重ねていくことができる。
これはいい親子関係を築く上でも重要なもので、子どもだけでなく、親自身の自己肯定感も高めることができる。
2 最初のおもちゃは手に触れるものを
おもちゃは将来、人やものとの関係を育む力を養ってくれるもの。そのため、特に乳幼児のうちは、手に持って触れられるアナログなアイテムがおすすめだ。
年齢が上がればデジタルなおもちゃを楽しむ機会も増えていくが、人やものと直接触れ合う遊びをしてきた経験のベースがあってこそ、それをデジタル化した遊びを楽しめるという面もある。
3 なるべく対象年齢に合わせたおもちゃを選ぶ
おもちゃには対象年齢が示されている。子どもの成長、発達に合わせて作り込まれているので、参考にして選ぶのが望ましい。対象年齢のおもちゃは、安全面での心配も少ない。
「早く成長してほしい」と少し高い年齢のものを選ぶと、思わぬ危険があったり、子どもが「遊ばせられている」といった感覚になってしまい、本来の楽しみ方ができないことも。
4 ゲームについては子どもの気持ちで考える
ゲームについてはさまざまな考え方があるが、子どもが触れたがるおもちゃの一つ。頭ごなしに否定するのは考えものだ。親が子どもの頃に好きだったゲームを一緒にやってみたり、欲しがるゲームを実際にやってみて判断するなど、子どもの気持ちになって理解しようとすることが大切。
「このゲームなら大丈夫そう」というものがあれば、時間などのルールも一緒に決めるとよいだろう。
5 はやりのおもちゃで人と遊ぶ体験も大事
「流行のおもちゃはすぐ飽きそうだから与えたくない」というパパ・ママもいるのでは。けれど、流行のアイテムは友達の多くが持っている場合も多い。人と楽しさを共有して遊ぶ体験も、子どもには必要だ。
流行のサイクルで動くおもちゃと、長く継続して使えるタイプのおもちゃ、どちらでも遊べたら体験のバリエーションも広がる。どちらが良い・悪いではなく、バランスを考えよう。
A.まずは、「~ちゃんが持っているから」ではなくて、「あなたはそのおもちゃのどこが面白いと思って欲しいのかな?」と聞いてみましょう。一度子ども自身に欲しい理由を考えてもらうのです。もしも「これを使ってみんなと遊んだら楽しそう」という答えなら、それも立派におもちゃが欲しい理由になります。
ですが、そのおもちゃにはあまり興味がないけど友達に合わせているだけとか、「持っていないと仲間外れにされる」などの理由であれば、本当に必要かを親子で話し合いましょう。そこにはおもちゃではなく、人間関係の問題が関わっているからです。
A.まずはパパ・ママも、自分自身が物とどう付き合っているか振り返るといいかもしれません。もし物をどんどん買い替える姿を見せていたようなら、親自身も物を大事にする姿を見せたり、長く愛用している物の話を子どもに伝えたりすることを心がけましょう。
また捨てることに関しては、そのおもちゃと本当にお別れしていいか、子ども自身にも振り返って考えてもらいましょう。すぐに捨てるのではなく、一度しまっておいてからまた出してみたり、新しい遊び方を見つけるなど、まだ遊べる要素を一緒に探すのもいいですね。
A.子ども向けのテレビ番組と連動したおもちゃは、次々新しいものが登場しますよね。毎回買っていると確かに大変なので、子どもの興味に寄り添いつつ、「1シリーズにつき1つだけ買う」など一定のルールを設けてみてはどうでしょうか。
例えばヒーローものなら、ヒーローになりきる手がかりを1つ渡して、あとは子どもの想像力を駆使して遊んでもらうのも手です。持っているおもちゃと組み合わせたり、自分なりに工夫して、想像力と創造性を発揮して遊ぶきっかけになるかもしれません。
A.壊れてしまってもおもちゃを慈しむ感覚は将来的に人や物を大切にする気持ちにもつながります。ぜひ大切にしてほしいと思います。「おもちゃ病院」といったサービスを行っている施設や企業や団体もありますので、そこで直してもらえる可能性もあります。
「壊れたおもちゃは直すことができる、それを大人が助けてくれる」と知ることで、その子はおもちゃや物を大切にできるようになるかもしれません。もし本人が「もう捨てていい」と選択した場合は、これまで遊んでくれたおもちゃに感謝して、お別れをする儀式をするのもおすすめです。
おもちゃは時代とともに変遷を遂げている。着せ替え人形は、昭和中頃までは紙製だった。それが立体的な人形になり、現在はゲーム機の中で、デジタルで着せ替えが楽しめる形になっている。ベーゴマがベイブレードになったのも同じような変遷だ。
株式会社タカラトミーアーツ『ひみつのアイプリ』より
アイプリバース
© T-ARTS / syn Sophia / テレビ東京 / AP製作委員会
株式会社タカラトミー
『BEYBLADE X(ベイブレードエックス)』シリーズ
©Homura Kawamoto, Hikaru Muno,Posuka Demizu, BBXProject, TV TOKYO ©TOMY
遊び方についても、昔はコマを削ったりひもを工夫して回し方を考えていたものが、今は市販のパーツの組み合わせでカスタマイズできる。着せ替えおもちゃも、今や画面上で着せ替えられるようになり、カードにプリントしてコレクションしたり、そのカードをスキャンして遊べるゲームもある。いわば「情報」を集めて遊ぶ形に変わったのだ。
ただ、姿形や遊び方が変わっても、「育ててバトルする高揚感」や、「着せ替える時のワクワク感」のような根本の欲求はずっとつながっている。また、けん玉や積み木、塗り絵など、時代を経てなお変わらないおもちゃもある。
息の長い遊びやおもちゃに共通するのは、「手強さ」があること。すぐに目的を達成できず、おもちゃと「対話する時間が長い」ことが、いつまでも愛される理由かもしれない。
着せ替えなら自分でデザインして作って着せてみる、ベーゴマならどうしたら勝てるか試行錯誤する、塗り絵なら地道に塗っていく、けん玉なら何度も練習する……と、達成に至るまでのプロセスこそが楽しいのだ。
また、積み木などでできたものを思い切り崩すのも快感になり得る。達成や完成して終わりではなく、そこに至るプロセスを楽しめたり、達成感が何度も味わえるおもちゃこそ、ずっと変わらずに残っていくのかもしれない。
おもちゃ選びは迷いがちなものですが、気負いすぎず、まずは同じおもちゃで一緒に楽しく遊ぶところから始めてみてください。親御さんの心の中には今も子どもの頃の自分がきっといるはず。そこに降りていって子どもの気持ちでおもちゃを見直してみると、選び方や付き合い方が見えてくるかもしれません。
文:笹間聖子
FQ Kids VOL.19(2024年夏号)より転載
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