2022.06.06
2020.10.29
2021.11.03
小さな子供にとって、パパをはじめとする家族は、“初めて接する人”だ。遊ぶ、話す、学ぶといった家族との何気ないやり取りをとおして、子供はコミュニケーション能力や自己肯定感、想像力など非認知能力にあたる力を身につける。
ただ、子供が非認知能力を存分に伸ばせるかどうかは、パパ・ママの心がけや環境次第。おうち時間が増えている今を絶好の機会ととらえ、家や庭の使い方を見直してはいかが?
非認知能力を育む場所として家や庭を活用する方法は、簡単でシンプルだ。例えば、リビングルームやダイニングでパパと子供がおしゃべりする時間を増やすだけで、将来、子供がよりスムーズに社会に出ていけるといわれている。また、庭に植えた草花を日々観察するだけで、子供の感性が豊かに育まれるそう。
本記事では、家のスペシャリスト・一級建築士の八納啓創さんが、子供の非認知能力を伸ばすためのメソッドをレクチャー。難なく実践できるため、気軽に取り入れてみよう。
「80代の親に50代の子供が依存する『8050問題』が社会問題になっているように、『引きこもり』や『パラサイト・シングル』の存在が顕著になっています。子供が『引きこもり』や『パラサイト・シングル』になるきっかけとして、考えられる原因は色々とあります。しかし、家庭内で非認知能力を養うような教育が行われなかったことが、原因であるケースは多々あるはずです」と、八納さん。
八納さんによると、家族とのコミュニケーションに問題を抱えた状態で育つと、非認知能力に乏しい大人になりやすいという。また、コミュニケーションに問題がある家庭の多くが、各部屋を適切に使えていないのだとか。
「“適切に使えていない部屋の代表格”ともいえるのが、子供部屋です。子供部屋を勉強部屋と考え、子供がずっと閉じこもっていても咎めない親の存在が目立ちます。しかし、子供が子供部屋に閉じこもり、家族と断絶された時間が長いほど、子供の非認知能力が育つチャンスが失われるのです」。
子供部屋は、アメリカのライフスタイルが日本に流入してきた1950年頃、間取りに組み込まれるようになった部屋。つまり、日本における“子供部屋の歴史”は、約70年程度。それゆえに、その使い方がまだ正しく理解されていないという。
「子供部屋の扱いにおいて、アメリカと日本の間には様々な違いがあります。大きな違いの1つとして挙げられるのが、アメリカ人にとって子供部屋は勉強部屋ではなく、『睡眠をとる場所』である点。つまり、子供たちは寝るとき以外、リビングルームやダイニングで家族と一緒に過ごすのです。
勉強も、家族が集まる場所でするのが当たり前です。子供たちは、リビングルームやダイニング、もしくはワークスペースという家族全員の作業スペースで勉強しています」。
パパやママに教えてもらいながら、あるいは兄弟と意見を交わしながら勉強に取り組むことで、子供のコミュニケーション能力が育まれる。また、周囲の人々と助け合ったり、お互いの能力を引き出したりしながら、1つのことをやり遂げる力にもつながるという。
アメリカ人にとって家とは、家族とコミュニケーションを取りながら過ごす場所。おのずと子供たちは、“1人で過ごす時間は、辛くて寂しい時間”という感覚を身につける。「こうした感覚を健全な形で身につけることで、将来、スムーズに人間関係を構築できるようになります。人と積極的に関わりながら、仕事や生活をしようとする姿勢にも結びつくでしょう」。
加えて、家に対する意識を夫婦ですり合わせ、子供に共有することも大切。子供の非認知能力を育むうえでオススメなのは、“家は夫婦のもの”という意識をもち、子供が成人ないしは就職したら、自立するよう促すことだという。
「子供が大人になったにも関わらず、理由もなく同居するのは、あまりオススメしません。子供が親の資産に依存してしまい、経済的自立ができなくなる可能性があります。子供の自立心や目標に向かって頑張る力などを育みたいなら、『この家はパパとママのもの。大きくなったら自分の家や部屋をもって、お気に入りの空間を作ってね』と伝えてあげるといいでしょう」。
八納啓創さん
「快適で居心地よく洗練されたデザイン空間」を探求する1級建築士。「G proportion アーキテクツ」代表。
「わが子を天才に育てる家」
子供部屋は本当に必要か? 勉強好きになる間取り、コミュニケーション能力、創造力をアップさせる家の設計を具体的に紹介。
著者:八納啓創
出版社:PHP研究所
発売日 : 2010/11/15
※電子書籍サービスにて、電子版を購入可能。
文:緒方佳子
FQ Kids VOL.06(2021年春号)より転載
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