「人生最初の7年間が最も重要」シュタイナー教育の教えから学ぶ、幼児期に大切なこと

「人生最初の7年間が最も重要」シュタイナー教育の教えから学ぶ、幼児期に大切なこと
世界2大教育法の1つとして知られるシュタイナー教育。幼児期の過ごし方によって、後の人間形成は変わってくるという。その理由とは? 谷崎テトラさんのコラム「未来の地球人育て」。

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子供が生まれて最初の3年間、
そして人生最初の7年間が重要

前回のコラムで「人間の身体は、40億年にわたる生命進化の記憶をもっていると言われている」という話をしました。生命は海で生まれ、陸上へと上がってきました。ヒトの胎児は、地球生命進化40億年の歴史を十月十日の羊水の中で経験するのです。受胎後、32日目に胎児は魚類から両生類へ、そして爬虫類へ。古生代の一億年の進化が数日間の変化の中に凝縮されると言われています※1

※1.三木成夫「胎児の世界ー人類の生命記憶」(中央公論・参照)

実はこれ、幼児教育で有名なシュタイナー教育のベースにある考え方でもあります。今日はシュタイナー教育について書いてみようと思います。

まず、シュタイナー教育を学んだことがある方は、人生最初の7年間の重要性を耳にしたことがあるのではないでしょうか。0歳~7歳まではまずは、健全な「からだ」を作ることに重きが置かれます。そして生まれるしっかりとした「意志」を育むこと、そしてそこから豊かな「感性」を育てること。

0歳~7歳はその大切な時期と考えられており、この時期をどう過ごすかによって、その後の人間形成が変わってくる、最近の言葉で言えば「非認知能力」に大きな影響を及ぼすと言われているんですね。

シュタイナー教育の基本となる思想は 「心と体を含めた全人教育を施し、自由な意志で動いていける人間を育てること」。心身のバランスを保ち、自分の意志を発揮する能力を育てることであり、特に「からだ」と「こころ」と「あたま」のバランスが整っていることが大切であると考えます。 子供が大人になったときに、身体だけが発達し過ぎていることも、感情的になり過ぎていることも、論理的思考であり過ぎていることも良くないのですね。

そのためには「からだ」「こころ」「あたま」がそれぞれの段階で適切に育まれることが大切だと考えるわけですが、そのプロセスを40億年かけて進化してきた生命の発達段階と、人間の成長・発達が類似関係にあるのではないかと考えたわけです。

シュタイナーの思想の本質は
生命の進化を普遍的な人間学へ
統合させようとする試み

シュタイナー教育は最初から教育法として開発されたわけではありません。シュタイナーの目指したのは「人間とは何か?」という究極の問いへの答えです。そしてその思想を一言で言えば生命の進化を普遍的な人間学へと統合させようとする試みと言えます。

シュタイナーの探究は自然科学の基礎の理解から始まります。シュタイナーはもともとゲーテの研究者でした。ゲーテは小説や詩で有名ですが、実は植物学や鉱物学、形態学、色彩学などの自然科学領域の研究家でもあります。

ゲーテが注目していたのは、植物や動物の形態の変化でした。動物の骨格はなぜあのような形で成長するのか、卵からひなが孵り、成長していく過程、あるいは植物が種から発芽して、茎が伸び、花が咲いていく過程を観察し、その生命力の源は何か、生命の成長に普遍的な法則性はあるのか。自然科学で語りきれないそのスーパー・ナチュラルな力の存在を、ゲーテは「詩」として表現してきたわけです。

シュタイナーはゲーテ の研究から、生命の成長の普遍性を直観し、それを、実際の人間の成長や教育、社会や世界のあり方にまで広げることができるのではないかと考えました。

七年周期の発達理論

ビッグバンから始まる宇宙論では、無→物質→生命→意識→自我と進化をしてきました。西洋ではそれまで精神・物質の二元論で捉えていたのですが、シュタイナーは二分説ではなく、それぞれの段階をへて、統合的に成長すると考えました。

そのそれぞれの段階に、物質(肉体)→生命(エーテル体)→意識(アストラル体)→自我(人間)という名前をつけました。人間はまず「物質」としての肉体を作り、「生命」の力を行き渡らせ、言葉の発達を通じて「意識」を成長させ、健全な「自我」を育んでいく※2

※2.西川隆範「あなたは七年ごとに生まれ変わる」(河出書房新社)

0歳~7歳はまさに身体が作られ、そこに生命の力が満ちていく段階と考えていました。0歳の赤ちゃんは2本の足で立てるようになることに集中し、1歳になると言葉を話せるようになることに全神経を集中する。それは生命の進化の歴史と相似形なわけです。そして、この七年周期は人生を通して、魂の成長を促していくとシュタイナーは考えたわけです。

シュタイナーの7年周期説※3

0~7歳は「善(安心や喜び、愛情)」を受け取る時代。
7~14歳は「美(芸術や人間性や自然への美)」を感じ取る時代。
14~21歳は「真(真実のある世界観)」を受け取る時代。
21~28歳は「関係性」の時代。(善や愛を実現したい)
28~35歳は「構築」の時代。(美的生活をつくりたい)
35~42歳は「問い」の時代。(真に大切なことは?)
42~49歳は「葛藤」の時代。(正しさを超えた先にある善への気づき)
49~56歳は「創造性」の時代。(芸術的創作への意欲、美へのあこがれ)
56~63歳は「本質」の時代。(真に自分らしく生きよう)

※3.言葉の解説は 長谷川満/家庭教師システム学院によるもの (mbp-japan.com/hyogo/hasegawa/column/2842400)

PROFILE

谷崎テトラ(TETRA TANIZAKI)
1964年生まれ。放送作家、音楽プロデユーサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の発信者&コーディネーターとして活動中。シュタイナー教育の教員養成講座も修了。
公式サイト:TANIZAKI TETRA OFFICE

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FQ Kids VOL.07(2021年夏号)より転載

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